早い、安い!銀塩フィルムをデジタル化する冴えたやり方

古くからの写真愛好家の悩みの種といえば、銀塩カメラ時代に撮りためた「フィルム資産」ではないだろうか。「フィルムが傷んでしまう前にデジタルデータ化したい」と思いつつも、大切なフィルムの数々を放置しているケースがほとんどだ。

その理由は明白である。

デジタルデータ化は非常に手間がかかるのだ。現行の高性能フラットベッドスキャナーでフィルム1コマを高解像度スキャンするのに1分以上の時間を要する。しかも、フィルム上にあるホコリや汚れの補正機能を利用すれば、さらにその数倍以上の時間がかかってしまうのが現状だ。数百~数千コマのフィルムをスキャンするのは気が遠くなるような話で、多くの写真家がフィルムをデジタルデータ化しない最大の要因となっている。

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▲銀塩カメラ時代に撮りためたフィルムの数々。フィルムスキャナーやフィルムスキャン対応の複合機を使ってデジタルデータ化するのが一般的だが、初期コストや1コマ当たり数分程度の作業時間を要するのがネックだ。

ところが4月15日、デジタル中判一眼レフカメラ『PENTAX 645Z』の影に隠れて『PENTAX FILM DUPLICATOR』という製品が発表され、一部の写真愛好家から注目を集めた。この製品は、フィルム自体をデジタルカメラで撮影してデジタルデータ化するためのアクセサリーキット。本製品の利点は、作業時間を大幅に短縮できるところだ。スキャナーが数分かけて読み取るのに対して、本製品ならばシャッターを切ったその瞬間にデジタルデータ化が完了している。「フィルム自体を撮影する」という手法は、実は銀塩カメラの時代から存在し、フィルムを複製したり、貴重なフィルムをバックアップしたりする際によく用いられていた。つまり『PENTAX FILM DUPLICATOR』は、フィルムカメラ時代のソリューションをデジタルカメラ全盛のこの時代に合わせて蘇えらせた製品と言っていい。

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▲『PENTAX FILM DUPLICATOR』は35mm判のほか、オプションの6×6判、6×9判といったマウントホルダーを追加すれば中判フィルムにも対応する。レンズ交換式デジタルカメラ、マクロレンズ、外付けフラッシュは別売。実勢価格13万円前後。

確かにスキャナーの数十倍のスピードでデジタルデータ化できるのは非常に魅力的だが、『PENTAX FILM DUPULICATOR』は実売価格13万円前後なので初期費用を考えるとかなり敷居が高い。この記事を読んで「過去の資産にそこまでお金をかける余裕はない」という人がほとんどであるはずだ。そこでグッと敷居が低くなる方法を提案したい。ここからが本編の始まりである。

今回の主役は『スライドコピーアダプター ES-1』だ。この製品はその名の通り、スライドをマクロレンズで複製(=撮影)するためのアダプターで、まずはスライドを本製品の先端にセットして本製品自体はマクロレンズの先端に装着する。あとはピントを合わせて撮影すれば、スライドのデジタルデータ化はあっという間に完了だ。百聞は一見に如かず。実際に手順を見ていこう。まず用意すべきものは以下4点。

・35mmスライドマウント
・『スライドコピーアダプターES-1』
・マクロレンズ『AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G』
・デジタル一眼レフカメラ『Nikon D5300』

マクロレンズとカメラに関しては、上記の組み合わせである必要はない。35mm判換算値で焦点距離60mmの等倍マクロ撮影ができれば、どのメーカーのカメラやレンズであっても『スライドコピーアダプターES-1』は利用できる。

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▲『スライドコピーアダプター ES-1』は、35mmスライドを複製するためのアクセサリーキットで、こちらはデジタルカメラとマクロレンズが必要だ。35mm判フィルムのみ対応。実勢価格3600円前後。

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▲『スライドコピーアダプター ES-1』、マクロレンズ、デジタルカメラをそれぞれ装着したところ。『ES-1』の先端に35mmスライドをセットし、デジタルカメラで接写することでフィルムをデジタルデータ化する仕組みだ。

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▲デジタルデータ化したいフィルムをスライドマウントにセットする。スライドマウントは40個セットで数百円程度だ。

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▲スライドを『ES-1』の先端にスライドをセットする。スライドはクリップでしっかりと固定される。

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▲今回はライブビューで撮影。まずは液晶モニターでピントを合わせる。ISO感度はなるべく低く、絞りもF8以上にセットし、適正露出を決める。なお、スライドがレンズの先端に固定されているため低速シャッターでもブレが発生することはない。最後に、明るい屋外や照明などにカメラを向けてシャッターを切ること。

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▲撮影後はパソコンで確認する。ポジフィルムの場合、元のフィルムと比較して必要ならば修整を行なう。不要な部分もトリミングしておく。

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▲ネガフィルムの場合もポジフィルムと同じ要領で撮影する。

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▲ネガフィルムはデジタルカメラで撮影したままの状態では使えないので、Photoshopなどで階調を反転させる(左、中央)。さらに明るさやコントラスト、色かぶりなどを修整し、本来のイメージに近い写真に仕上げていく(右)。ポジフィルムに比べると撮影後の手間が多いのが難点だ。

以上のように『スライドコピーアダプターES-1』はフィルムを一瞬でデジタルデータ化できるだけでなく、本格仕様の『PENTAX FILM DUPULICATOR』のわずか30分の1以下という価格も魅力。フィルム資産の管理に困っている人は、まずこの方法から試してみてはどうだろうか。

(永井太郎)