こんなカメラを待っていた。『サイバーショット DSC-RX100M3』とともに、いざ鎌倉!

こんなカメラを待っていた──。

ソニーから登場したハイエンドコンパクトデジタルカメラ『サイバーショット DSC-RX100M3』が発表された時、そんな思いが脳裏を過ぎった。初代モデルにあたる『サイバーショット DSC-RX100』を愛用していたころに感じていた不満点がことごとく解消されていたからだ。

例えばレンズ。『RX100』および2代目『RX100M2』は28~100mm相当の光学3.6倍ズームレンズで、ワイド端こそF1.8と明るかったものの、テレ端ではF4.9と一気に暗くなってしまう点がとても使いづらかったのも事実。

暗所でテレ端を使うと、ふんわりと柔らかいボケ味が得られなかったり、シャッタースピードを稼げなかったりと使い続けていくうちにフラストレーションが溜まっていった。ワイド端が見事なボケ味だっただけに、「ズーム倍率を落としても構わないからテレ端を明るくしてほしい」と何度思ったことか。

そして『RX100M3』では、ワイド端でF1.8、テレ端でF2.8という明るさを持つ24-70mm相当の大口径ズームレンズが採用された。実はこのズームレンジがまた心憎い。熱心なカメラファンならピンとくるであろう「24~70mm」という焦点距離は、カメラメーカー各社の看板レンズともいえる大口径&標準ズームレンズのそれとピタリと当てはまるのである。

本製品がハイエンド一眼レフユーザーのサブカメラとしても位置づけられていることから、あえてこの焦点距離に設定してきたのではないかと思われる。しかも、同じセンサーサイズを採用したニコンのミラーレスカメラ「Nikon 1」シリーズでも、これほどハイスペックなズームレンズは存在しないことから、ますます魅力的な製品に感じてしまう。

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▲1インチの裏面照射型CMOSセンサーを搭載した高級コンパクトデジタルカメラ『サイバーショット DSC-RX100M3』(実売価格9万5000円)とともに鎌倉&江ノ島を散策。初代モデルユーザーの視点から、どこが強化されたかをチェックする。

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▲35mm判換算で24~70mm相当の大口径ズームレンズ、カールツァイスの『バリオ・ゾナーT*』を搭載。テレ端側の最短撮影距離が55cmから30cmに短縮された点も見逃せない。

さらにレンズと同じくらいの衝撃を受けたのが、0.39型123万ドットの有機ELを採用した電子ビューファインダーを内蔵したことだ。個人的には、コンパクトデジタルカメラでもミラーレスカメラでも電子ビューファインダーはマストだと考えている。

理由は2つ。ひとつは、ファインダー撮影の没入感が集中力を高めてくれたり、気分を乗せてくれたりといった、きわめて感覚的な理由から。そしてもうひとつは、炎天下では見えづらくなってしまうカメラ背面の液晶モニタに対して、電子ビューファインダーは構図やピントのチェックが容易なこと。ピントチェックに関しては、画面を拡大表示し、しかもセンサーを通した映像で確認できるため、光学ファインダーよりも正確に行なえるメリットがある。

電子ビューファインダーを備えたコンパクトデジタルカメラはさほど多くはない。しかもどの機種も『RX100M3』のスペックに遠く及ばないものばかりだ。レンズ同様、ここでも唯一無二の存在感を示している。

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▲電子ビューファインダーは、ポップアップ式の「OLED Tru-Finder」を内蔵する。0.39型、144万ドットの有機ELを採用し、ファインダー倍率は約0.59倍、視度調整ダイヤルも備えている。ファインダーを引き出すと自動的に電源が入り、しまうと自動的に電源が切れる仕組みだ。接眼部が小さいので逆光時に光が入り込んで見づらくなることも。純正のアイカップを用意してほしかった。

この他にも、チルト式の液晶モニタが上方向に180度まで稼働して自分撮りに対応したり、NDフィルターが内蔵されたり、画像処理エンジンがアップデートされたり、『RX100』ユーザーはもちろん『RX100M2』ユーザーですらも羨むような製品に仕上がった。

