トヨタとホンダが発表した燃料電池車ってどんな乗りモノ?

昨年、トヨタが『MIRAI』の市販開始を発表し、一気に注目度が増している燃料電池車。
ホンダも『FCVコンセプト』という新たな燃料電池車のコンセプトモデルを発表しており、2015年度中にこのモデルをベースとした新型車の発売を目指すとしている。

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▲トヨタが世界に先駆けて市販を開始した燃料電池車『MIRAI』(価格:723万6000円)

燃料電池とは、水素と酸素を反応させ、電気を作り出すシステム。
そこで発電した電力を使い、モーターで走るのが燃料電池車だ。
いわば、燃料電池という発電機で作った電力で走る電気自動車で、水素を燃料として燃やすわけではない。
電気自動車が電気を蓄えるバッテリーを積み、その電力で走るのに対して、発電の原料となる水素を搭載して電気を作りながら走るのが燃料電池車と考えるとわかりやすいだろう。

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▲ホンダが公開した『FCVコンセプト』。これをベースとした市販車を2015年度中にも市販したい考えだ。

走行中は水しか排出しない燃料電池車は「究極のエコカー」とも呼ばれ、注目されている。
同じく電力を動力とする電気自動車は走行中何も排出しないが、1回の充電で走行できる距離を伸ばすには大量のバッテリーを搭載する必要があるため、航続距離が限られる点が課題とされている。
すでに市販されている電気自動車の日産『リーフ』が1回の充電で走行できる航続距離は228kmだ。
それに対して、トヨタの『MIRAI』は1回水素を充填すれば650kmの走行が可能なため、ガソリン車と同等かそれ以上の距離を走ることが航続距離を確保している。

また、1回の充填にかかる時間は3分程度で、電気自動車のように充電のたびに20~30分(急速充電の場合)の時間が取られることもない。
その点が、燃料電池車が期待される理由だ。

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▲フォルクスワーゲンも人気の『Golf』をベースとした燃料電池車の研究車両『Golf SportsWagen HyMotion』を公開した。

とはいえ、普及に向けた課題も多い。
課題の1つ目はインフラの整備にコストがかかること。
水素ステーションの建設コストは数億円といわれ、ガソリンスタンドの数倍にのぼる。
現状の水素ステーションの数は2015年中にオープンするものを含めても全国で41ヶ所だ。1回の充填で走行できる距離が長いため、電気自動車の充電ステーションほどの数は必要ないとはいえ、全国4万ヶ所を超える充電ステーションとは大きな開きがある。

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▲セブン-イレブンは、水素を製造販売する岩谷産業と協力し、水素ステーションを併設した店舗を2015年度中にオープンさせると発表。水素インフラの充実に向けた動きとして注目される。

2つ目の課題は、水素の製造にかかるエネルギー。
水素は地球上の多くの物質と結びついて存在しているが、水素だけを取り出すためには電気や化石燃料などのエネルギーが必要となる。
走行中は排気ガスやCO2を排出しないとはいえ、水素製造時に化石燃料を使っていては地球規模でのCO2削減や、化石燃料の枯渇といった問題に対する解とはならない。
水素製造過程で再生可能エネルギーを使うなどの効率アップが求められる。
また、水素は圧縮して充填する際にもエネルギーを消費するため、この部分の効率アップも課題だ。

3つめは水素燃料のコストだ。
水素燃料の販売価格は1kgあたり1100円とされており、これは1km走るためのコストとして計算すると約7.2円で現行のハイブリッド車と同等程度。
車体の購入にかかるイニシャルコストを考えると、ハイブリッド車に対して割安とは言えない。

こうした課題があるにも関わらず、燃料電池車への期待が集まっているのは、将来的に到来すると期待される「水素社会」への一助となると考えられているからだ。
水素は地球上の多くの物質と結びついているため、石油や液化天然ガスから製造できるだけでなく、水を電気分解することでも作り出すことができる。
そして、電気と異なり貯めておくことや、運搬することが可能となるため、例えば太陽光や風力など自然エネルギーで発電した電力を水素の形で貯めて活用することができる。
そうして作り出された水素をエネルギーとして使うのが、将来的に期待される「水素社会」だ。
水素をエネルギー源として走る燃料電池車は「水素社会」の到来に向けた一歩として注目を集めている。

文/増谷茂樹