WWDCでの狙いはプログラマ?専門家が語るアップルの次の一手

今年のWWDCでは新ハードウエアに関する情報公開がなかった。アップルの戦略に何か変化が起きているのか?ITジャーナリスト・西田宗千佳氏に真の狙いを聞いてみた。

*     *     *

アップルは、自社のハードウエアを売ることで儲けている会社だ。利益のほとんどは、「iPhone」や「iPad」、Macといった“ハードウエアの売り上げ”。だからこそ、多くの人が新製品に注目する。「今回のWWDCでは、ハードの新製品がなかったからつまらない」と思う人がいるのも当然だろう。

だがむしろ、今回の施策は別の方向から考えるべきだ。

アップルとAndroid陣営との技術競争は激しい。特にアプリ開発面での自由度については、Androidの方が有利だった。今秋の提供開始が予定される「iOS 8」ではそこを変える。サードパーティ製の日本語入力アプリの利用や、アプリ同士の連携を強める「インテント」に近い機能の導入などが行われ、よりAndroidとの差が小さくなる……というとAndroidを追いかけただけのようにも見えるが、狙いはちょっと違う。

アプリや周辺機器の売り上げで、iOS向けはAndroid向けより優位にある。さらにその方向性を強化し、「あのアプリがあるからiPadにしたい」「あの周辺機器があるならiPhoneにしたい」というのが、アップルの狙いだ。そのためには開発者に「アップル製品向けに何かを作りたい」と思わせることが重要。今回の狙いはそこにある。

iOS 8では、家のカギや気温、照明などを統括管理する「HomeKit」、エクササイズから健康診断の結果までを統括管理する「HealthKit」という枠組みが用意される。その理由も、家庭内機器・健康器具などの開発を促進することだ。

そしてMacは、今秋公開予定の「OS X Yosemite」で、「iPhone」とより綿密に連携するようになる。近くに「iPhone」があれば、Macから電話に出たり、Macでの作業をすぐに「iPhone」に引き継いだりできるようになる。iOS機器とMacを同時に選ぶのが有利な世界を用意すれば、それだけアップルの売り上げは上がる。

あと必要なのは、もちろん魅力あるハード。その辺は、新OSが公開される「秋」にお披露目になる。

表参道駅前に開店した「AppleStore Omotesando」。広い店内でゆったりとアップル製品を検討できるほか、国内初のPro Labsも設置。プロフェッショナル向けの商品説明や講習などを受けられるという
表参道駅前に開店した「AppleStore Omotesando」。広い店内でゆったりとアップル製品を検討できるほか、国内初のPro Labsも設置。プロフェッショナル向けの商品説明や講習などを受けられるという