撮り鉄になるって決めたけど、よくわからないのでプロに聞いてみた

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風景写真、ポートレートから、子供の成長記録、ネイチャーフォト、天体写真、果ては自撮りまで……“カメラで何を撮るか”は人それぞれ。さまざまな被写体があるからこそ、さまざまなカメラが存在し、そのことがカメラの進化を促してきた。

電車や汽車を被写体とする「鉄道写真」も、その1つ。ともするとマニアックな趣味だと思われてしまいがちだが、日本国内だけでおよそ30万人の鉄道写真ファンが存在しており、20代から70代まで、幅広い層が日々鉄道写真撮影にいそしんでいると言う。野鳥写真愛好家もほぼ同規模(約34万人)とされているが、こちらは50代以上が約半数と年代に偏りあり(以上、キヤノン調べ)。趣味のすそ野の広さという意味では鉄道写真に軍配があがるだろう。近年では若い女性のファンも増えてきた。過熱傾向のSL再ブームや、中央新幹線(リニアモーターカー)、北海道新幹線開通なども、今後の撮り鉄人口増大を加速していくはず。特に男性ならば、一度は鉄道に興味を持ったことがあるという人は多いのではないだろうか。

と言うわけで、最前線で活躍する鉄道写真のプロフェッショナルからのアドバイスをもとに、撮影のコツからおすすめ機材までを紹介していこう。「鉄道写真を始めてみたいんだけど、ちょっと敷居が高そうで……」と思っている人にぜひともご一読いただきたい。

【教えてくれたのは】
鉄道写真家 長根広和さん

 

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▲JRポスターや時刻表表紙などで活躍するフォトグラファー。撮影テクニック解説書や撮影地ガイドも多数執筆。

【まずは、鉄道写真を撮るコツって?】
鉄道写真の成否は列車がやってくる前に既に決まっている
わずか数秒(場合によってはコンマ数秒)の撮影チャンスを狙い撃つ鉄道写真は、そこまでにどれだけ周到に準備できるかがポイント。ベストな撮影ポジションを探すところから始め、撮影設定等も全てあらかじめ決定しておく必要がある。そしてその上で欠かせないのが「連写」。鉄道が来たら、後は運を天に任せて高速連写し、そこから理想的な1枚を選び出すというのが鉄道写真撮影の基本スタイルだ。被写体によってはかなりのカメラスペックを求められるため、機材にこだわるというのもコツの1つ。何にせよ、全ては撮影前に終わっている。

撮影モードは「シャッター速度優先」で
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▲鉄道写真はシャッター速度を任意に設定できる「シャッター速度優先」モードで撮る。「遠景なら1/500秒程度で充分ですが、新幹線などの高速列車を広角レンズでダイナミックに撮るのなら1/4000秒でも遅いくらいです」(長根)

フォーカス位置は置きピンで固定
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▲「まず構図ありきの鉄道風景写真は“置きピン(フォーカス位置固定)”で。ピント位置が変わらないので追尾AFの必要はありません」(長根) F5.6〜8程度に絞り込み、被写界深度を広めに取るのも鉄道写真で失敗しないようするコツだ。

 

【それじゃあ、機材はどう選んだらいいの?】
■カメラの選び方
決定的な瞬間を撮り逃したくないのなら“安物買い”は禁物。初心者ほど良い物を
レンズ交換式カメラの場合、重視すべきスペックは連写速度とシャッター速度。前者は8コマ/秒以上、後者は1/8000秒対応のものが理想的だ。ファインダーもラグのない光学式がおすすめ。これらの条件を全て満たそうとすると20万円クラスの高級一眼レフとなってしまうのだが、カメラスペックのせいで撮影に失敗してそこまでの時間や費用(旅費など)が水の泡になることと比べればその投資は決して高くないはずだ。

コンパクトカメラの場合でも、重要となるスペックはレンズ交換式カメラと同じ。ただしレンズを交換できないので、より幅広いシーンに対応できる高倍率ズームレンズ搭載モデルを選ぶようにしたい。一眼レフと比べて小型軽量なので機動力のある撮影が楽しめる。

■レンズの選び方
鉄道写真の基本は望遠ズームレンズ
被写体に近付くのが難しい鉄道写真で利用するのは主に望遠レンズ。それもある程度画角をコントロールできるズームレンズが望ましい。狙い目はf=70〜200mm相当前後のクラスの製品。これにf=28〜70mm相当の標準ズームレンズを合わせればあらゆる被写体に対応できる。ほか、シチュエーションを選ぶがワイドレンズ(f=16〜24mm相当程度)もダイナミックな構図で鉄道を撮りたい場合などに活躍してくれる。

■メディアの選び方
容量だけでなく書込速度も重要だ
日常的な用途であれば8〜16GBもあれば充分な記録メディアだが、高速連写を多用する鉄道撮影ではそれでは足りない。撮影後でも露出やホワイトバランスを変更できるRAW形式(ファイルサイズは大きくなるが失敗の多い初心者におすすめ!)で保存することを考えると最低でも32GBのものを調達したい。それに加え、連写速度を安定させるためには書込速度も重要。スピードクラス10以上の高速メディアを狙いたい。

■三脚の選び方
大きなレンズを装着していてもしっかり支えられるものを選べ
待ち時間の長い鉄道撮影において三脚は必須アイテム。この際、重視したいのができるだけ重い三脚を選ぶこと。携帯性よりも、カメラ設置時の安定性を重視すべき。ただし、駅のホームなど公共の場所では三脚を立てても大丈夫かきちんと確認すること。

 

【なるほど、結局どのカメラがおすすめなの?】
軽快な動作が身上の“撮り鉄”御用達一眼レフ。まずはこのセットがおすすめ
キヤノン
EOS 7D Mark IIEF70-200mm F4L IS USM
実勢価格:19万8500円(ボディ)、14万3820円(レンズ)

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キヤノンのAPS-Cサイズセンサー搭載一眼レフ最上位機。毎秒10コマ/秒の高速連写、フラッグシップ機顔負けの高速・高精度AFなど、鉄道写真撮影に必要となる機能を不足なく盛りこんだ。レンズも鉄道撮影の大定番だ。

SPEC(ボディ)
サイズ:W148.6×H112.4×D78.2mm 重量:910g 有効画素数:2020万画素 撮像素子サイズ:APS-C マウント:キヤノンEF 連続撮影速度:10コマ/秒 最大シャッター速度:1/8000 測距点:65点 対応メディア:CF、SDXC

SPEC(レンズ)
サイズ:Φ76×172mm 重量:760g レンズ構成:15群20枚 撮影距離範囲:1.2m〜∞ 最大撮影倍数:0.21倍 フィルター径:67mm

 

文/山下達也(ジアスワークス) 撮影(製品写真)/松浦文生

※『デジモノステーション』2015年8月号より抜粋