デジタルカメラレビュー/伝統的なカメラスタイルに最新技術を満載した贅沢な逸品『FUJIFILM X100S』

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フジフイルムの『FUJIFILM X100S』は、2011年発売の『FinePix X100』の後継となる高級コンパクトデジタルカメラだ。フイルムカメラを彷彿とさせるクラシカルなデザインを受け継ぎながら、内部の撮像素子と画像処理エンジンを一新している。

最大の注目点は、同社のミラーレスカメラである『X-Pro1』や『X-E1』で培った「X-Trans CMOS」技術を採用したこと。これは、撮像素子内にあるカラーフィルターに、独自の配列を取り入れることで、他の一般的なデジカメでは欠かせなかったローパスフィルターを省く技術だ。これによって、モアレや偽色を抑えながらも、レンズの光学性能をフルに引き出している。そもそも『X100』はセンサーサイズが大きい上に、レンズ性能に徹底してこだわって設計されたカメラだったが、それがセンサー技術の改良によって、さらに高画質化したのだ。

▼撮像素子にはAPS-Cサイズの1630万画素「X-Trans CMOS II」を搭載。エンジンの強化によって、高画素化しながらも連写は『X100』の5コマ/秒から6コマ/秒へと高速化。
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▼開放値F2.0の明るい単焦点レンズを搭載。電源を入れてもレンズ部が飛び出さない非沈胴式なので、撮影時の取り回しは良好だ。
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▼電子式(EVF)と光学式(OVF)を、適宜切り替えられるハイブリッドビューファインダーを継承。EVFはさらに高精細化した。
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■新機能

新機能としては、「トイカメラ」や「ミニチュア」などのエフェクトを加えて撮影するアドバンストフィルター機能を搭載。好きなフィルターを選ぶだけで、味わい深い写真が簡単に撮れる。さらに、重ね合わせによって幻想的なイメージを作り出せる多重露出機能や、マニュアルフォーカスの操作感を高めるデジタルスプリットイメージなども新搭載。

▼絞り込んだ際に生じる回折現象を独自の信号処理でリカバーする「点像復元技術」を搭載。細部をよりシャープに再現できる。
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▼2枚を重ねて記録する多重露出を搭載。光学ファインダー内で多重露出の状況を確認できるのも『X100S』の特長だ。
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▼マニュアルフォーカスの際に、ピントを正確に確認するための機能としてデジタルスプリットイメージとフォーカスピーキングを搭載。
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■進化ポイント

AFには「インテリジェントハイブリッドAF」を採用。これは、従来通りの「コントラストAF」に加え、撮像素子「EXRプロセッサーII」に組み込まれた位相差画素によって「撮像面位相差AF」を使用する仕組み。この2つのAF方式は、被写体や撮影シーンに応じて自動的に切り替わる。これによって、AFの最高速度は約0.08秒を達成。同社では「世界最速」をうたっている。

▼ファインダーには指紋が付きにくく汚れが取れやすい独自のコーティングを採用。うっかり指で触ってしまう不安を軽減できる。
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▼従来機ではRAWボタンがあった位置に、Qボタンを新設。これを押すとクイックメニューが表示され、主要な機能がすばやく設定可能になる。
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▼電子ビューファインダーは、従来の144万ドットから236万ドットへと強化。細部のピントまで確認できる。
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■画質チェック

▼「フィルムシミュレーション」の「Velvia」モードで撮影。同名のポジフイルムを思わせる鮮やかで濃厚な色となった。このほか、新しいモードとしてネガフイルムのような色調の「プロネガ・スタンダード」と「プロネガ・ハイ」が新たに追加されている。
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▼ローパスレスを実現した新センサーと、レンズの光学性能をフルに引き出す新エンジンによって、被写体の細部までを克明に再現。画像処理による見せかけのシャープ感ではなく、現物を間近で見ているようなリアルさがあり、なまめかしく感じるくらいだ。
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使い倒しインプレッション

『X100S』の前身にあたる『X100』の登場は、ちょっとした衝撃だった。ボディはマグネシウムダイキャストによる高品位な金属外装で、そこにアナログ風のダイヤルやボタンを配置。見た目はM型ライカなどのレンジファインダーカメラを彷彿とさせ、どことなく懐かしい雰囲気が漂っている。その一方で、光学式と電子式を融合させたハイブリッドビューファインダーや、センサーに合わせて最適設計された大口径の単焦点レンズなど、カメラとしてのベース部分には最先端技術を満載。手に取っただけでワクワクし、思わず撮影意欲が高まる。『X100』はそんな刺激的なカメラだった。

その興奮から約2年が経ち、後継機『X100S』が登場した。外観を見る限りでは大きく変わった印象は受けない。左右のバランスが取れた端正な基本フォルムと、ボディに巻き付けられたシボ革風のテクスチャ、直感的な操作を可能にするボタンやダイヤル、開放値F2.0の明るい単焦点レンズ。これらはしっかりと受け継がれている。「ファインダーをのぞいて撮る」という撮影の基本を再認識させてくれるハイブリッドビューファインダーも健在だ。

では、何が変わったのか。最も大きな改良と言えるのは、撮像素子と画像処理エンジンを一新したこと。新しい撮像素子「XーTrans CMOS II」は、光学ローパスフィルターを必要としない独自のセンサー構造によって、いっそうの高解像を実現。また新エンジン「EXRプロセッサーII」の採用で、起動やタイムラグ、連写速度などのレスポンス面が大幅に向上。撮像面位相差AFの搭載によってAFが高速化したことも見逃せない。

新機能では「デジタルスプリットイメージ」に注目。これは、背面モニタに表示される左右にずれた像をピントリングを操作して一致させることでマニュアルフォーカスを行なう機能で、フイルム時代のMFカメラのような感覚を味わえる。操作面では、メニュー画面のインターフェイスや操作ボタンの割り当てなどが改良されている。液晶モニタが46万ドットのままなのは少々残念だが、それ以外は細部に至るまで使い勝手を高めるブラッシュアップを実現。「大人の趣味」として写真撮影を楽しむには絶好のカメラだ。

■結論

ズームができない単焦点レンズ搭載なので、何でも撮れる万能カメラではない。開放値の明るさをいかして、自然光のみで室内シーンや家族のポートレートを撮影したり、フットワークをいかしてスナップを撮るのに好適。マニュアルの使い勝手がいいので、自分でカメラを確実に操作したい人にもおすすめだ。

SPEC
サイズ:W126.5×H74.4×D53.9mm 重量:445g 撮像素子:APS-Cサイズ X-Trans CMOS II 有効画素数:1630万画素 画像処理エンジン:EXRプロセッサーII 液晶モニタ:2.8型液晶(約46万ドット) 焦点距離(35mmフイルム換算値):35mm相当 開放F値:F2.0 手ぶれ補正機構:なし 動画:1920×1080(フルHD) 最高感度:ISO25600 記録媒体:SDXC、SDHC、SD

文・作例/永山昌克 撮影/増原秀樹