PlayStation 4はブロードキャストで爆発する

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11月15日に北米で発売された『PlayStation 4(PS4)』は、発売後24時間で100万台以上の実売を達成。その後、欧州やラテンアメリカ、アジア圏でも次々と見事なローンチを果たし、いまだに供給が追いつかない状況が続いている。コンシューマ機が圧倒的なシェアを占める欧米市場では、『PlayStation 3(PS3)』以来、長く渇望されてきた次世代機の登場が圧倒的な賛辞をもって迎えられている。
来年2月22日まで待たされる日本のゲームファンにとってはちょっと悔しさもあるだろうが、巨大な欧米マーケットで先んじて成功を収めることは、のちのち日本にも恩恵をもたらすことになる。市場でのシェアの獲得は、すなわち新しいゲームソフトの獲得を意味する。『PS3』や他機種から『PS4』へのソフトの開発ラインの移行が加速することによって、より多くのタイトルが『PS4』で遊べるようになるはずだからだ。
海外での供給不足が来年のローンチに影響しないか、待っている日本のゲームファンには気になるところだが、SCEJA河野弘プレジデントはインタビューで「年内に予約した方に発売日にお渡しするのはコミットメント」と明言されているので安心していいだろう。ゲーム業界でコミットメントと言えば……とか余計なことは書かずに、さっそく本題に。

より使いやすくなったユーザーインターフェイス
『PS4』を立ち上げてみてまず感じるのが、UI(ユーザーインターフェイス)の使い勝手の良さだ。従来のクロスメディアバーは、カテゴリごとにアイコンがタテ・ヨコに整然と配置され関係性が一目瞭然だったが、あえて言えば、すべてが等価なぶんだけ無駄な経路をたどるマイナスもあった。『PS4』のホーム画面は「機能エリア」「コンテンツエリア」「コンテンツインフォメーションエリア」に分かれている。上部の「機能エリア」は設定、フレンド、メッセージなど、何かプラスアルファの操作をするための項目が集められている。下部の「コンテンツインフォメーションエリア」は、ローンチ前だから今はまだ何も表示されていないが、ローンチ後にはさまざまな情報が並ぶことになるはずだ。メインは中央の「コンテンツエリア」。最近起動したものが左から順に表示されるので、同じゲームを繰り返し遊ぶときに便利だ。いつも使うものが真ん中に大きく表示されるのは、視覚的にもわかりやすい。

『PS4』を楽しむには、ネットワーク接続環境とSony Entertainment Network(SEN)アカウントはほぼ必須。ネットワークを介したプレイやアクションを楽しむにはつねに必要になる。だが、そもそもアカウントは無償のものだし、ネットワークに接続しないで『PS4』を楽しみたい、という人は現実的にはほとんどいないだろうから、ストレスでも手間でもないはずだ。もはやオンライン環境の有無がどうのこうのという時代でもあるまい。
オンライン対戦をするには『PlayStation Plus』に加入する必要があるが、対応タイトルも充実してきていることに加えて、利用権プレゼントキャンペーンも用意されているから、フリープレイなどのお得なサービスを積極的に使い倒せばいいのではないか。

 “『プレイステーション』らしさ”を思い出させてくれる『KNACK』
日本ではローンチの本体2種に、『KNACK』のダウンロード用プロダクトコードが同梱される。つまり事実上、ソフトが1本ついてくるわけだ。そんな『KNACK』、おまけソフトにはもったいないくらいの王道アクションゲームに仕上がっている。
操作はいたって簡単。攻撃はほぼ二段ジャンプによるアタックとパンチだけ。難易度を選択すれば、複雑なボタンの組み合わせが苦手なゲームに不慣れなビギナーから、アクションゲームの得意なゲーマーまで誰でも楽しめる。特に巨大化したナックの圧倒的な破壊力は爽快。海沿いの街並をビルをぶっ壊しながら進み、車をぶん投げてジェット機を落とすところなど、完全にキングコングの世界観。ただ、あえて難点を探すなら、いろいろな武器を装備したり技のバリエーションが増えていくわけではないので、ハードなアクションゲームをやり込んでいる人にはやや単調に感じられるかもしれない。ローンチで本体を買うのは主にヘビーなゲーマーだから、発売後の評価は分かれるだろうし、派手な目新しさもないかもしれないが、“『プレイステーション』らしさ”を思い出させてくれるゲームだ。

