一体型カメラの異端児、シグマ『dp2 Quattro』の実力検証!

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シグマ「DP」シリーズは、APS-Cサイズの「Foveon X3」イメージセンサーを搭載したコンパクトカメラだ。2008年に広角レンズ(f=28mm相当)搭載の初代モデル『DP1』を、翌年には標準レンズ(f=45mm相当)搭載の『DP2』などを発売している。
その後、数回のモデルチェンジを経て、新世代「Foveon X3 Quattro」センサーを採用して新登場したのがこの『dp2 Quattro』。「作品づくりのためのカメラ」という同社の哲学が先鋭化した製品に仕上がっている。なお、この「Quattro」シリーズは、『dp2 Quattro』のほかに、レンズの異なる2製品が予定されている。

■基本機能をチェック
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さらなる進化を果たした独自の3層センサー構造

撮像素子にはAPS-CサイズのFoveon X3ダイレクトイメージセンサー「Quattro」を搭載する。従来モデルが採用していた「Merrill」センサーの3層構造からさらに進化し、3層のうちRGB色情報のうちRとGを取り込む2つの層は490万画素に、Bの色情報と輝度情報を取り込む最上層を2000万画素に変更。スペック上の画素数は減ったが、実際の解像感と高感度性能はいっそう向上している。

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これまでに例のないユニーク形状

外装は金属を多用した高品位な素材で、表面には梨地処理を施して手触りを高めている。ボディは横に長く、収納性はあまり良くない。新機能としては「白とび軽減」を搭載。これはセンサー上に配置した白とび軽減画素から得られる情報を利用してハイライト部の明るさを抑えるもの。さらにRAW現像時に、ダイナミックレンジを広げることも可能だ。そのほか、階調を調整する「トーンコントロール」や、電子水準器機能を新搭載した。

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シンプルな構造で撮影に特化

ボディはストロボやファインダーを省いたシンプルなスタイルを採用。必要に応じて、オプションの外部ストロボや外部ファインダーが装着可能になっている。光軸上に配置された天面のアクセサリシューには、光学ビューファインダーを装着できる。大まかなフレーミング用に重宝するアイテムだ。そのほか、外部ストロボやレンズフード、カメラケースなどの純正アクセサリを用意。用途に合わせてカスタマイズできる。

■実力測定:作例
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展望台から眺めをF8まで絞り込んで撮影。少々かすんだ空気にもかかわらず、画面全域に渡ってシャープネスの高い描写となり、木の枝のひとつひとつや小さな看板の文字まできちんと解像できている。色収差や周辺減光も見られず、レンズの光学性能は良好と言っていい。

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絞りを開放値にセットして、最短距離付近で撮影。ピントを合わせた黄色い花がくっきりと描写される一方、背景部分にはソフトなボケが生じた。オートホワイトバランスはやや不安定なときがあるが、マニュアルでホワイトバランスを調整すれば狙い通りの色が得られる。

■結論
実機を手に取りまず驚かされるのは、既存カメラデザインの枠を超えた斬新な外観だ。板を薄く伸ばしたような横長ボディをベースにして、その端に円柱形のレンズを装着。レンズ部付近を見ればミラーレスカメラのようなスタイルだが、全体のシルエットラインはこれまでのどんなカメラとも異なる個性的な形状を描いている。特に通常のカメラとは逆方向に突き出たグリップ部のデザインが珍しい。では、この形状が持ちやすいかと問われると、ホールド性はあまり良くないというのが率直な感想だ。角張った形状が右手の中指や親指に当たって痛く感じる。しかし構えた時のバランスは悪くない。重心がレンズ側にあるので左手でレンズ部を包むように支えて撮ると安定する。操作ボタン類が比較的シンプルにまとまっていて、右手側に集中配置されているのも使いやすい。
一番の魅力と言えるのは、独自のセンサーとエンジン、専用レンズの三位一体が生み出す高精細なディテール描写力だ。引いた構図で風景を写すと、遠景にある小さな建物や人影、木々など肉眼では確認できないものまで写真上ではくっきりと記録される。また近距離で人物や静物などを写した場合には、PCのディスプレイ上で被写体が浮かび上がるような錯覚に陥るくらい、微妙な質感までをリアルに再現できる。
AFや画像書き込みなど操作レスポンスはやや遅めで快適とは言えないが、既存モデル「DP Merrill」シリーズよりは向上した。マニュアルフォーカスの際に、距離表示や拡大表示を見ながら厳密なピント合わせができるのは便利だ。
試用中に気になったのは、明るい屋外では液晶モニタの視認性が大きく低下すること。オプションの外付ビューファインダー(実勢価格:2万7550円)や市販の液晶フードなどを利用して対処したい。ビューファインダーを付けるとデザイン的な見栄えも高まる。
本機はスナップ向けのカメラではあるが、押すだけの手軽な使い方にはあまり向いていない。それよりも、画質や操作に関する独特のクセを見極めた上で、じっくりと使いこなしたいカメラと言えるだろう。

■『dp2 Quattro』をおすすめな人は??
作品としての写真を楽しみたい人に

ISO400以上ではノイズが目立つ高感度画質や、暗所でのAF性能には課題が残るが、明るい場所での圧倒的な細部表現力と質感描写はこれらの弱点を補って余りある魅力だ。画質にこだわった作品としての写真撮影用に打って付けと言えるだろう。中でも、風景や建築、静物、動きを抑えたポートレートなどの用途に適している。

シグマ
dp2 Quattro

実勢価格:10万9550円

サイズ:W161.4×H67×D81.6mm 重量:410g(電池、SDカードのぞく) 撮像素子:APS-Cサイズ Foveon X3ダイレクトイメージセンサー 有効画素数:総計2900万画素 液晶モニタ:3.0型液晶(約92万ドット) 光学ズーム:なし(f=45mm相当) 解放F値:F2.8 手ぶれ補正機構:なし シャッター速度:1/2000~30秒 ISO感度:100~6400相当(拡張含む) 連続撮影枚数:約200枚

文・作例/永山昌克 撮影/松浦文生