多くの世界初を盛り込んだ『アルファード』【よろしくデジテック】

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『よろしくメカドック』の主人公・風見潤が、『アルファード』の開発責任者・吉岡憲一氏に直撃!

トヨタ
アルファード
価格:319万7782円~
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▲全車速対応のクルーズコントロールやプリクラッシュセーフティなど先進技術を満載。静粛性に優れた車内と豪華な内装で、高級サルーンの新しい形を提案するモデルだ。

風見 新しい『アルファード/ヴェルファイア』には非常に多くの“世界初”や“トヨタ初”の技術、機能が採用されていますね。これぞ高級車の新しい形だと感じました。

吉岡 ありがとうございます。車体が透けて見えるようなビジュアルでクルマの周囲を確認できる「シースルービュー」や、駐車時に切り返しを含めた前進制御も行なう「インテリジェントパーキングアシスト(IPA)2」、1m以上も前後に動く「助手席スーパーロングスライドシート」などが世界初の機能です。そして、全車速に対応した「レーダークルーズコントロール」や超音波ソナーを使った「巻き込み警報機能」などがトヨタ初採用のものですね。

風見 中でも駐車スペースを検知してハンドル操作を自動で行なってくれる「IPA2」はスゴイ! 目の前でハンドルが勝手にクルクル回っている光景には衝撃を受けました。

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▲メカドックの風見潤氏。漫画『よろしくメカドック』(作:次原隆二)主人公。作中ではチューニングショップ「メカドック」のメカニック兼ドライバーとして活躍。

吉岡 そう言っていただけるとうれしいですが、実は「IPA」は2002年に『プリウス』に搭載されたものの、あまり採用が進まずに朽ちかけていた技術だったんです。

風見 そうなんですか!? あんなに便利な機能なのに……。

吉岡 当時の「IPA」はカメラで駐車枠は認識するものの、ズレがあった場合は手動で補正する必要がありました。その間に後ろからクルマが来てしまう場合もありますから、使い勝手があまり良くなかったんです。ですから「IPA2」では、その辺りを徹底的に改善しました。

風見 いくらスゴイ技術が採用されていてもユーザーに使ってもらえなければならないということですね。

吉岡 はい。そのためにクルマの頭を振ってバックギアに入れたら、多少駐車枠の認識がズレていたとしてもバックしながらリアルタイムに補正する方式を採用しました。もちろん、駐車枠の認識精度を高めるために日本全国の駐車場を回ってデータを集めることもしています。

風見 なるほど。動きながら補正するんですね。駐車枠をハンドルで指定できる機能にも驚きました。

吉岡 3つまで枠を認識して、ドライバーがハンドルを軽く動かすと選択できるようにしています。マンションなどで駐める枠が決まっているのに、クルマが隣の枠に駐めてしまったらいけませんから。

風見 1回で駐められない時に切り返しをしてくれるのも驚きです。

吉岡 ソナーとカメラを活用して切り返しや駐車のスペースを認識しながらハンドル操作を行なうのは世界初。最大5回まで切り返しをします。

風見 この精度で5回切り返して入れられなかったら、あきらめたほうがいいかもしれませんね(笑)。世界初になるこの技術をこのクルマに搭載した理由は何だったんですか?

吉岡 実は私、このクルマに関わる前は制御システム開発部という部門にいて、「IPA」のブラッシュアップなども手掛けていたんです。将来的にさらに高度な自動運転を視野に入れた場合、高速道路などでのオートクルーズ制御などは各社力を入れているのですが、駐車支援は意外と積極的ではなかった。ただ、駐車は苦手な人も多いですし、使い勝手さえ向上させれば必ず多くの人に使ってもらえると信じていました。

風見 その想いで、このクルマにも採用したんですね。

吉岡 駐車支援の技術は絶対に必要なものだと思っていましたし、ここで世に出さなければ今後10年は技術が遅れてしまうという危機感がありました。市販車で使われなければブラッシュアップも進みませんから。ただ、市販車に搭載するからには当然メーカーとしての責任も問われる。精度や安全性の向上には全精力を注ぎました。

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▲トヨタ自動車製品企画本部ZH主査の吉岡憲一氏。立ち上げから携わった制御システム開発部を経て、2010年より『アルファード/ヴェルファイア』の開発責任者を務める。

風見 精度の向上には、カメラの進化なども関係しているのですか?

吉岡 もちろん、それもありますが、どちらかと言うとカメラからの情報を処理するコンピュータの進化の方が大きいです。デジカメなどと違って、「IPA」のカメラは画質の向上はそれほど必要ないんです。白線を認識してくれればいいので。それよりもコントラストとか、逆光に強いことなどが重要です。

風見 なるほど。デジカメとは必要とされる性能が全く違うんですね。

吉岡 その通りです。画素数だけ多くても、それを処理する速度が追い付かなければ意味がありません。「IPA2」は超音波ソナーを使った「巻き込み警報機能」も備えていますので、その情報も合わせて処理する必要がありますから。

風見 クルマに搭載するということは熱や振動にも強くないといけないですし、カメラやコンピュータには耐久性も求められますね。

吉岡 はい。『アルファード』では、だいたい100個くらいのコンピュータを搭載していて、お互いがつながっているので、その干渉を避ける必要もあります。

風見 今のクルマはそんなに多くのコンピュータを積んでるんですね!「IPA2」を使う上で、何か注意すべき点はありますか?

吉岡 時速7kmを超えるとアシストがキャンセルされますので、基本的にクリープを使ってゆっくり駐車していただくことですね。「インテリジェントクリアランスソナー」とセットなので、衝突しそうな際に緊急停止する機能はありますが、衝突を100%避けることを補償するものではないので。

風見 自動とは言っても過信して乱暴な運転はしてはいけないということですね。でも、最近はミニバンをお母さんが運転していることも多いので、この機能が付いていると助かる場面も多そうです。

吉岡 このクルマのコンセプトは「質的な贅沢」です。せっかくの高級車でもスーパーの駐車場に駐めるのに手間取って、ほかのクルマにクラクションを鳴らされたりしたら余裕を持って運転できませんからね。そういう場面で、ボタン1つでスマートに駐車できるのが本当の贅沢だと思います。しかも、私が駐車するより上手いですから(笑)。

風見 今後は自動駐車機能も高級車の標準的な機能になりそうですね。本日はありがとうございました!

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メカドック風見の眼
多くのセンサーやコンピュータで運転を支援
「IPA2」や「シースルービュー」にはカメラを、「巻き込み警報機能」には超音波ソナーを、「レーダークルーズコントロール」にはミリ波レーダーと適材適所で技術を使い分けているのが印象的。次世代の高級車は、こうしたデジタルな技術が必須のものとなりそうだ。

 

イラスト/次原隆二 文/増谷茂樹 撮影/増田慶

※『デジモノステーション』2015年6月号より抜粋

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