かっこいい!EVの魅力をレースで伝える【よろしくデジテック】

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「排気ガスを出さない」「燃費が良い」というエコカーのイメージが強い電気自動車(EV)だが、今月取り上げるのはハードなレースシーンで活躍するマシン。タジマモーターコーポレーションでEV開発・制作のプロジェクトリーダーを務める田嶋直信氏に、『よろしくメカドック』の主人公・風見潤が直撃!

タジマモーターコーポレーション
E-RUNNER パイクスピークスペシャル
価格:(競技専用車両)
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EV初のパイクスピークでの総合優勝を目指すAPFVとの共同プロジェクトとしてレースに参戦。アルミニウムのフレームにカーボンコンポジットのボディを採用し、勝つためのノウハウを凝縮したマシン。

エンジン車の記録を更新し
総合優勝を狙うマシン

風見 タジマモーターさんは過去にツインエンジンのマシンでレースに参戦されていましたよね?

田嶋 はい。このマシンでも参戦している米国・パイクスピークのヒルクライムレースで初めて総合優勝したマシンもツインエンジンでした。

風見 「メカドック」にもツインエンジンのマシンが登場(第3巻参照)しますが、実際にそれでレースに出て、しかも総合優勝という結果を残していることに驚きました。その会社が電気自動車(EV)に力を入れているのは、なぜなんですか?

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▲メカドックの風見潤氏(左)。漫画『よろしくメカドック』(作:次原隆二)主人公。作中ではチューニングショップ「メカドック」のメカニック兼ドライバーとして活躍。
▲タジマモーターコーポレーション EV開発・製作プロジェクトリーダーの田嶋直信氏(右)。競技用車からEV、シティコミューターまでクルマ全体をトータルプロデュースするエンジニア。会長の田嶋伸博は実兄。

田嶋 実は、弊社の会長でこのクルマのドライバーでもある田嶋伸博は電気自動車普及協会(APEV)という組織の代表理事もしておりまして、前々から「ガソリンエンジンの次は電気だ」ということを言っておりました。EVには「クリーン」とか「エコ」というイメージが強いと思いますが、普及するためにはクルマ好きな人たちから「スゴイ」とか「カッコイイ」と思っていただくことも大事ですから、長年レースをしてきた我々がそういうクルマを作ろうと。パイクスピークのレースで、それまで破られていなかった10分の壁を破って優勝した次の年からEVで参戦しています。

風見 なるほど! 今度はEVでその記録を破って優勝すれば、そのスゴさをアピールできますもんね。

田嶋 はい。パイクスピークは標高4300mまで駆け上がるヒルクライムレースなので、ガソリンエンジン車では山頂付近では酸素が薄くなってパワーダウンしてしまうんです。EVではその心配はありませんから、その点は有利だとも考えています。

風見 確かに電気モーターなら酸素の濃度に影響されることはないですもんね。記録更新、期待してます!

田嶋 実は、我々がガソリンエンジン車で出した記録は、既に一昨年このクルマで上回っているんです。ただ、エンジン車の記録も伸びてきているので、残念ながら総合優勝はまだ果たせていません。

風見 そうなんですね! 既にEVの速さは実証済みなんですね。どういうところにEVの可能性を感じていらっしゃいますか?

田嶋 レスポンスが速い点ですね。エンジンだとガソリンを送って、ピストンが動いて、それが回転に変わってと時間がかかるのが、電気信号を送ればその瞬間に反応が返ってくる。それと、出力などの特性をプログラミングで自在にコントロールできること。また、排気ガスやエンジン音がないので、これまでに不可能だった場所でもレースができるようになるかもしれない。あと、直接レースには関係ありませんが、これだけの大出力のレースカーでありながら、少しクルマを移動させるようなことが気軽にできる。エンジン車だと、プラグがかぶらないようにとか、色々気を遣う必要があるのですが、それがありませんから。

新たな課題を発見するのに
レースは最適なフィールド

風見 なるほど。エンジンを暖めたりする必要もないわけですね。逆に開発やレース時に苦労されたのは、どんなところですか?

田嶋 確かにエンジンのように暖める必要はないのですが、熱の問題には悩まされました。モーターは効率が良いので、エンジンほど熱の問題は起きにくいのですが、やはり出力が大きくなると冷却が必要になります。モーターは液冷式を採用しているのですが、一番熱を持つコイルの部分に水を入れるわけにはいかないので、どうやって冷やすかというノウハウが必要となります。電気を変換するインバーターも熱を持ちますので、システム全体をどう冷却するかを考えなければなりませんでした。

風見 市販車とは桁違いの出力になると、普通のEVでは出なかった問題も出てくるんですね。

田嶋 そうですね。弊社でもこれまでにEVは何台も作ってきたのですが、普通の出力では出ない問題が色々と出てきました。電気ノイズの問題もそうで、これだけモーターが大きいと発生するノイズも桁違い。開発し始めた頃はノイズの干渉で走らせるのも大変なくらいでした。

風見 でも、そうやって新しいノウハウを積み上げていくのはメカニックとしては面白そうですし、今後のEV開発にもいかされそうですね。

田嶋 その通りですね。ある程度ノウハウの蓄積されているエンジンのレースと違って、EVレースの世界は初めて経験することが多いので大変ですがワクワクします。また、エンジン車の世界では、レースの世界から市販車へフィードバックできることは少なくなっていますが、EVにはそうした余地が残されている点も面白いですね。

風見 なるほど。どんな点が市販車にフィードバックできそうですか?

田嶋 いかに効率を高めてバッテリーを節約するかという部分はレーシングカーも市販車も同じです。レースでも電気を節約できれば、その分バッテリーを少なくできますから。EVでは減速時にモーターを逆回転させて発電する回生ブレーキを用いますが、その割合を高めることができれば、このクルマももっと軽くすることができる。そうしたノウハウは市販車にもいかせるはずです。

風見 EVではやはりバッテリーが重要なんですね。

田嶋 今、EVが注目されているのもバッテリーが鉛電池からリチウムイオンになったことが大きいですからね。さらに効率が高いものが開発されれば、エンジン車より便利なものになるかもしれない。

風見 今後の課題は何でしょう?

田嶋 今、まさにそれを洗い出してるところです。モータースポーツはそういう課題を見つけるのに、またとないステージですから。

風見 確かに!『E-Runner』とEVの進化に期待しています。本日はありがとうございました!

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メカドック風見の眼
市販車の進化にも貢献するレーシングモデル
「メカドック」にも出て来たツインエンジン車のノウハウをいかしたツインモーターのレイアウトが面白い! レースを通じて新たな課題を見つけ、それを解決して市販車にフィードバックするというクルマの進化のサイクルを回していく重要なマシンだと思う。

 

イラスト/次原隆二 文/増谷茂樹

※『デジモノステーション』2015年8月号より抜粋

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