気づかれにくいオンラインのデジタル遺品対策【正しいデジタル終活術:第4回】

2016.01.16

自分が対策を講じておかないと何も進まない。

そのアカウントが、そもそも本当に故人の持ち物かわからない──遺族に気づかれにくい度合いでいえば、オンライン型のデジタル遺品はオフライン型の上をいく。そして、気づかれないままでいると新たなリスクを生みやすい特性もある。日常的にSNSやネットバンク、オンラインの定額サービスなどを使っていても、残された人たちが困らないようにするにはどうしたらいいのだろうか。

持ち主の生死と連動しないのが基本

オンライン型のデジタル遺品がやっかいなのは置き場所が自宅でないところだ。ブログやSNS、クラウドサービスなどの運営元が管理するサーバー内であったり、ネット展開する金融会社内にある口座であったり、アカウントの効力が認められる社会の一端であったりと、とにかく外にある。だから、本連載第1回のケース04のように持ち主の死後に実害を拡大させたり、ケース02のように心ない荒らしに遭ったりする。何かあったときに、坂道を転がっていくように事態が発展してしまう。

この遺品の一人歩きを防ぐにはどうすればいいのか。まず言えるのが、サービス提供側が何とかしてくれるという甘い考えは捨てるべきということだ。

インターネットサービスの多くは厳密な本人確認なしに始められる。利用登録時に任意のメールアドレスや氏名、ときに電話番号があれば大抵のサービスでアカウントが持てる。だからこそ気楽に複数のサービスを試していけるわけだが、そのアカウントの所有を公的に証明するのは大変だ。まして、数万数十万の利用者を抱えるサービス提供側がひとり一人の生死を正確に把握するのは不可能に近い。Aさんが亡くなったとして、その情報を能動的につかみ、Aさんとおぼしきアカウントと現実のAさんの情報を照らし合わせる──そんな膨大な手間をかける企業は滅多にないだろう。利用規約に「利用者が死亡した場合はアカウントを抹消する」と明記しているサービスでも、実際は手をつけないのが普通だ。

さらにいえば、ネットバンクのように一般の銀行と同程度に厳密な身分証明が必要なサービスであっても、生死まで把握する仕組みにはなっていない(一般の銀行でも、口座所有者の死亡は遺族から伝えられて知る場合がほとんど。だから口座の凍結もリアルタイムでないことのほうが多い)。

つまるところ、オンライン型のデジタル遺品の整理は、家の外にあるにも関わらずオフライン型と同じように、自分なり家族なりが動かないと始まらないわけだ。そうでなければ誰も処理をしてくれない。大切なものを誰かに壊されたり盗まれたりしたくないなら、自分たちで外に出て、ひとつ一つのアカウントなりスペースなり口座なりを回収、または廃棄しなければならない。整備されていないのだから、すべて手作業だ。

自分の死後、この作業をノーヒントで家族にまかせるとしたら、どれだけの負担になるか容易に想像できると思う。オフラインの遺品の中身からオンラインの遺品を探し出すところから始めなければならないので、家族にとっては無駄骨が多いし、本人にとっては見られたくないファイルが発見されるリスクが増す。本人がある程度“生前準備”して道筋をつけておくことは、家族のためでもあり、自分のためでもあるわけだ。

逆に、死後も遺族に気づかれないようにするのは比較的容易かもしれない。オフラインのメイン端末にログデータを残さないようにして、実名を含む個人情報を伏せた別人格としてふるまっていれば、外部から紐づけるのは相当に難しい(もちろん、この手で得られる“匿名性”は、誰かに実害が及ばない範囲でしかないが)。

 

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  • 古田雄介

    古田雄介

    1977年生まれのフリー記者。建設業界と葬祭業界を経て、2002年から現職。インターネットと人の死の向き合い方を考えるライフワークを続けている。2015年12月に、書き手が亡くなった103件のサイトの事例を紹介した書籍『故人サイト』(社会評論社)を刊行。