ゲームレビュー/ The Last of Us(第3回)

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●ハード:PlayStation 3
●発売日:発売中(6月20日発売)
●価格:5980円
●ジャンル:サバイバルアクション
●プレイ人数:1人(オンラインマルチプレイ対応2~8人)
●メーカー:ソニー・コンピュータエンタテインメント

■概要
崩壊したアメリカで
それでも生きていく意味とは

アメリカで突如発生したパンデミック。謎の菌に寄生された“インフェクテッド(感染者)”たちは爆発的にその数を増やし、まもなくアメリカ合衆国は崩壊。アメリカから秩序、良識、信頼といったものが消え、そして多くの人々が、かけがえのないものを失った……。

文明崩壊後のアメリカで、一人の男と少女のサバイバルを描いた話題のヒット作『The Last of Us』。最終回となる今回は、シングルプレイ後半のプレイ感や、シナリオ全体のテーマについて触れてみたい。

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■中盤以降のプレイ感
感染者は脅威だが
最大の脅威はやはり人間

本作に登場する感染者たちは、群れになると大きな脅威となる。なにしろクリッカーに捕まれば一撃死。他の敵を振りほどこうとしているうちに、クリッカーにやられてしまうことが多い。初めて感染者と対峙した場面では、きっと多くのプレイヤーが苦戦したことだろう。(かくいう筆者も何度かゲームオーバーになりました……)

またクリッカーよりもタフで、胞子を投げ付けてくる強敵・ブローターが登場する場面では、感染者に発見されるのはなんとしても避けたい。ブローターを相手にするのとしないのとでは、弾薬の消費量に大きな違いが出てくる。

だがゲーム中盤以降に、プレイヤーを悩ませるのは感染者よりも、むしろ廃墟で暮らす人間たちの方かもしれない。感染者の群れはやっかいだが、対処法がわかってしまえば大分楽になる。ランナーは物陰から無力化、クリッカーは弓で倒すというように、発見されることなく処理しやすい。

だが人間の集団と戦う際は一筋縄ではいかない。敵は視覚と聴覚の両方を使い、死角をカバーしながらこちらを捜索してくる。こちらが銃を使った場合は物陰に隠れながら慎重に反撃してきたり、オトリ役がこちらの注意を引き付けている間に別の敵が側面から接近するなど、連携しつつ応戦してくる。

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▲物陰で銃弾をしのいでいるところに火炎瓶を投げ込まれ、たまらず飛び出したところを狙撃されるなど、思わず「うーむ」と唸らされることも。

敵が襲ってきた時は積極的に反撃したくなるかもしれないが、それは物資と弾に余裕がある時だけにしたほうが無難。最小限の敵を倒しつつ、相手の追跡をまくつもりで動いたほうが生き残りやすいようだ。
なにせ多勢に無勢である。本格的な反撃を開始するのは、相手がこちらを見失ってからでも遅くはない。

■物語のテーマ
「敵を倒す」ことにも
問いかけを感じてしまう

こんな具合に、先に進むほど辛い状況がプレイヤーを待ち受ける本作。だが、それは単にゲームの難易度が上がるという意味だけではない。あくまで個人的な感覚かもしれないが、目の前にいる敵、得に人間を倒すことに抵抗を感じるようになる。ストーリーを進めるにつれて「敵を倒す」というゲーム的な感覚が薄れてきて、プレイヤー自身の倫理観で作中の物事に何かを感じるようになっていく……とでも書くべきか。
主人公・ジョエルたちは旅を続けるうちに、廃墟で生きるさまざまな人々の姿を見ることになる。また廃墟には人々の記録が残されており、パンデミック発生当時や、その後に何が起こったのかを知ることができる。
パンデミック以降、廃墟に取り残された人々は自分の家族や身内しか信じられなくなり、いつしか見ず知らずの相手とは殺し合うのが当たり前になっていった。そして一度は協力関係を結んだ相手でも、自分の大切な存在のためであれば容赦なく……。

社会から秩序、良識、信頼が失われても、身近な人々との絆だけは消えなかった。だが絆が消えなかったがゆえに、人々はより凄惨な殺し合いを続けていると感じられた。

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▲廃墟で手に入る遺物も探してみよう。崩壊していくアメリカの姿をより詳しく知ることができる。

エリーを守るためにおびただしい数の敵を倒し、物資を集めるジョエルと、自分たちのコミュニティを維持するために他人を襲い、物資を奪う人々の間に、筆者はあまり違いを感じられない。だからゲームの敵とは言え、殺すことにどこか抵抗を感じてしまう。また感染者たちにしても、かつては笑ったり泣いたりしていた同じ人間なのである。

本作のストーリー要素や、プレイヤーが操作を通じて得るゲーム体験には、「この選択は正しいのか」「本当にこの行動で良かったのか?」という問いかけがたくさん詰まっている。ネタバレになってしまうので具体的なことは書けないが、「敵をやっつけた、クリアした、スッキリ!」では済まされない、ズッシリと重いものが残るのだ。

■まとめ
誇張されてはいるが
これは我々の物語でもある

というわけで、スリルたっぷりのサバイバルや隠密戦闘を味わえただけでなく、筆者の心にいろいろな問いかけを残してくれた『The Last of Us』。もちろんゲームなのでカリカチュアライズされてはいるが、本作が描いている世界も、我々が暮らしているこの世界の一面には違いない。作品が問いかけてくるものは、社会に対する問いであったり、個人に対する問いであったり、さまざまなレベルのものがある。家族と暮らしている方やお子さんがいる方はもちろん、今はそうではない方も、きっと何かしら感じるものがあるはずだ。
「いやー、ゲームって本当に良いものですねー」……などと、ちょっと懐かしい映画番組のシメの言葉をもじりたくなるようなゲーム体験でした!

『The Last of Us』公式サイト
http://www.jp.playstation.com/scej/title/thelastofus/

©2013 Sony Computer Entertainment America LLC. Created and developed by Naughty Dog, Inc.
文/高橋祐介