ローンチに発売が予定されているタイトルの中には、すでに『PS3』で発売済みのものもあるが、『PS4 アップグレードプログラム』に対応していれば安価で購入できる。大作はどうしても発売が先送りされがちだが、『METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES』がローンチから1カ月後の3月20日に発売されるのも朗報。
また、主にダウンロード専用で発売されるであろうアイデア勝負のインディーズタイトルもチェックしたい。ここが『PS4』らしさのひとつでもあるからだ。開発環境が変わったことで、これまで以上に小規模なチームでソフトをつくることができるようになる。インディーズの定義はさまざまだけれど、「これでインディーズ?」というハイクオリティのものもあるし、「なるほどインディーズ。だからこそ面白そう」というものもある。雑誌などで紹介されるのはパッケージソフトがほとんどだが、これからはダウンロードソフトの面白さをどう伝えていくかも、メディアの重要な役割になってくるだろう。できるだけ細やかに情報を提供するひと工夫がほしい。

さまざまな試みがゲームとの距離を変えていく
『PS4』には特徴的な新しい試みがふんだんに盛り込まれている。
別売りの『PlayStation Camera』があれば、対応ゲームで遊べるだけでなく、オンラインマルチプレイでボイスチャットができるほか、映像や音声つきでゲームを配信することも可能だ。必須ではないけれど、あるともっと『PS4』を楽しめること間違いなし。
『PlayStation Vita(PS Vita)』と連携できる「リモートプレイ」機能を使えば、離れた場所でも『PS Vita』を使ってゲームのつづきが楽しめる。『PS3』でも一部で実現していた機能だが、いよいよ本格稼働することで、『PS Vita』の携帯端末としての潜在力も大いに発揮されるだろう。
いまはまだ試すことができなかったが、ローンチ時には対応が始まる『PlayStation App』を使えば、スマホやタブレットが『PS4』のセカンドスクリーンになる。後述するシェア機能で公開されるプレイ動画を電車の中で鑑賞したりできるのだ。AndroidだけでなくiOSに対応するのも、iPhoneユーザーにはうれしいところだ。
『PS4』が単体のゲーム機としてだけではなく、『プレイステーション』という遊びの核になって、『PS Vita』やスマホ、タブレットなどが有機的に結びついていく。ゲームそのものはいきなり大きく変わりはしないだろうが、ゲームとの距離感は加速度的に変わっていくだろう。

『PS4』の真髄はなんといってもシェア機能だ。「スクリーンショット」「ビデオクリップ」「ブロードキャスト(配信)」の3つの楽しみ方があるが、特にブロードキャストは圧倒的な破壊力だ。
ツイッターやフェイスブックにキャプチャー画像をアップしたり、最長15分遡って記録できる動画を公開したりできるのは楽しいが、意識的に「誰かにつながりにいく」感はまだ多少残る。すでにスマホなどで日常的にやっていることに追加される感じ。手順の簡単さには驚かされるけど。
だが、ブロードキャストの凄さは「いつもみんなとつながっている」ことがはっきりと体感できるところだ。ボタンを押すだけでいきなり自分のプレイを公開できたり、サムネイル群から面白そうなプレイを選ぶだけですぐに観戦できる。自分のプレイを人に見せる気恥ずかしさも、ボタンひとつの手軽さがどこかに吹き飛ばしてくれる。北米でのローンチ以降、ひと月足らずで2000万分(約38年分!)の動画が配信された、という驚きの発表があったが、シェア機能がいかに魅力的なものかがよくわかる。
わざわざ誰かにつながりにいくのではなく「まわりにいつもみんながいる、みんなと同じ場所につねにいる」感覚は新鮮だ。ゲームで遊ぶことから、ふだんPCで観ているような生中継まで、すべてがひとつのモニタ上でつながって完結する。ユーザーひとりひとりが“マイ放送局”を持てるようになるわけだから、ニコ生などの既存の生中継番組の意味合いも変わっていくだろう。
いつでもどこでもゲームでつながっている。ゲームがいつもそばにある。ユーザー自身が発信者になれる。
『PS4』が目指した新しいゲーム体験というのは、まさにこういうことなのだ。
いまはまだ外国語が並んでいるサムネイルが日本語で埋め尽くされ、みんながいつもすぐそばで熱狂的にプレイしている。そんなワクワクする日が、もうすぐやってくる。

文/岡村尚正(「HYPERプレイステーション」創刊編集長)

(注釈)
※当記事は、北米版『PS4』を使用したレビューを記載しており、国内版『PS4』と本体仕様や国内サービス開始前のためサービス内容などが違う場合があります。個人輸入、並行輸入品はメーカーサポート外になります。