「バブル期そだち」第4回 石黒正数(1977年9月8日生まれ)その3

氷河期世代でもあるポスト団塊ジュニア(1975年4月~1980年3月末生まれ)のあの人に、子供として過ごした1986年から1991年頃までの日本が好景気に沸いていたいわゆるバブル時代について、同世代が聞くインタビュー連載。第4回は、『それでも町は廻っている』で2013年の第17回メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞された漫画家・石黒正数さんです。4週にわたり公開していきます。
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<プロフィール>
1977年9月8日、福井県生まれ。2000年、『アフタヌーンシーズン増刊』にてアフタヌーン四季賞秋の四季賞を受賞した『ヒーロー』でデビュー。以降、SF(すこし・ふしぎ)テイストを根底に、日常コメディ、ミステリー、青春ドラマ、ホラー、ギャグなど、さまざまな雑誌媒体で作品を発表。現在、第17回メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞作の『それでも町は廻っている』(少年画報社/『ヤングキングアワーズ』)、『木曜日のフルット』(秋田書店/『週刊少年チャンピオン』)、『別冊 木曜日のフルット』(秋田書店/『別冊少年チャンピオン』)を連載中。ほか、主な作品に、『外天楼』、『ネムルバカ』などがある。


『ビックリマン』や『ファミコン』と言えばバブル期そだちの人なら必ず通った道。しかし人一倍想像力が豊かな石黒さんは、ほかとはちょっと違ったある経験をしていた。後に漫画家となる石黒さんが幼少期にどんな遊びをしていたかを探ってみた。

―小さい頃はどんな遊びをしてたんですか? やっぱり『ビックリマン』とか?

『ビックリマン』もハマってましたけど、俺が熱心に集めてたのは『ネクロスの要塞』のほうですね。

―あのビニールの中にチョコボールみたいなのが入ってるやつ!

そう、まだ実家に沢山残ってて、最近持ってきたんですよ。
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―これありましたね。フィギュアとかカードがセットになってて。

『ビックリマン』と同じで、買い過ぎるとチョコの処分が大変で。

―食玩あるあるですね。

だからチョコスナックを叩いて崩して一度溶かしてから冷凍して、スティックチョコにして食べたりしてました。

―我々の世代だと『ファミコン』は外せないですが、どんなゲームをやってましたか?

めちゃくちゃハマりましたね。小遣い制になるまでは親にダダをこねると『ファミコン』ソフトを買ってもらえるシステムがあって、そんな千載一遇のチャンスなのに、俺は必ずクソ……もといマイナーゲームを引いてしまうんですよ。

―なぜ(笑)。

『ファミコン通信』みたいな雑誌は読んでなかったし、店頭でパッケージを見て選ぶしかなかったんで。

―子供のジャケ買いですね(笑)。

これがまた、クソゲーほど想像力を働かせてくれるいいパッケージなんですよ。

―それって石黒さんの想像力が豊かすぎるからじゃないですか?

良く捉えればそうかもしれないけど、弟が買ってもらった『ファミコン』ソフトはいまだに名作と呼ばれる作品が多いのに、俺が選んだものは誰も知らないものばかりで。『バイオ戦士DAN』とか『エルナークの財宝』とか。

―昔の『ファミコン』ソフトのパッケージって、ゲームに登場しない変な女神の絵とかあったりして、それに釣られて買ったとかじゃないんですか?

いやいや、むしろそういうパッケージだと恥ずかしいから買ってとは言えなかった。完全にジャケ買いですよ。

―『スペランカー』よりもクソゲーだったんですか?

いやいや、あれは弟が買いましたけど、ただ難度が高くて死にやすいだけで、俺が買った『ファミコン』ソフトに比べたら断然名作。操作性もレスポンスもいいし。

―当時はクソゲーという言葉も普及してなかったし、ガムシャラにやってましたよね。

今思えばクソゲーも名作も分け隔てなく遊んでいた。そう言えば、この間も秋葉原で安い『ファミコン』ソフトをジャケ買いしたのですが、偶然にも全部ジャレコだったんですよ。

―自他共に認めるクソ……あ、マイナーゲームメーカーですね(笑)。

いやいや、ジャレコのジャケットは本当に俺の想像力を掻き立てる傑作揃い。あとこんなのも最近買ったんですけど。見て下さいよ、このパッケージ。めっちゃ面白そうでしょ?
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―え……。そうです……かね? ちょっとわからない(笑)。

めちゃくちゃ面白そうじゃないですか? じゃあこれはどうですか? このタッチといい、ロニー・ジェームス・ディオとかのメタル好きな人が作ったんじゃないかな。
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―昔から玩具店によく通ってたんですか?

『SDガンダムBB戦士』が流行った時は、朝早くに玩具店に並んだこともあります。朝5時に起きて、真っ暗の中、チャリを飛ばして。すると同じぐらいの時間に並びに来ている敵がやっぱり沢山いるんですよね。そこで開店の10時までずっと待ってて。

―そんなに「ガンダム」が好きだったんですか?

