写真の新たな楽しみ方を提案するニューコンセプトカメラ『PowerShot N』

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キヤノンの『PowerShot N』は、2013年1月にラスベガスで行なわれた「CES」(世界最大の家電総合展示会)で世界に先駆けて発表されたコンパクトデジタルカメラ。スマートフォン向けの写真投稿アプリ『Instagram』のアイコンを彷彿させるデザインと、レンズ鏡胴部に設けられたリングを操作することでズーミングおよびシャッターを切る独特のインターフェイスで注目を集めた。

機能面で注目したいのは「クリエイティブショット」だ。これは、シャッターを1回切ると、オリジナルの画像に加えて、5つの異なる写真を作成するもの。ランダムに自動生成されるので、思いもよらぬ作品が生まれて非常に面白い。お気に入りの写真は簡単にスマートフォンに転送でき、フェイスブックやツイッターといったSNSへの投稿もスムーズだ。

外観や機能がユニークなだけでなく、販売形態も同社オンラインストアのみで、専用のカメラジャケットとストラップが同梱される。

※今回テストしたのはサンプル機のため、実際の製品版とは画質や仕様が異なる場合があります。

▼コンパクトながら、焦点距離は28~224mm(35mmフイルム換算)の光学8倍ズームレンズを搭載。もちろん光学式手ぶれ補正にも対応。
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▼タッチ操作に対応した2.8型、46.1万ドットの液晶モニタを搭載。チルト機構を採用し、カメラ本体に対して90度まで調節可能だ。
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▼高感度撮影時のノイズを抑えた有効1210万画素の裏面照射型CMOSセンサーと最新の画像処理エンジン「DIGIC5」を搭載し、高画質および高速処理を実現。
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■注目の機能

操作方法が独特のため、多少の慣れが必要だ。カメラ本体には最低限のボタンやスイッチしか用意されておらず、ほとんどの操作は背面のタッチパネル液晶で行なう。またグリップ部も存在しないため、カメラを両手でしっかりとホールドする必要がある。

▼カメラ本体に対して内側のリングがズームリング、外側のリングがシャッターボタンになる。前者は右へ回すと望遠に、左へ回すと広角にズームする。後者はリングを回すのではなく、リングを上下にスライドさせることでシャッターを切る仕組みだ。
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▼チルト式の液晶モニタによってロー&ハイアングル撮影が容易に。食べ物の俯瞰撮影も簡単だ。カメラ本体の天地を逆転させると、液晶モニタの向きも自動的に追従する。
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▼タッチシャッターに対応。液晶モニタから指を離した時点でシャッターが切れる仕組みなので、タッチした瞬間にシャッターが切れる他社製品よりも手ぶれが起こりづらい。
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▼「ワンタッチスマホボタン」を押して、スマートフォン側のアプリを起動すれば接続完了。スマートフォン側からの操作で、カメラから写真を転送できる。
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▼オリジナル画像に加えて、色や構図の異なる写真5枚をランダムかつ自動的に生成する。写真の向き(縦と横)、アスペクト比なども変更される。瞬時に作成されるのでストレスはない。
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▼メモリカードには、microSDXC/microSDHC/microSDカードを採用。
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▼カメラジャケットはプラスチック製で、カメラ底面にある三脚穴に固定する。カラーバリエーションは4色で各3150円。ジャケットを装着するとmicroSDスロットにアクセスできなくなる。
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■画質CHECK

▼色が極端に転ぶクロスプロセス風の仕上がりや、トンネル効果が特徴的なトイカメラ風、モノクロなど多彩なエフェクトを楽しめる。被写体を大胆に切り取ったトリミングも新鮮で面白い。
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▼上位機種の『PowerShot S110』と同様、裏面照射型CMOSと画像処理エンジンから構成されるノイズ低減技術「HS SYSTEM」を搭載。ISO1600でL判に印刷してもノイズは気にならないレベルだ。
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■使い倒しインプレッション

第一印象は「風変わりなカメラだなあ」。保守的なカメラマニアの悲しい性ゆえ、独特のフォルムとギミック、機能をぎっしり詰め込んだ『PowerShot N』を最初からキワモノと決め込んでいた。

しかし実機に触れてみて、その印象は一変。目玉機能である「クリエイティブショット」はとにかく楽しい。シャッターを切るだけで、写真が“いい感じ”に撮れてしまう。カメラが自動的かつランダムに写真を淡い色調にしたり、がらりと色を変えたり、構図そのものを変えたり、と思いも寄らぬ作品がいとも簡単に生まれる。中には「こういう撮り方もあったのか!」と感心することもしばしば。もともとスマートフォンのカメラで撮った写真を画像加工アプリでエフェクトをかけて遊んでいた身としては、このお手軽感と意外性に一気に心を奪われた。

操作面については、シャッターボタンとズームレバーがレンズ鏡胴部にそれぞれリング状に設けられているのが特徴。カメラ前面に手を回り込ませて操作する必要があるので、ハイ&ローアングルで撮影する時はややズーミングしづらい。シャッターボタンもリングを上下にスライドさせるように押し込むため、手ぶれを誘発しやすい。本機試用中はタッチシャッターを常用していた。

新設された「ワンタッチスマホボタン」を押せば、スマートフォンへの写真転送もスムーズに行なえる。ただ個人的には「タッチアクション」機能が使いやすかった。本機能は、カメラの液晶モニタ上でジェスチャー操作することで、スマートフォンへの写真転送を可能にしてくれる。液晶モニタ上ですべての操作が完結するので使い勝手が良い。

また、カメラとしての基本性能の高さにも注目。上位機種の『PowerShot S110』や『同G15』と同様、裏面照射型CMOSセンサーと画像処理エンジン「DIGIC5」を搭載。試作機でも動作は軽快そのもので、高感度撮影時でも高画質を期待できる実力を備える。製品の性格上、マニュアル操作に非対応なのは仕方ないところだが、露出補正やISO感度、ホワイトバランスのカスタマイズは可能なので、マニュアル派の筆者にはうれしい。

スマートフォンのカメラ機能の高性能化によって存在感が薄れてきたコンパクトデジタルカメラの世界に「これからの専用機の在り方」を示した意欲作と言える。

■結論

「クリエイティブショット」とスマートフォン連携機能の合わせ技は、日常のスナップ写真をSNSへ頻繁に投稿する人には文句なしにおすすめ。本機能や独特なインターフェイスばかり注目を集めるが、カメラとしての基本性能も申し分ない。SNSユーザーのみならず、コンデジ購入を検討中の全ての人に推したい1台だ。

SPEC
サイズ:W78.6×H60.2×D29.3mm 重量:195g 撮像素子:1/2.3型裏面照射型CMOS  有効画素数:1210万画素 画像処理エンジン:DIGIC5 液晶モニタ:2.8型液晶(約46.1万ドット) 焦点距離(35mmフイルム換算値):28~224mm相当 開放F値:F3.0~5.9 手ぶれ補正機構:光学式 動画:1920×1080(フルHD) 最高感度:ISO6400 記録媒体:microSDXC、microSDHC、microSD

文・作例/編集部 撮影/松浦文生