なぜいま?オーディオ機器専門ブランド“Technics”、復活のストーリー

いま業界で最も話題のブランド「Technics」。2010年、多くのファンに惜しまれながら終了したが、今年このHi-Fiオーディオブランドがなぜ復活したのか?オーディオ評論家の鳥居一豊氏に聞いてみた。

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自社ブランドを全て統一する一大改革を成し得たパナソニックが、再びブランドを復活させる。これは、我々が想像する以上に大事件だ。

そして、「Technics復活」のニュースを聞いた私は、驚くと同時に「ああ、やっぱり」とも感じた。その理由は、アナウンスされている通りハイレゾオーディオのムーブメントへの対応だと想像できたから。

そうは言っても、パナソニックの名前がどこにもない独自ブランドとして新生Technicsを立ち上げるのはいささか大げさであるのは確か。ここまで大きな展開をした背景には、製品が途絶えていた4年、実際にはそれ以上の期間、「またTechnicsを」と思う人々が、パナソニック内でその情熱を保ちながら、今のような高音質需要の機を狙っていたことにあると私は考える。

この復活劇の根源は上の通りだが、実はここ最近のパナソニック製品からもその裏付けが感じられる。

例えば、パナソニックのBDレコーダー最上位機『DMR-BZT9600』。身近なテレビ録画機にも関わらず、DACやオペアンプなどピュアオーディオに近しい高品位素材が選定されている。現行機は、ハイレゾ再生まで可能にしているBDレコーダーとしては異質な存在だ。

そして、手軽さ重視のミニコンポでいち早くハイレゾ再生に対応し、さらに高品質なオーディオアクセサリを投入して音質向上を図った『SC-PMX9LTD』。ここ最近のパナソニックには、こうした極端なまでに音質にこだわった製品が突然変異的に登場していたのだ。Technicsの名前がなくても、前述のような想いを持つ人々が遺伝子を絶やさず、これらのモデルにその技術を注いだことは想像に難くない。

新生Technicsがいつから動いていたのかは明らかにされていない。だが、その技術と魂はしっかりと残っていたのだから、復活はいつでも成し遂げられただろう。あとはタイミングだけ。それが今のハイレゾオーディオブームだったのだ。

新生Technicsの製品は、リファレンスクラス「R1」シリーズと、プレミアムクラス「C700」シリーズの2つで構成される。

スピーカーは平面振動板を採用した同軸2ウェイユニット、パワーアンプでは独創的なデジタル信号処理を持つフルデジタルアンプの搭載など、技術にこだわる姿勢は全く変わっていない。さらに、プレイヤーはネットワーク再生やPCオーディオを主軸とし、懐古趣味に陥ることなく、最先端のスタイルに仕上がっている。この2シリーズを見た時に「ああ、Technicsだな」と懐かしさすら感じたほどに、私の知るTechnicsだった。

ハイレゾをキーワードに、再びオーディオに注目が集まっているが、この動きはすでに世界規模のものであるし、Technicsの復活という大事件にも繋がった。このTechnics復活を機に、ここからは「手軽に高音質」とは別に、かつて多くのユーザーが高級オーディオシステムを組むことで、音楽との出会いを楽しんだ“オーディオブーム”の再来が起こると予感している。

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パナソニック『Technics R1シリーズ』(合計価格=511万4000円)
2015年2月発売 受注生産/ノイズを極力抑え、高静粛性のネットワークプレイヤー『SU-R1』、ニュアンス豊かな音の再現性を持つパワーアンプ『SE-R1』、精緻な音像定位と広がりのある音場を再現するスピーカーシステム『SB-R1』からなるTechnicsの“技術”の結晶と言えるシステム。

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Technics C700シリーズ(合計価格:61万2000円(『SL-C700』抜き))
2015年2月発売 受注生産/フルデジタルアンプ搭載により、優れた空間表現力を持つプリメインアンプ『SU-C700』、透明度の高い音を再生するネットワークプレイヤー『ST-C700』、点音源とリニアフェーズ思想を凝縮したスピーカー『SB-C700』からなる最高クラスのパッケージ。