「みんな“仕事バカ”」ダイソン、ハイアール、バルミューダのトップが語るヒット方程式

この4月から5月に、個人的な仕事で、多くの家電メーカーの社長と直接会って話をする機会を得た。会った社長は以下の3人。

ダイソン 創業者兼チーフエンジニア
ジェームズ・ダイソン氏
http://www.dyson.co.jp/community/about-dyson.aspx

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ハイアール・アジア CEO
伊藤嘉明氏
http://haier.co.jp/corporate/info/message.html

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バルミューダ 代表取締役社長
寺尾玄氏
http://www.greenfan.jp/satoshi_wada_vs_gen_terao/

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どなたも今、かなりイケてるヒット商品を出しているメーカーの社長である。で、彼らに話を聞いていると、あらためてモノ作りに対し、非常に真面目であり、大げさではなく、24時間365日仕事のことを考えているといった印象だ。アイデアでも試作品でも1個出してヒットするものではなく、それこそ無数のものから、最終的な一つの製品が産み出され、そのために、彼らは日夜問わず、考えを巡らせているのである。そして、最終的に誰も思いつかなかった考え方ややり方でヒットを産み出す。
それで今回はそれぞれのメーカーのヒットの方程式、つまりは、そのモノ作りに対する考え方について整理してみた。

・人が直面する問題や課題を見つけ出し、革新的な技術で解決する

ジェームズ・ダイソン氏はかつて、自宅で高性能な紙パック式掃除機を使っていた。だが、その紙パック式がどうにも目詰まりを起こして、吸引力がすぐに落ちてしまうことを不満に思う。そこで、彼は新しいサイクロン式掃除機という、当時世の中になかった方式の掃除機を開発する。とはいえ、その製品が開発されるまでに、実に5000台以上もの試作機を製作した。人が直面する問題や課題を見つけ出し、革新的な技術で解決するのが彼の方程式であり、現在68歳となったものの、今でも自身の肩書きをチーフ・エンジニアと名乗っていることからも、生粋のエンジニアとしての精神はまったく衰えていないようだ。

・これまでの常識にあえて目を背け、よそ者として今までになかったものを提案する

タイのバンコクで生まれた伊藤嘉明氏は、ずっと“よそ者”としてのビジネス人生を歩んでいる。これまで伊藤氏のキャリアは華々しい。’93年にサーブ自動車総輸入元であるオートテクニックタイランドを最初に、日本アーンスト・アンド・ヤング・コンサルティング、日本コカ・コーラ、デル、レノボ、アディダス・ジャパン、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントと渡り歩き、最終的にはハイアールアジアのCEOに昨年就任する。ただ、その華々しい経歴の裏で、彼は常に四面楚歌な状況からビジネスを開始することがほとんどだった。なぜなら、異業種から転職してくる伊藤氏は、社内では常によそ者であり、最初は業界の知見もない素人扱いを受けるところから始まっていたからだ。
とはいえ、そんな状況に対して伊藤氏は言う。よそ者だからこそ、その業界の常識にとらわれない発想ができるのであり、自分をわざわざヘッドハンティングしてまで呼ぶということは、同業者で打開策が見い出せない証であり、自分がこれまでと違うやることが使命であると。
業界の常識にとらわれず、違うやり方をするという方程式で、ハイアールアジアは元三洋電機の社員が99%の会社であったが、伊藤氏が就任後、一気に意識改革が進む。同時に、それまでずっと赤字を垂れ流していた状況から一転、昨期15年ぶりに黒字に転換した。そのなかで話題の世界最小洗濯機「コトン」などを発売。これも三洋電機の技術に、伊藤氏の“よそ者”の発想が結びついた良品として、好調に売れ続けている。

・みんながなんとなく諦めて、進化の手を止めてしまったものについて。あえてもう一度見直し、付加価値をつける

寺尾玄氏は元々17歳で高校を中退して、海外への放浪の旅に出た。その後、ロックミュージシャンとしてメジャーデビューまで果たすも、バンドは解散。音楽の道をあきらめ、独学でプロダクトデザインを学び、バルミューダ(デザイン)を2003年に創業する。リーマンショックで潰れそうになった際、どうせ倒れるなら前へ倒れようと思い、開発したのが、のちに高級DCモーター扇風機市場を牽引する『GreenFan』だ。扇風機の風はずっと浴びていると疲労感が蓄積する。だが、自然の風はずっと浴びていても疲労感が蓄積しないどころか気持ちがいい。そんな純粋な想いを形に変えた。我々は人にスゴい製品を届けたいのではなく、素晴らしい体験や喜びを届けたいと、みんながなんとなく不満に思っているも、そんなものだと諦めてしまった製品ジャンルに目を向け、そこに新たな付加価値を与え、よみがえらせるのが寺尾氏の方程式だ。発表されたばかりのトースター『BALMUDA The Toaster』も、まさにそんな製品であり、きっと毎日の生活に幸せを与えてくれるだろう。

同じモノ作りの社長でありヒットメーカーでも、このように考え方ややり方は三者三様である。でも、ひとつだけ共通するのはその人柄。どの社長も情熱的で前向き、モノ作りに真摯で、失礼を承知で書けば、みんな“仕事バカ”だ。そして口を揃えて言う。とことんやりきれ! 力一杯ふりきれ! と。

文/滝田勝紀(編集部)