「ガンダム」自体は本編すら観たことなかったけど好きでしたね。当時はガチャガチャとか『カードダス』とかが社会現象になってて。だから今でも「ガンダム」のことはモビルスーツとパイロットと名言のことしか知らない(笑)。

―『ディスクシステム』のゲーム『SDガンダムワールド ガチャポン戦士 スクランブルウォーズ』が流行ったのを覚えてます。

ハマったハマった。

―僕はあのシミュレーションモードが苦手で、バトルモードの時だけコントローラーを借りてやってました(笑)。

そういう奴いましたね(笑)。そこから「ガンダム」に入っていく人も多かったし。いつの時代でもうまく商売やってますよね。

―当時は「ドラクエ」も流行ってましたが、どうでした?

「ドラクエ」に関してはラッキーな経験がありまして、ある日デパートに行った時、親父が「これ、『ドラクエII』じゃない?」って俺に言うわけですよ。でもその日は『ドラクエII』の発売直後で、その前日にも『ドラクエII』に長蛇の列ができてどこも品薄・完売ってニュースになってたんです。それを知ってた俺は、『ドラクエII』なんてあるわけない、これだから親父は……って思ってたら、本当にそこに『ドラクエII』があったんですよ。

―なにそのミラクル(笑)。『III』の時の社会現象は覚えてますが、『II』の時もあったんですね。

そう。だから俺はあんまり「ドラクエ」に興味はなかったんだけど、そんなことがあったので親父に買ってもらうことができた。

―そんな経験のある人、あまり聞いたことないです。

ところが同じような経験を『スーパーファミコン』発売の時にもするんですよ。

―まさか(笑)。

これまた、たまたま行った玩具店に『スーパーファミコン』が山積みになってまして。

―発売直後とか?

どこに行っても売り切れって言われている時期。そんなアホなって自分の目をこすりましたから。

―ニセモノだったんじゃないですか?

いやいや、店の人にまでわざわざ聞きましたもん。「これヌーパーファミコンじゃないですよね?」って(笑)。

―ロッテとロッチみたいな(笑)。

そしたら店の人に「あるところにはあるんだよ。見付けちゃったね、ボク」って言われて。それで速攻買ってもらって。

―友達の中での順位が上がったんじゃないですか?

クラスで持っているのは俺だけだったんで、ヒーローでしたね。普段うちに来ないような奴が遊びに来たり(笑)。

―僕も持ってる友達の家に遊びに行きましたよ。回転・拡大・縮小の描写とか衝撃でした。

予約して数カ月後に手に入れられるという奴がクラスにいたんですけど、ちゃっかり俺が手に入れたもんだからそいつは格下げ(笑)。「もうあいつの時代は終わった」とまで言われてて。あと、俺がよく行ってたゲームショップで、『ファイナルファンタジーVI』を発売日前に売ってもらったこともありました。
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―つくづくゲーム運がいいですね。この連載の第1回に登場した押切蓮介先生に怒られますよ(笑)。でも確かに、当時はお店のさじ加減で発売日前に売ってたりしましたよね。

その店の店長は明らかに不良上がりの強面の人だったんですけど、俺には優しくて。でも不良のカリスマだったので、その店に沢山の不良が集まるんですよ。

―そんな中に1人で?

俺が小学生の時だと、相手の不良は中学生でしたね。

―カツアゲされるに決まってる(笑)。

それが、その不良たちが俺にちょっかい出そうとすると、店長が「そいつは常連だから手を出すな」って注意してくれて。

―格好良すぎ! それって石黒さんの作品によく出る「一度言ってみたい」シリーズみたいですね。

そこまでではないですけど。おかげで絡まれたりもせず、平和に『ファミコン』ソフトを買えました。

―聞いてるとそんなに不遇な幼少期を過ごしてはなさそうなんですけど(笑)。

いやいや、これは小学生の頃の話ですから、中学に入ってから転がり落ちるんですよ。

その4に続く。

インタビュー・文/瀧佐喜登(1977年3月18日生まれ)


Information

石黒正数主要作品発売中!

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『それでも町は廻っている(12)』
定価:本体533円(税別)
発行:少年画報社
http://www.amazon.co.jp/dp/4785951745
メイド喫茶でアルバイトをする探偵志望の女子高生・嵐山歩鳥と周りの人びとが巻き起こす、SF(すこし・ふしぎ)日常群像劇の最新12巻。2010年10月期のアニメ化作品。『ヤングキングアワーズ』にて連載中。
©石黒正数/少年画報社

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『木曜日のフルット(3)』
定価:本体419円(税別)
発行:秋田書店
http://www.amazon.co.jp/dp/4253216129
半ノラネコのフルットと飼い主の鯨井先輩が送る、心がほっこりするダメな日常を描いたショートギャグ漫画の最新3巻。『週刊少年チャンピオン』『別冊少年チャンピオン』で連載中。
©石黒正数/週刊少年チャンピオン

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『外天楼』
定価:本体700円(税別)
発行:講談社
http://www.amazon.co.jp/dp/4063761592
増改築を繰り返したマンション「外天楼」で起こる出来事の数々。少年たちのエロ本探しから始まった物語の行き着く先は――。石黒さん曰く、漫画のミステリー手法を突き詰めた作品。
©石黒正数/講談社(KCDX)

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『ネムルバカ』
定価:本体552円(税別)
発行:徳間書店
http://www.amazon.co.jp/dp/4199500758
冴羽女子寮の同室である、ミュージシャンを目指す先輩と目標のない後輩。2人の日常をゆるくも切なく描いた大学生の青春ストーリー。関連作の『響子と父さん』も好評発売中。
©石黒正数/徳間書店