
紙パックを使用しないサイクロン掃除機が日本市場に投入されて、9年。
パフォーマンスの高さと吸引力の向上などから、
堅実にシェアを伸ばしてきた。
その進化の過程で各社が最も力を注ぎ、アピールしてきたのが、吸込仕事率。
初期時には350W程度だったが、現在は500W以上が主流となっており、
紙パック式(600W以上)に迫らんとしている。
そんな中、三菱電機が送り出した『風神 TC-ZK』は、
吸込仕事率が250Wと、一般的なサイクロン式の約半分。
ここで吸込仕事率について解説しておこう。
吸込仕事率とは、先端のブラシを装着せずに、
空気を吸って測定したもの。
つまり、通常の使用状況とは大きくかけ離れている。
そこに課題を見い出し、“集じん力の向上”に的を絞ったのが本機だ。
まず、吸引力の低下の原因となっていた、
フィルターの目づまりを解消するために、フィルターレス構造を実現。
さらに、ゴミと風路を分離することでクリーンな排気も達成。
「吸込仕事率が高い=集じん能力が高い」という、
これまでの風潮に一石を投じた。
【機能&構造】
| フィルターを不要にした構造 |
ゴミに遠心力を作用させて空気とゴミを分離するのが、
サイクロン掃除機の基本。
理想的なサイクロンの構造は、円すい構造で、
サイクロン旋回部の長さが直径の2~2.5倍。

だが、従来製品では円すいでもなく、長さも足りなかったため、
微細じんが分離できず、フィルターを用いて濾し取っていた。

そのため、使用していくとフィルターが目づまりし、
吸引力が低下するため、こまめな掃除が必須。

一方、『風神』はサイクロン部にフィルターを搭載しない。

理想とされるサイクロン構造を再現し、
目づまりによる吸引力の低下という、
これまでのサイクロン式の一番の問題点をクリアした。
しかし、理想的なサイクロン構造の寸法にしたとしても、
それだけでフィルターなしで微細じんまで回収することはできない。
なぜならば、日本の家庭ゴミには繊維成分が多く、種類も多いため、
1つのサイクロンは分離が難しい。

そこで、『風神』は、2つのサイクロンを搭載し、
吸い込んだゴミをサイクロンの遠心力を用いて
「大ゴミ」「中ゴミ」「小ゴミ」の3段階に分離。

そうすることで、フィルターがなくても
微細じんまでしっかり回収する。
【検証】本当に吸引力が持続するのか?
サイクロン部にフィルターを搭載する従来製品と『風神』で、
重さ約200gの鉄球を吸い込んでみる。
新品の状態では、どちらも最上部まで鉄球が浮遊。
しかし、フィルターが目づまりした状態(『風神』はダストボックスがいっぱいの状態)で、
検証すると、『風神』のみ鉄球を上まで浮かせることができた。
つまり、フィルターがないことで吸引力が持続することを確認。
| クリーンな排気 |

遠心力だけでは取り切れなかった小さなゴミを
フィルターでキャッチしていた従来製品では、
排気する空気がフィルターを通るため、ゴミのニオイが排気に混入。
サイクロン旋回部と集じん室を分離した『風神』は、
排気のニオイを大幅に減少した。

従来製品に比べ、排気に含まれるアンモニアの濃度が約1/4に減少。
【検証】本当にフィルターがなくても排気はキレイなのか?
細かいゴミが排気に含まれていないかを検証するため、
排気部に黒い紙をセット。
賞味期限切れの小麦粉を吸い込んで、紙が白くならないかを検証。

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結果、黒い紙は白くなることはなく、
細かい粒子もしっかりと集じんされていることを確認。
| 軽くて強力な「エアエンジンブラシ」 |
回転ブラシを強力に回転させることで、
毛の長い絨毯の中やフローリングの隙間のゴミまで、
しっかり吸い込むことができる。

モーターを搭載しないため、ブラシの重量が従来製品より16%軽くなった。
さらに、ヘッドを持ち上げると、ブラシの回転数が自動でダウンする。
【POINT】絡んだ毛・糸をワンタッチ除去できる「毛がらみ除去機能」
回転ブラシを引き抜くと、ブラシに搭載された「爪」が
絡んだ髪の毛や糸などの巻き付きゴミを引っかけて除去。

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取り外した糸は、掃除機で吸い込めば手を汚さずに処理できる。
| Other |

サイクロンBOX部にフィルターを搭載しないことで、
定期的なメンテナンスを不要としたことだけでなく、丸洗いができる。
従来製品も洗うことはできたが、フィルターがないことで、
洗いも乾燥も容易になった。
■ECOモード

ECOモード運転にして、電源をON のまま掃除機から離れると
感振センサーが掃除の中断を検知し、パワーを自動でセーブ。
1回当たり、約15%の消費電力が軽減される。
さらに、掃除の中断状況が3分以上になると自動的に電源がOFF。

手元グリップに感振センサーが内蔵されているため、
ブラシを装着しない状態でもECOモードが稼働。
| まとめ |
サイクロンBOXが清潔に保てるという点も大きい。

サイクロンBOXが分解でき、すべて洗浄可能。
排気のニオイに敏感な日本人にとって、
汚れやニオイを洗い流せ、いつでもキレイを復活できるというのは、
とても魅力的だ。
また、回転ブラシに絡んだ髪の毛などを簡単に除去できる機構もすばらしい。
引っかける「爪」を設けただけだが、
今まで見落とされていたコトが実現するだけで、
これだけ便利になるのかと驚かされた。
その「毛がらみ除去機能」を設けるために、
本機ブラシはエアエンジンブラシを採用している。
上位機種ではモーターを搭載したパワーブラシが多く、
パワーブラシに比べると自走感はなく、
手前に思いっきり引いたあとに奥に出すシーンでは、
少し引っかかりを感じる。
しかし、パワーブラシよりも軽いため、動作は楽。
本機のネックを挙げるならば、本体サイズと運転音の大きさ。
運転音に至っては、深夜の掃除には向かない。
フィルターレス構造と上記2点との両立は、
諸刃の剣的な非常に困難な問題だが、
日本市場でサイクロン式のシェアを伸ばすためには欠かせない。
これまではサイクロン式掃除機と言いながらも、
フィルターを用いないサイクロン式はダイソンしかなかったわけだが、
国産初モデルの本機が登場し、
日本のサイクロン式は大きな分岐点に立った。
これまで同様にフィルターを搭載し、
吸込仕事率を武器に本体サイズ、運転音の縮小化で進めるか、
本機のように吸引力が持続する本格サイクロン式へと改進するか。
消費者が望むのは、前者と後者の良いところをあわせた、
吸引力の持続+コンパクト&低騒音なサイクロン式。
国産モデルには海外モデルにはない、
サイクロンBOXの洗浄や毛がらみ除去機能、ECOモード、空気清浄などの
細かい配慮が強みとしてある。
そういった国産らしさを保持しつつ、
課題である本体サイズと運転音のクリアを目指してほしい。
【SPEC】
サイズ:W254×H298×D422mm 重量:4.9kg 消費電力(標準モード/ECOモード):1000~約500W/1000~約100W 吸込仕事率(標準モード/ECOモード):250~約120W/250~約15W 運転音(標準モード/ECOモード):68~約63dB/68~約47dB 集じん容積:1リットル コードの長さ:5m
実勢価格:6万9800円
文/編集部 撮影/松川忍・増原秀樹







