本誌2010年8月号(2010年6月25日発売)掲載
ウェブ掲載日:2010年7月20日



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夏フェスの季節なので、今月はその原点を振り返ってみました。1969年の8月15日から3日間、ニューヨーク州の田舎町で開催された「ウッドストック・フェスティバル」。30組以上のアーティストが出演し、40万を超える観客が集まったこの世紀のイベントを記録したのが本作です。今回BDで視聴したディレクターズカットは、約4時間。正直、観終わったらクタクタでしたが(笑)。でもこの時期に観直せてすごく良かった。
編集のリズムはかなりスローで、冒頭ではアメリカ各地から集まってくる若者の様子が独特の“2分割画面”で延々映し出されます。この間延びしたテンポ感が、不思議なことにだんだん身体に馴染んでくるんですね。何というか──1969年夏の空気が、まるごと真空パックされた感覚。長さも含めてそこがまずこの映画の魅力じゃないかな。
実際、ベトナム戦争を抱えた当時の世相をリアルに活写したドキュメンタリーとしてもすごく面白いんですよ。愛と平和を語る若者、ヨガと瞑想、フリーセックスに励むヒッピーたち。真っ裸で池に飛び込む男女グループがいるかと思うと、カメラを向けられた若者が突然ドキッとする本質的な意見を述べたり……。ちょっとしたインタビューや風景ショットが、ナマの歴史を伝えている。たしかに今見ると理想主義だなぁと思えるところも多いけれど、でも「戦争に反対し平和を実現する手段としての音楽フェス」に対しては、みんなすごく真摯なんですね。僕自身、今回BDを観直してかなり先入観を改めました。

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ステージ映像が、またプリミティブでいいんですよ。何が凄いって、カメラマンの食いつきぶり! とりわけ初日あたりの映像では、誰も要領を得てないというか、「とりあえず撮り始めちゃった」みたいな勢いがビシビシ伝わってきて(笑)。1番手の黒人シンガーソングライター、リッチー・ヘブンスなんて、弾き語りのギターカッティングからステージを踏みならす靴の先までばっちり映っていてカッコよかったし。若きジョー・コッカーの熱唱も最高でしたよね。もちろん後半、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックスなどの大スターが次々に登場するクライマックスも素晴らしいけど、僕としては前半のドタバタした臨場感につかまれました(笑)。昨今はカメラを何十台も使うのが当たり前ですけど、まじめな話、ライヴ映像の基本ってああいうガッツだと思うなぁ。
サウンドも素晴らしかった。ヴォーカルにしても演奏にしても、とにかくステージ上の音が“録りきれてる”んです。正確な手法は分かりませんが、イメージ的には“カメラがベーシストに寄ればベースの音が大きくなる”感じ。モノラルなのに立体感があるというか、多チャンネルで撮った今のサウンドとは違う、まさに生(ライヴ)の音です。もちろん音の分離だけでいえば、たくさんマイクを使った方がクリアに聴こえるんですよ。でも例えば、スネア、キック、シンバルを別々のマイクで拾って再構築したドラムって、厳密に言えば生音とは違うものなんですよね。
その点、加工が一切されてない音の説得力はハンパじゃない。バランスもへったくれもないけど、その音楽が生まれた瞬間の空気がまさに真空パックでそのまま入っている感じ。今のようにPAのシステムが巨大化する前の時代だからできた手法ですが……本音を言うと、僕もこういう音でライヴを録りたいんだよね。DVDの場合、この広いレンジに対応できず、全体がギュッと圧縮されたような音になってしまいますが、BDであればアナログ本来の自然な響きを完璧に再現できる。今回BD版『ウッドストック』で一番感動したのはそこ。きっとロック好きな若いリスナーにとってもこの質感はたまらないんじゃないかな。
4時間近いBDを一気に観て「雨と泥にまみれた3日間のユートピア」を追体験するもよし。時間があるときに、少しずつ気になるアーティストからチェックしていくのもいい。とにかく、今年も夏フェスに行く予定のある読者には絶対オススメの1本。
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インタビュー/大谷隆之 撮影/島田香 ヘアメイク/川竹靖 スタイリスト/熊谷章子
バックグラウンド/ BACKGROUNDS FACTORY TOKYO
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