VAIOが進む未来とは? 2人のキーパーソンにインタビュー

7月1日、かねてより予告されていたソニー「VAIO」事業の譲渡が実施され、正式にVAIO株式会社が設立された。今後、VAIOはソニーとの協力関係を維持しつつ独立したPCブランドとして製造・販売されていくこととなる。
新しいVAIOは果たして何を見据え、どこに向かおうとしているのか。その歩みを率いる2人のキーパーソンに新しいVAIOの“意志”を伺ってみた。

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VAIO株式会社
代表取締役社長
関取高行氏

1984年ソニー入社後、オーディオ関連製品を中心に経営企画へ携わる。2003~2007年、経営企画責任者として「VAIO」事業を担当。拡大時の混乱を立て直す。その後、ソニー・エリクソンやソニーコンスーマー部門の企画戦略部門長を経てVAIO株式会社創業社長へ。

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VAIO株式会社
マーケティング・セールス&コミュニケーション部
商品プロデューサー商品企画担当ダイレクター
伊藤好文氏

1996年ソニー入社。エンジニアとしてテレビの設計などに関わっていたが、後に商品企画へ異動。ソニースタイル限定商品や中国向け製品の企画を行ない、2008年からはVAIO事業部へ。「バイオP」(2009年)など個性的なモバイル系製品を多く立ち上げてきた。

「本質+α」は製品だけでなく企業としての哲学でもある

─ まず関取さんにお伺いしたいのですが、新社名はなぜ「VAIO株式会社」になったのでしょうか。ハードウエアメーカーではあまり例のないことかと思いますが。
関取 確かに普通はブランド名を社名にはしないですね。私も当初はそう思っていろいろな社名を考えていたのですが、ソニーCEOの平井さんから「VAIO株式会社がいいのではないか」と提案されたこともあり、このように決定しました。今振り返ってみると、「VAIO株式会社」で正解だった気がします。
伊藤 本来「VAIO」という言葉は、PC製品のことだけを示すものではありません。これはあくまで我々が提供したい世界観を示す言葉。であれば、それを社名にしてもおかしくはありませんよね。
─ なるほど。では次に新会社が掲げる「本質+α」というコンセプトについて教えてください。
関取 発表会で「PCはなくならない」と断言したことが、一部で物議を醸しているようですが(笑)、もちろん我々も、PCを取り巻く環境がVAIO開始当時(1996年)と変わってきていることは認識しています。しかし、だからこそ「本質」が何かという認識が大切なのです。今回我々は、それを道具としての“生産性”および“創造性”と定義しました。そしてPCに、タブレットなどではできない、PCだからこその価値を「+α」として提案したい。それはマシンパワーやキーボードのことかもしれませんし、あるいは接続性、拡張性のことかもしれません。この「+α」をどう研ぎ澄ませていくか、まさに今、皆で考え、現実の形にしようとしています。
─ ほかにも発表会では、“小さな規模の会社”になったことを「強み」とおっしゃってましたが、これはどういうことなのでしょうか?
関取 先程お話しした「本質+α」は製品のコンセプトだけのものではなく、企業としてのフィロソフィ(哲学)でもあります。人員が減った以上、何でもかんでもはできません。本質に集中せざるを得なくなります。まず“やらないこと”を決め、「+α」として“やらねばならないこと”に取り組むことが大事だと考えています。以前はソニーグループの一員として“やらねばならないこと”が多かったので、それに縛られなくなったこともメリットでしょう。
伊藤 現場の人間としては、コミュニケーションが迅速になったことを強みとして挙げたいですね。商品企画からマーケティング、プロモーションまで全てのメンバーがワンフロアに集結しているため、伝言ゲームによる意識のズレがなくなり、アクションもすばやく起こせます。

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VAIOならではの付加価値を追求したい

─ いよいよ受注開始した新しい「VAIO」がターゲットとするユーザー層を教えてください。
関取 まずは“生産性”と“創造性”を重視する方にお届けしていきたいです。具体的にはプロシューマー、ビジネスモバイラー、SOHOワーカーといった方々でしょうか。
─ そういった方に向けた、全く新しい“VAIO株式会社のVAIO”はいつ頃登場しそうですか?
伊藤 本年度中には何かをお見せしたいと考えています。どんな製品になるのかはまだ申し上げられないのですが、“生産性”と“創造性”がキーワードになるのは間違いありません。スマートフォンが当たり前となった世の中で、それと共存していける一歩先のPCを目指します。何にせよ、これまでの「VAIO」を愛してくださった皆さんに背を向けるようなものにはならないはずです。
─ 期待しています。ところで新「VAIO」では全製品に「安曇野FINISH」が施されるそうですが、これはどういうものなのですか?
伊藤 ODMで海外製造したものも含め、全て一旦安曇野の本社工場に集め、最終仕上げや品質チェックなどを行ないます。コストは多少掛かりますが、初期不良率を低減できるなど、お客様の安心感につながる取り組みだと思っています。
関取 将来的には、追加アプリのインストールなど、さらなる付加価値を付けていければ。
─ ところで付加価値と言えば、VAIO株式会社としてPC以外の製品を作る予定はないのですか? ソニー時代はそれが大きな付加価値になっていたかと。
関取 もちろん将来的には考えていきたいと思っています。先程伊藤が語ったよう、「VAIO」はPCという“モノ”のことだけを示す言葉ではありません。今後、我々は「VAIO」という“コト”を起こしていかねばならなりません。そのためにPC以外の製品やサービスが必要になるのであれば、PC以外の「VAIO」をやることになるでしょう。
─ 「VAIO」という“コト”についてもう少し聞かせてください。
関取 それについては我々も目下議論中です。そして、その答えは我々だけで考えていても出てこないのではないかとも思っています。ですので例えば「VAIO賢人会」のようなものを作ってみたい。異業種を中心とした各界のプロフェッショナルの方々に、VAIOの付加価値を高める自由な議論をしていただけたら、と思っています。それで「VAIOに安曇野の蕎麦を付けよう!」とか、それくらい荒唐無稽なアイデアを出してもらいたいんですよ(笑)。我こそはという方のご連絡をお待ちしておりますのでぜひ。
伊藤 もちろん一般ユーザーの皆さんからのメッセージもお待ちしています。「VAIO」は、小さな会社になったことで、これまでよりもダイレクトに声が届くようになりました。より良い製品作りのためのヒントをいただきたいですね。

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