カッコいい扇風機バルミューダがなぜ注目されているのか、寺尾社長に聞いてみた

2003年の創業からわずか10年。常識を覆す扇風機を生み出し、家電業界に新風を巻き起こしているのがバルミューダだ。その躍進の理由のひとつが、デザインである。寺尾玄社長自ら直接指揮を執る、そのデザイン哲学とは?

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―まずは、今年発売の新モデル「グリーンファンジャパン」のデザインについて聞かせてください。

寺尾 初代「グリーンファン」は、どこからどう見ても扇風機でありながら、新しいと感じることを実現しましたが、今回の新モデルでは“雰囲気”にこだわっているんです。

―その“雰囲気”というのは?

寺尾 いい風が吹いてくる場所ということで、窓を開けた感じの雰囲気、とでも言うのかな。カッコいい、と評価していただいていますが、実はカッコ良さも要らなくて、適度な美しさがあればいいと思っているんです。なぜなら、家電にとって、大切なのは、効果が自然に感じられることだと思っているからです。家電は家で使うものですが、家の中で一番重要なのは人であって、家電が人間以上に目立つ必要はないんです。

―まずは、ユーザーありき、ということですか?

寺尾 そうです。ユーザーに何を提供できるかが一番重要。ただ最近は、“真面目さ”も少し意識していますね。遊び心やスパイスって、インテリアやファッションで表現するもので、家電に大切なのは真面目さや“ちょうどよさ”なのではないかと。過度な魅力やちょうどいい以上の美しさを求めると“時代性”がついて長続きしないですからね。時代や流行から一歩引いたデザインという意味での真面目さ、というか。

―新製品も前から見ると、あまり変わってないように見えます。

寺尾 でも実は、金型から全て作り直しているんです(笑)。横や後ろから見ると、かなり変わっているのがわかっていただけるはず。初代で取り入れたアールのデザインなど、時代性を感じるものを排除したため、若干硬い印象になりましたが、逆に、プラスチックという素材が持つ、ある種軽薄なイメージと、うまくバランスが取れたと思います。

―プラスチックの持つ軽薄感?

寺尾 そう、このプラスチックという素材がまた、曲者で……。というのも、人間がモノの良さをはかる時重要なのが重さなんです。昔、お金が石だったように、私たちのDNAには、いいもの=重い、という記憶が植え付けられている。実際、プラスチックは分子同士の結び付きが弱いから百年も持たないけれど、鉄や金属は残りますよね。私自身、基本的には続かないものは儚くて好きなんですけど、プラスチックには、儚さより、軽薄さを感じてしまう。

―でも、使わざるを得ない。

寺尾 特に家電は表面積が大きいですから、金属を使うと商売なんてできないです。そこでどうするかと考えて、厚みを変えました。これだけでもちょっといいもの、になるんです。我々の製品は、普通の倍の量のプラスチックを使っていて、外装も厚いんです。それがプラスチックを使いつつ、少しでもよくしようとする努力。だから、製品価格が高くなる(笑)。

―そこまでこだわるのも、寺尾社長のロック魂、ですね。

寺尾 人をびっくりさせたい、よろこばせたいという気持ちが強くて、常識的であることが格好悪いと思っている。人と違ったことをやって、多くの人によろこんでもらいたいんです。これは曲を書いて演奏し、多くの人に感動を与えて利益を生み出すロックと同じ構造。バルミューダの目指すところでもあるんです

―デザインもその一つであると?

寺尾 僕らはユーザーにとってのベネフィットポイントというのを常に考えています。家電は効果効能や気持ち良さなどを提供するためのものですが、その時に欠かせないのが、美しさです。視覚は人間にとって最大のインプットデバイスで、とても支配的。目で見たものは、はっきりとした記憶に残りやすいですから、デザインは非常に重要で、性能の一部と捉えています。

―ただ、いいデザインかどうかの判断は、難しいですよね。

寺尾 数字で計れないですからね。そのかわり“ポピュラリティ”はあって、誰もが美しいと思うストライクゾーンは明らかに存在します。この7割、さらにプラスαの人がいいと思う“ボール”を投げたい。そして最終的なジャッジは経営者自らが行なうべき。デザインが非常に重要な要素だからです。それをやれているのもバルミューダの強みですね。とは言え、デザインのジャッジにはセンスが必要。これは僕のセンスが正しいといっているわけではなく、やるべき仕事と理解しているだけ。もちろん、外部のデザインディレクターとして元アウディの和田智さんを迎えて意見を聞くなど、センスを磨く努力も惜しみません。

―今はモノが売れない時代と言われていますが、今後の展開は?

寺尾 モノを少なくしつつ、豊かに暮らしていきたいと思っている時代だからこそ、豊かな体験や体感にアプローチする製品が必要。その価値を証明したのがグリーンファンですが、今後はそれを超えるアイデアで、「こうきたか!」と言われる家電を生み出していきたいですね。

独自の二重羽根構造とDCモーターを搭載した「グリーンファン」の最新モデル、バルミューダ『グリーンファンジャパン』(実勢価格=3万5310円)
独自の二重羽根構造とDCモーターを搭載した「グリーンファン」の最新モデル、バルミューダ『グリーンファンジャパン』(実勢価格=3万5310円)