
デジカメユーザーから、長年高い支持を得ているキヤノン「IXY」シリーズの最新作として『IXY 30S』が登場した。最大の特長は、薄暗いシーンでの撮影に有利なレンズと撮像素子を搭載したこと。レンズは、ワイド側の開放値F2.0を実現。開放値はその数値が小さいほど、光量が乏しい場所でもシャッター速度が低下しにくく、手ぶれや被写体ぶれを防げるメリットがある。
一方、撮像素子にはシリーズでは初となる裏面照射型のCMOSセンサーを採用した。裏面照射とは、センサーの背面から光を当てることで、表面にある配線の影響を受けずに、効率良く受光できるセンサーのこと。この高感度CMOSと処理エンジン「DIGIC 4」のノイズ低減処理によって、高感度のノイズは目立たないように抑えられている。
そして、ボディデザインにも注目したい。5色が用意されたカラーバリエーションの内、レッド/イエロー/ホワイトの各色は、多層コーティングによって滑らかな質感とツヤのある輝きを、ブラックのモデルはマット系のコーティングによって重厚な雰囲気を生んでいる。メタル素材でありながら、金属っぽさを感じない独特の仕上げだ。またシルバーのモデルは、ステンレス素材にブラスト処理を施すことで、硬質なメタル感を際立たせている。
機能面に目を向けると、22シーンの自動選択が働く「こだわりオート」のほか、笑顔やウインクのタイミングによって自動的にシャッターを切る「オートシャッター」、画像の上下にぼかしを加えて風景をミニチュアのように仕上げる「ジオラマ風モード」などに対応。連写は、フル画素で秒間3.7コマ、250万画素相当で秒間8.4コマというハイスピードを誇る。最大1280×720ピクセルのHD動画撮影も可能だ。シリーズの上級機として外見も中身もワンランク上の内容となっている。
■基本性能
電源ボタンを押すと、レンズ部がせり出し、約1.5秒で起動。操作ボタンの数は少なく、ボディ背面はシンプルな構成だ。背面右側にあるコントローラーホイールはクリック操作と回転操作の両方に対応し、多彩な撮影モードや各種の設定を直感的にコントロールできる。
操作性
凹凸が少ないフラットボディでありつつ、手に吸い付くようにフィットする曲線的なスタイル。奥行きは23.6㎜で、撮影時の重量は約175g。超薄型や超軽量と言うほどではないが、胸ポケットに入れて気軽に持ち歩けるサイズと重量にまとまっている。

▲筒を押しつぶして、両端をカットしたような独特のデザイン。ホールドバランスは良好だ。
HS SYSTEN

高感度に強いセンサーとノイズを目立たなく処理するエンジンの組み合わせを、同社では「HS SYSTEM」と呼んでいる。『IXY 30S』では、この「HS SYSTEM」と明るいレンズとの相乗効果によって暗所での高画質を実現。ぶれもノイズも最小限に防げる。
| -速いシャッタースピードでの撮影- |

▲低感度(上)はぶれるが、高感度(下)は高速シャッターでぶれを低減できる。

▲『IXY 30S』が採用しているF2.0レンズとは、そのレンズ開放値の数値が小さいので、暗所でもシャッター速度があまり低下せず、ぶれを抑えられる。

▲暗いレンズ(写真右)で撮るとぶれる場合でも、F2.0のレンズ(写真左)ならぶれにくい。
ハイビジョン動画
動画モードでは、最大1280×720ピクセルのHD記録ができ、音声は内蔵のステレオマイクで録音可能。また、動画撮影中の光学ズームの使用や、オートフォーカスの追従、カメラ内での簡易編集に対応するなど、動画の使い勝手にも配慮されている。

▲ファンクションボタンを押してハイビジョン動画やスタンダード動画、ハイスピード記録なども選択可能だ。

▲モノクロのほか、特定色以外をモノクロ化するワンポイントカラーや、色と入れ替えるスイッチカラーに対応する。
画質チェック
人物撮影

▲初期設定の画質は、彩度とコントラストをほど良く高めた見栄え重視の傾向。センサーの画素数はあまり多くないが、細部までシャープに再現する解像力の高さも確認できる。
マクロ撮影

▲ズームレンズのワイド端で最短3㎝、テレ端で最短30㎝まで近寄って撮ることができる。しかもマクロモードだけでなく、通常モードの場合でも同じように近寄って撮影できる。
独自機能
本モデルが搭載している裏面照射型のCMOSセンサーは、高感度の強さだけでなく、信号処理が速いという特長がある。そのメリットをいかし、秒間8.4コマの高速連写や、秒間240フレームのハイスピード動画機能を新搭載。
ハイスピード撮影
ハイスピード連写では、画素数を250万画素に抑えて秒間8.4コマを実現する。また、通常の連写でも、1000画素で秒間3.7コマが可能。一方、ハイスピード動画では、秒間240コマに対応し、動きの速い被写体の一瞬の表情などを、スローモーションの映像として再生できる。

▲ハイスピード動画では、320×240ピクセルの動画を秒間240コマで撮影可能。肉眼では見えない一瞬を捉える。
■ まとめ
画質の傾向は、シャープネスを強調した、くっきりとした描写だ。遠景の再現力には少々もの足りなさも残るが、1/2.3型という小さなセンサーの画質としてはまずまず良好。セールポイントの1つになっている高感度の画質についても、このセンサーサイズの高感度としては優秀だ。
レンズは、28~105mm相当という使いやすい焦点距離をカバーした上で、ワイド側の開放値がF2.0と明るいことを高く評価したい。レンズの開放値は明るいければ明るいほど(数値が小さいほど)、暗所撮影に有利になる。例えば、従来モデル『IXY 10S』のワイド側の開放値F2.8に比べると、『IXY 30S』のほうが1段分明るいので、同じシーンを同じ感度で撮る場合、1段分速いシャッター速度が使えることになる。あるいは、同じシーンを同じシャッター速度で撮る場合、より低いISO感度を利用できる、といった利点がある。
操作の細かい点で気になったのは、背面のコントローラーホイールの上下左右に機能の名称やアイコンが印刷されていないこと。タッチセンサー機能によってホイールを指で軽く触れる液晶上にバーチャルダイヤルが表示されるとはいえ、迷った時などにすぐに表示されず、戸惑うことがあった。それ以外の操作面は、シンプルでわかりやすくまとまっている。
トータルとしては、デザインと機能、操作、画質のバランスが取れている。撮像素子を「高画素化」せずに「高感度化」したことと、レンズを「高倍率化」せずに「開放F値の明るさ向上」を図った点は、「IXY」シリーズの新しい進化の方向であり、今後のコンパクトデジカメのトレンドにもなってほしい思う。

【SPEC】
サイズ:約W100×H54.1×D23.6㎜ 重量:約175g 撮像素子:1/2.3型有効1000万画素高感度CMOS(裏面照射型) 液晶モニタ:3.0型TFTカラーワイド液晶(23万ドット) 光学ズーム:3.8倍 焦点距離(35㎜フイルム換算値):28~105㎜相当 手ぶれ補正:光学式 感度:AUTO/125~6400 記録媒体:SDXC/SDHC/SDメモリーカード/HC MMCplusカード/MMCplusカード/マルチメディアカード カラバリ:(写真左から)シルバー、レッド、ホワイト、イエロー、ブラック
文/永山昌克 撮影/増原秀樹