前置きが長くなってしまったが、今回はこの『RX100M3』とともに、紫陽花が咲き乱れる6月の鎌倉を散策してきた。その実力のほどを作例を通してチェックしていこう。

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▲「あじさい寺」の名を持つ明月院にて。山門へと至る参道の両脇に咲き乱れる紫陽花が見事のひと言に尽きる。ここでは大口径レンズの特性を生かし、画面手前の紫陽花をふんわりと前ボケさせて、参拝客で賑わう参道を捉えた。

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▲観光名所以外にも、鎌倉市内のそこかしこに紫陽花が咲いていた。道路脇に咲く紫陽花を主題にして、自転車で町内パトロール中の女性を添えてみた。焦点距離24mm相当で撮影しても、一般的なコンパクトレンズではまず得られないボケ味を実現している。ボケ具合もクセがなくてキレイだ。

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▲昔なつかしい郵便ポストを彩るかのように紫陽花が咲いていた。日没直前の薄暗い状況の中、ISO3200という高感度で撮影したものの、ノイズはほとんど気にならないレベル。初代『RX100』から画質が大幅に改善された印象だ。

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▲「竹の寺」と称される報国寺にて。境内の竹林は非日常的な空間の様相を呈している。焦点距離24mm相当でこの空間の広がりを捉えてみた。ピクセル等倍で見ると、想像以上にキレのある画質で驚かされた。

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▲若宮大路で見かけたネコ。目に飛び込んできた被写体をすぐさま撮影できるのもコンパクトサイズの『RX100M3』だからこそ。一眼レフで待ち構えていたら警戒されたはずだ。またネコには近づかず、超解像ズームでテレ端を70mm相当から140mmにアップして遠巻きから狙った。

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▲新機能のNDフィルターを使って今泉不動の「男滝」を撮影してみた。滝の撮影では、低速シャッターを使って水の流れを印象的に撮るのがセオリー。しかし日中に低速シャッターを利用すると露出オーバーになってしまう(左)。そこでNDフィルターの出番となる。NDフィルターで光量を落とすことで、露出オーバーを防げる(右)。どちらの作例もシャッタースピード8秒、F11、ISO80で撮影。

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▲七里ヶ浜の有名なカレー店でランチ。食事中は日光が差し込んでしまい、輝度差のある写真になってしまった。しかし、シビアな撮影条件にもかかわらず、美味しそうに撮れたのはレンズとセンサーの素性がいいから。テレ端でも30cmまで寄れるので、料理をグンと引き寄せて撮影できるようになったのは○。

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▲江ノ島シーキャンドル(展望灯台)から撮影した鎌倉・藤沢方面の夜景。ノイズリダクションの効果も良好で、夜間撮影でもその実力を十分に発揮している。ピクセル等倍で確認すると、海岸沿いに林立するビル群がしっかりと解像されているのがわかる。

これらの作例を見てわかるとおり、風景はもちろん夜景、料理、スナップなど『RX100M3』の守備範囲はとても広い。実は今回のレビューを通して、『RX100M3』は一眼レフのサブカメラという位置づけだけでなく、旅カメラとしても非常に優秀であることを痛感した。コンパクトボディで携行性の高さはもちろん、180度回転するチルト式液晶モニタを使えば容易に記念写真が撮れるし、Wi-Fiでスマートフォンと連携すればSNSへの写真投稿も簡単。さらにモバイルバッテリーによるUSB充電にも対応し、死角がほとんど見当たらない。惜しむらくはGPS機能が非搭載なことだが、裏を返せば欠点はその程度なのだ。

価格は少々張るが、一部のハイアマチュア一眼レフユーザーだけでなく、「旅の思い出をきれいに撮りたいけど、ミラーレスカメラや一眼レフは持ち歩きたくない」というライトユーザーにもお勧めしたい。筆者も実際に『サイバーショット DSC-RX100M3』使ってみて、この製品への物欲がますます刺激された格好だ。

(永井太郎)