美しい空気は美しい本体に宿る

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ダイソンにしか生み出せない技術革新の結晶
ダイソン
Pure Cool
実勢価格:6万9984円

扇風機と空気清浄機。生活家電を大別すれば、それぞれ空調家電に括られる。とはいえ、これまでこの2つのアイテムを、ひとつにまとめたアイテムは存在しなかった。だが、ダイソンは世界で初めてこの2つの融合に成功した。なぜダイソンは革新的な製品を開発できたのか? シニアデザインエンジニアであるオラ・パピエルコゥスカ氏は語る。

「一般的な扇風機は風にムラができやすく、フィルターを仮に羽根の後部などに設置したとしても、部屋中の空気をきれいにすることは不可能でしょう。でも、我々には元々エアマルチプライアーテクノロジーがありました。送り出す空気をきれいにさえできれば、構造的に空気清浄機能搭載の扇風機を作ること自体は困難な発想ではありませんでした」

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▲扇風機の静音化技術を継承し、空気経路とディフューザーを再設計。空気は翼型傾斜を通過し、周囲の空気を取り込みながら風を形成する。直進性の高い空気の流れが遠くまで届き、ムラのない風が生み出される。

ダイソンには独自の微生物研究所があったことも、この製品開発に成功した大きな要因のひとつだろう。そこから生み出されたのが、今回『360度グラスHEPAフィルター』だ。研究所の微生物学者トビー・サヴィル氏は言う。

「一般的なHEPAフィルターよりも単純に密度を高めるために、マイクログラスファイバー素材を採用しています。より多くの有害物質を除去するために、プリーツ状のフィルターの表面積を最適化しました。『360度グラスHEPAフィルター』は6.45mのフィルター素材を、合計254回も織り込み、入り込む空気をより広い面積で受け止められると同時に、ちょうどいい空気の流入速度を実現しています」

そんなダイソン ピュアクールを開発するにあたり、創業者であり、チーフエンジニアのジェームズ ダイソンは、まずは既存の空気清浄機の性能に疑問を呈した上で、PM0.1を99.95%を目標に掲げた。その厳しいオーダーを直接託されたオラ氏はどう思ったのか?

「空気清浄機にとっては、清浄スピードよりも、どういった物質を最終的にきれいに除去できるかが重要だと考えていたので、大変だとは思いましたが何度もトライアンドエラーを重ねました。PM0.1が全く取れないようでは、空気清浄機として使っている意味がないですからね」

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▲独自の360°グラスHEPAフィルターを搭載することで、PM0.1レベルの超微小粒子を99.95%除去できる。目詰まりがしづらく、なおかつ目の細かなフィルター構造が、より多くの超微小粒子状物質を360°グラスHEPAフィルターに付着させる工夫を施している。

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▲PM0.1とは粒径が100nm(ナノメートル:0.1μm)以下の超微小粒子状物質の総称。話題のPM2.5の1/25のサイズ。一度呼吸で体内に取り込んでしまうと、なかなか体外へ排出されず、深刻な疾患の一因になる可能性も。

また、このフィルター自体はユーザーがメンテナンスを行なえないように、カバーと一体化した作りとなっている。一般的な日本の加湿空気清浄機などは1カ月に1回は掃除機などでキレイにする必要があるが、それとは真逆の考え方だ。その理由についてオラ氏が教えてくれた。

「HEPAフィルターに触れない構造にしたのは2つの理由があります。1つはユーザーがフィルターに触れることで、表面を傷つけることがないようにしたためです。フィルター表面は繊細であり、例えば掃除機などで擦ったりすると、傷ついてしまい、それによりPM0.1の除去率99.95%を保証できなくなるからです。これは針の穴程度の傷でもそういった状態に陥ってしまうほど繊細な数字です。もう1つの理由は、そういった有害物質が付着しているフィルターに、ユーザーが触ることがないようにすることです。健康に害を及ぼすような物質を手で直接触れるのは危険ですからね」

今後も大気汚染は継続的に話題となり、人類は日々、目に見えない有害物質の脅威にさらされることだろう。だからこそ、このオンリーワンな空気清浄機能搭載の扇風機がどう受け入れられるか楽しみだ。

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▲縦長な形状は一般的な空気清浄機と比較してもかなりの省スペース。A4の用紙よりも設置面積が小さいぶん、フロア上どこにでも置きやすい。デザインが美しいぶん、リビングでも寝室でも、インテリアとしても活用しやすいのもうれしい。

SPEC
サイズ:W196×D196×H1018mm 重量:約3.58kg 自動首振り角度:(左右)70° タイマー:(切タイマー)1~9時間 消費電力:最大56W~最小6W

文/滝田勝紀 撮影/下城英悟(GREEN HOUSE)

※『デジモノステーション』2015年7月号より