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科学技術振興機構、赤ちゃんロボットと集団コミュニケーションロボットを開発

2010年03月03日 17:13

科学技術振興機構(JST)目的基礎研究事業の一環として、大阪大学大学院工学研究科の浅田稔教授らは、人間とロボットの認知発達研究のための普及型ヒト型ロボット・プラットフォームとして、赤ちゃんロボット「M3-neony(エムスリー・ネオニー)」と、集団コミュニケーションロボット「M3-synchy(エムスリー・シンキー)」を開発した。


人間は成長していく過程でさまざまな機能を学習・発達させていくが、その詳細なメカニズムの全容は未だ明らかになっていない。例えば、乳幼児の発達過程の1つに「身体バブリング」と呼ばれる運動学習がある。これは赤ちゃんが体をランダムに動かすことにより、自身の筋肉の動きやそれにともなう身体部位の構成との関係性を認識し獲得していくものだが、そのメカニズムの全容は未だ明らかになっていない。また、人が社会の中で他者との関係を築いていく際のメカニズム、つまり社会的コミュニケーション能力の発達メカニズムについても、その詳細はわかっていない。

本プロジェクトでは、ロボットを通じて人間の認知発達のメカニズムを理解する「認知発達ロボティクス」という新しい切り口で研究を行なっている。これは、ロボット工学の「作ることによって知る」方法と発達心理学、認知科学、脳科学など人間科学の「観察することによって知る」方法とを融合した新しい認知発達研究だ。
例えば、人がある学習をする時のメカニズムを知りたい時、その学習についての仮説を立て、それに基づく学習プログラムを設計しロボットを動かす。そして、ロボットが学習・発達していく様子を調べることで、先の仮説を検証することが可能になるとともに、認知発達のメカニズムをより深く理解することにつながる。その理解が、自ら適応・学習・発達し、複雑な人間社会において人と共存できるロボットの構築に役立つと考えられる。

認知発達ロボティクスでは、プラットフォームとしてのロボット(学習プログラムを試すためのロボット)が研究の鍵を握っている。人間の認知発達を研究するためには、人間のような知覚や運動システム、それらを制御するコンピュータシステムを持ったヒト型ロボットであることが必要。

さらに近年、このようなロボット工学と人間科学の共創的研究の裾野は広がりつつあり、それにともないロボット工学研究者だけでなくさまざまな分野の研究者が容易に使うことのできるヒト型ロボット・プラットフォームの必要性が高まってきた。

今回開発された赤ちゃんロボット「M3-neony」は、赤ちゃんの運動学習や認知発達を研究するためのプラットフォーム。身長約50cm(人間の新生児と同程度の大きさ)、重量約3.5kgで、全身に22個のモーター、頭部に2個のカメラ(CMOS30万画素)と2個のマイクロフォン、胴体に1個の姿勢センサー(2軸ジャイロと3軸加速度)、全身に90個の触覚センサーを有し、それらを制御可能なコンピュータを内蔵した自立型のヒト型ロボット。これまでの小型ヒューマノイドロボットと比較して、強力なモーターと自立型でありながら視覚・聴覚・全身触覚といった豊富なセンサーを有していることが特徴。
高い運動性能を有する機体を基に開発しており、最大トルク41kgf/cm、回転速度0.14s/60°の高性能モーターにより、乳幼児の複雑で強力な動きを模倣させることが可能だ。また、乳幼児の知覚をなぞらえた各種センサーを搭載し、顔や物体、音声、接触などを認識させることができる。これらの運動機能と各種センサーにより、寝返りや四つ這いなどの乳幼児のような振る舞いが実現され、身体バブリングによる運動学習や、身体接触をともなう養育者の介助に基づく学習など、さまざまな認知発達研究が可能。


一方の集団コミュニケーションロボット「M3-synchy」は、複数のロボットと人間の間の集団コミュニケーションを机上などの身近な環境で実現するためのプラットフォーム。身長約30cm、重量約2.3kgの車輪移動型ロボットで、全身17個のモーター、センサーとして頭部に1個の広角レンズ付きCCDカメラ(33万画素、水平画角約120度)と2個のマイクロフォン、出力装置として全身に15個のLEDと胴体にスピーカーを備えている。
身振りや表情(視線と口の動き)、LEDによる頬の紅潮、スピーカーによる発話のほか、カメラとマイクロフォンによる顔や物体認識、音声認識などが可能。これまでの卓上用の小型ロボットと比較して、非言語コミュニケーションに重要な自由度を豊富に有している(眼球に3自由度、首に3自由度、腰に2自由度)ことが特徴だ。さまざまな言語的・非言語的な様式によるコミュニケーション、特にアイコンタクトなどの視線行動による集団コミュニケーションを実現することができ、社会的コミュニケーション能力の学習・発達などの研究を行うことができる。

さらに、これらのロボットは、制御装置として教材用のモーター制御マイコンを採用しているため、開発容易性を備えた研究用プラットフォームとなっている。また、汎用のロボット用サーボモーターを用いることで、高いメンテナンス性も兼ね備えている。ロボットの動作は別のPC(Windows)上のモーションエディタによって簡単に作成することができ、モーションデータをモーター制御マイコンに読み込ませることで動作を実行させることが可能。
内蔵コンピュータ(「M3-synchy」のみ)あるいは、外部のコンピュータからモーター制御マイコンにアクセスすることにより、個々のモーターを自由に制御することもできる。ロボット専用のOSはなく、デバイスのアクセスに特殊なドライバなどは必要としないため、ユーザーが自由な環境でモーターの制御およびセンサー情報処理プログラムを開発することができるため、研究者それぞれの研究目的に合わせた学習プログラムの設計が可能だ。


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