ゲームレビュー/ The Last of Us(第1回)

main

●ハード:PlayStation 3
●発売日:発売中(6月20日発売)
●価格:5980円
●ジャンル:サバイバルアクション
●プレイ人数:1人(オンラインマルチプレイ対応2~8人)
●メーカー:ソニー・コンピュータエンタテインメント

■概要
パンデミックをきっかけに
暗黒の時代が訪れた

アメリカで突如発生したパンデミック。謎の菌に寄生された“インフェクテッド(感染者)”は凶暴化し、まだ感染していない人間を次々に襲う。この感染者たちは爆発的にその数を増やし、まもなくアメリカ合衆国は崩壊。
アメリカから秩序、良識、信頼といったものが消え、そして多くの人々が、かけがえの無いものを失った。

このパンデミックから20年後。わずかに生き残った人々は物資を奪い合いながら、緩慢な滅びを迎えつつあり、大崩壊を生き延びた後、闇市場で武器などを売りさばいて生計を立てていた主人公ジョエルは、とある取り引きをきっかけに14歳の少女エリーと行動を共にすることに──。

今週からレビューをお送りしていくゲームは、文明崩壊後のアメリカでのサバイバルと、冒険アクションを描いた話題の『The Last of Us』。アメリカの都市がすっかり廃墟になってしまっているインパクトは、すさまじいの一言!

1

■「廃墟にいる感」がリアルに感じられる
優れた演技と映像によって
構築されるリアリティ

ゲームを始めてまず驚くポイントは、キャラクターたちの細部まで作り込まれた表情。意見が対立していがみ合ったり、危機を乗り越えてホッとした表情を浮かべたり、目の前の出来事にショックを受けて呆然としたり……。そんな彼らのよろこびや葛藤、苦痛はとても生々しく、プレイヤーにも直に届いてくるかのようだ。
さらに同行者となる少女エリーは銃声にびくっと反応し、ライトの光が顔に当たると目をそむけるなど、プレイヤーの操作に応じた細かいリアクションを返してくる。

こういった表情の変化などは、俳優の顔の動きをキャプチャーして使用しているとのこと。なるほど、リアルというか“生々しく”感じるわけである。
また、廃墟の中で生き延びていくシビアな雰囲気の中、エリーの明るい言動は絶妙なアクセントに。始めのうちは「なにを呑気な」「いちいちはしゃぐな」などと思っているジョエルだが、その乾いた心にも少しずつ変化が起こってくる感じがまた良い。

2 3

4
▲時には衝突することもあるが、協力して廃墟を進んでいくうち、互いの存在を認め合っていく主人公ジョエルとエリー。ジョエルはパンデミック以降、荒廃した世界で生き抜くために心を閉ざしてきた。だが、廃墟で育ったエリーの”開かれた心”が、彼に変化をもたらす。

そして、背景ビジュアルも高水準。特に、屋内の描写にはかなり力を入れているように感じ取れた。屋外からは暗く見えていた部屋が、中に入って目が慣れるにつれて少し明るく見えるようになるなど、場面場面の明るさのレンジを意識した絵作り、ライティングがなされている。光が差し込んでいる部分をあらかじめテクスチャーに描き込んでおくといった、トリックアート的な職人芸もすばらしい。
テクノロジーと職人芸が見事に調和し、本作の世界を描き出しているのである。

5 6
▲場所によっては、一瞬実写のように見えることもある。もし自分がアメリカ人であるか、似たような環境で暮らした経験があれば、ショックを受けかねない光景だ。

ゲームの中の世界を、できるだけ現実世界に近い見え方にしようとする本作のこだわり。それによって、荒廃したアメリカという非現実的な光景は、まるで現実であるかのような迫力を帯びてくる。

■戦闘について
敵を倒すことよりも
逃げ切ることを考える

生々しい世界や物語に合わせたかのように、本作はゲーム部分にも重厚なリアリティがある。実際に足を踏みしめて体を動かしているような、少し重みのある移動感覚。また銃器は強力だが、弾丸は貴重で、しっかり狙って撃たなければあっという間に弾切れになってしまう。体力も自動回復はせず、治療しなければ回復しない。
銃撃戦に勝ったとしても、残りの体力や弾丸が乏しくなってしまえば、次に待っているのは死だ。

また、銃器以外の武器も全て消耗品であることに注意したい。火炎瓶や爆弾はもちろんのこと、ナイフですら1回使えばおしまいの使い捨てである。しかもナイフはドアをこじあける道具としても使えるので、戦闘だけで使い切ってしまうのは少しもったいない。角材やバット、鉄パイプなどの打撃武器も打撃回数に限りがあり(しかも数回程度)、正面から敵と戦うことは基本的には割に合わない行動だと言えるだろう。

……こう書くとアンチヒロイックなゲームだと思われるかもしれないが、主人公のジョエルはそろそろ老境に差し掛かろうとする普通の男性であり、超人的なヒーローではない。おそらく戦いの爽快感よりも、緊張感や恐怖を強調したゲームデザインだからそこ、こうした主人公が生み出されたのであろう。
また、そんなジョエルの立場で、いかにエリーを守り抜くのか。そこが頭の使いどころというわけだ。

幸いにも、ジョエルの聴覚は並外れたものがある。聞き耳を立てることで周囲の状況をかなり詳細に把握できるので、敵の裏をかくように、物陰から物陰へと移動しつつ、敵を無力化していくのが基本的な戦い方となる。

7 8
▲相手が普通の人間なら、気が付かれる前に背後から襲えば無力化できる。敵に発見される前にできるだけ数を減らしておきたいところ。

さらに感染者たちと出くわすようになると、戦闘はよりシビアになっていく。感染者は、こちらを発見するとすばやく迫ってくるランナーや、聴覚で獲物を感知するクリッカーなどが存在。
それぞれ単独なら身を隠すなり、こっそり通り過ぎるなりでやりすごせるのだが、数が多いと途端にやっかいな存在になる。こちらを発見したランナーの足音にクリッカーが反応するといった具合に、一匹に発見されたが最後、周囲の感染者が全て集まって来ることも珍しくない。

しかもクリッカーに捕まれば、ジョエルは即死しまう。目の前の敵に対処しているうちに、背後からクリッカーに襲われればそれでジ・エンドだ。

またクリッカーの恐ろしい点は、普通の人間やランナーのように簡単には無力化できないところにもある。背後から無力化するにはナイフ、正面から倒すには銃や打撃武器など、消耗品が必須なのだ。危険な存在だが、片っ端から倒していくには武器や弾薬が足りないわけで、なかなかに困った敵なのである。

9 10
▲できれば気が付かれないままやり過ごしたい相手。それが難しい場合は、なるべく背後からナイフを使って無力化するようにしたい。

■まとめ
緊張感ある状況を
いかに切り抜けていくか?

『The Last of Us』の世界は実に過酷である。敵は強力で、倒すためには消耗品が不可欠なことも多い。
だがその分、うまく危機を乗り越えた時の達成感はかなりのものがある。頭を使って戦闘を回避したり、敵を無力化するのが好きな方には特に楽しめる作品であろう。また、ゲームをプレイしながら映像やストーリーを楽しむのが好きな方には文句なくおすすめできそうだ。

次週のレビューでは、廃墟に残された物資を使ったアイテム作成や武器の強化、インターネットを使ったマルチプレイなどにフォーカスしてみよう。

『The Last of Us』公式サイト
http://www.jp.playstation.com/software/title/bcjs37010.html

©2013 Sony Computer Entertainment America LLC. Created and developed by Naughty Dog, Inc.

文/高橋祐介