コスト度外視で10年以上も開発期間を要した、15万円オーバーヘッドホンの実力とは
ヘッドホンで10万円以上のモデルと言うと、まず数年の間はラインナップ変更は起こらないライン。それは、つまりそのモデルはブランドの技術、思想の塊でありブランドの顔そのものと言える。そうして築き上げられたモデルが鳴らすそのサウンドは、この先数年、あるいは十年以上にわたって指標とされるリファレンスとなる。まさに一生聴いていられるサウンドだ。
星の数ほどあるヘッドホンの中で価格限度なく推薦するなら、いくらかジャンルに明るい人の多くがゼンハイザー『HD800』を推挙するのは想像に難くない。
専用デザインのユニットや、音質とスタイルの両面から追求された個性的なハウジング&ヘッドバンドデザインなど、マテリアル的な観点からも数多くのアピールポイントを持つが、最大の魅力は何と言っても“音楽の表現”だろう。
スタジオモニターヘッドホンだけでなく、マイクも手掛けるゼンハイザーだからこそ、音楽をどう再現すべきか良く理解していて、そんなメーカーがコストと開発期間を度外視すると、ここまで説得力のあるサウンドを生み出せるという希代の例。まさに、“リファレンス”という言葉がそのまま形になったような一台だ。
本機の上質なサウンドを支えるのがφ56mm径「リングドライバー」だ。リング状の振動板が、低域の再現性と高域の歪みの抑制を両立。また、コイルにわずか42ミクロンのワイヤーを採用するなど、高級モデルならではの精密な造りが特徴となっている。
リング状に形成されたφ56mmドライバーはステンレス製の精密素材で覆われている一方で、イヤーカップはむき出しになっている大胆なデザインが目を惹く。テフロンで絶縁された特別設計のケーブルを採用。