旨さの鍵は羽釜にあり。“かまど炊き”炊飯器の魅力とは?

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高級炊飯器の“内釜戦争”が一段落し、「徹底的な味の追求」よりも「炊き分け機能」や「少人数世帯向け小釜モデル」などの方向にトレンドがシフトし始めたように見えた炊飯器業界。しかしここに来て、内釜に新たなトレンドが登場した。それが、昔ながらのかまど炊きに使われている「羽釜形状」だ。2010年から「極め羽釜シリーズ」を展開する象印に対し、東芝と三菱電機も参入。一気に注目トレンドとなった。

羽釜の羽は、元々かまどに載せるために生まれたものだ。だが、それは同時にかまどにフタをすることで、外へ逃げる熱を遮断し、かまど内の火力を釜に集中させる役割がある。

3社とも、それぞれが美味しいとする「かまどご飯」を分析することで、このスタイルを炊飯器に昇華させた。羽釜の羽で密閉された下部空間の断熱構造と、IHによる大火力を実現するという点は共通している。そこに象印はかまどにフタをし、火力を釜に集中させることで、米が対流しやすくて自重でつぶれにくい、浅くて広い内釜形状にたどり着いた。東芝と三菱は羽から上の空間の役割に着目。大火力で連続的に沸騰しても、吹きこぼれずに芯まで火を通すことができる。アプローチに違いはあるものの、それぞれ羽釜の形には確かな意味があるという。

こうして、各社が共通して目指したかまどごはんの味や食感、つまり「適度な弾力(粒感やハリ)と甘さを両立」(象印)、「ハリとツヤがあり、一粒一粒が弾力のある食感で、噛むほどに甘味が出てくる」(東芝)、「粒感がありながらも、中はみずみずしい」は実現されている。

 

南部鉄器
象印マホービン
南部鉄器 極め羽釜 NP-WU10
実勢価格:11万8150円
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沸騰時の吹きこぼれを防ぐ「新うるおい二重内ぶた」を採用し、昨年モデル比約1.3倍の火力を実現した最上位機種。1気圧から1.3気圧まで7通りの好みの食感が楽しめる「炊き分け圧力」機能を搭載。炊き上がりの感想を答えるだけで好みの味に近づく「わが家炊き」機能も搭載する。

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SPEC
サイズ:W295×H240×D365mm 重量:約8.5kg 省エネ基準達成率:111% 炊飯時最大消費電力:約1360W

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▲鉄はアルミなどに比べて熱伝導性は低いものの、発熱効率が高いためIH加熱と相性がいい。蓄熱性が高いため、強火をしっかり釜内にためこんで一気に集中加熱できるという。

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▲従来までの炊き分け機能とは別に「やわらか」メニューを搭載。「やわらか」と「よりやわらか」の2通りで炊き分けられる。

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▲内釜は浅くて広いため、本体に入れると羽釜の上部はほとんど出っ張らない。浅いため洗米しやすく、ご飯を攪拌しやすいのも特徴だ。

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▲二重内ぶたの構造を見直したことで、沸騰時の火力を昨年モデルに比べて約1.3倍にアップ。ご飯の体積も従来比約105%と、ふっくらした炊き上がりを実現した。

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▲内釜は浅くて広いすり鉢状の形状を採用している。これによって米が対流しやすいだけでなく、米が自重でつぶれてしまうことを防ぎ、ふっくらと大粒のご飯を炊きあげるという。

【羽釜の秘密をメーカー担当者に直撃!】
形状は2つの特徴があります。まずお米が対流しやすく、自重でつぶれてしまうのを防ぐ、浅くて広いすり鉢形状です。また、羽が直接ヒーターに当たる構造によって側面からの加熱を強化し、均一加熱を可能にしました。素材はかまど・羽釜の原点である「鉄」。発熱効率が大変良く、理想の素材です。理想の炊飯には、「適度な圧力」「強火」「均一加熱」の3つの要素が重要。それを現代の炊飯器で実現するためには、形と素材を極めたこの羽釜こそが必要でした。

 

純度99.9%の炭
三菱電機
本炭釜 KAMADO NJ-AW106
実勢価格:12万9600円

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純度約99.9%の炭素材料を内釜に用い、「かまどごはん」を科学的に分析して再現したプレミアムモデル。高級炊飯器メーカーでは唯一圧力IH炊飯機能を採用していないのが大きな特徴。固さ5種類と食感3種類の合計15種類の炊き分けが可能な「炊分け名人」機能などを備えている。

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SPEC
サイズ:W285×H249×D320mm 重量:約5.7kg 省エネ基準達成率:101% 炊飯時最大消費電力:約1350W

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▲厚さ約3mmの断熱材に加えて、外周部に約10mmの断熱材を内蔵した二重高断熱構造を採用。羽釜の羽とともに熱を閉じこめている。

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▲バックライトを内蔵するフルドット液晶を搭載。「天面フラット構造」で拭きやすくなっているなど、手入れのしやすさも追求している。

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▲炭の磁力線の浸透深さは約10mmとステンレスの約40倍も厚く、内釜全体が発熱するのが大きな特長。熱伝導率も高く、IH調理と相性がいい。

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▲内釜を炊飯器にはめると羽部分より上は飛び出す。最大炊飯量でも水位は羽の下にあり、「激沸騰」時にも羽の上の空間は温度が低めなのが特徴だ。

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▲釜底は中央が肉厚になり、傾斜が作られている。この傾斜を伝って大きな泡になり、米の間にすき間を作ってふっくら炊きあげるという。

【羽釜の秘密をメーカー担当者に直撃!】
「かまどごはん」を再現するために羽釜の構造を分析したところ、羽より下の空間は大火力で米と水を加熱し、上の空間は気泡やおねばを受け止めてうま味を閉じ込める役割があることが分かりました。そこで当社は最大炊飯量(5.5合)でも羽部分を越えないように設計し、上部空間をしっかり確保。高断熱構造を採用し、羽釜形状との相乗効果によって従来比約28%の大火力を実現しました。本体フォルムの美しさも追求し、「実りの形」を採用しています。

 

鉄とアルミの一体成形+備長炭コーティング
東芝
備長炭かまど本羽釜 RC-10ZWH
実勢価格:11万8460円

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羽釜形状や上部空間の拡大などにより、沸騰初期の加熱量を従来比約28%向上した。4通りの炊き分けが可能な「かまど名人」コースを搭載する。約0.6気圧まで減圧して芯まで短時間で吸水する「真空ひたし」や、ご飯の酸化を防ぐ「真空美白保温」も東芝ならではの特徴だ。

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SPEC
サイズ:W274×H248×D364mm 重量:約8.8kg 省エネ基準達成率:101% 炊飯時最大消費電力:約1420W

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▲従来の内釜より高さのある空間を設けたことで、大火力による沸騰力を実現。うまみ成分を大量に発生させ、お米の一粒一粒にコーティングする。

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▲必要な情報だけが浮き上がる、すっきりした見た目のスマートタッチパネルを採用。フラットなパネルは拭きやすくて手入れもしやすい。

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▲羽釜ヒーターで側面からも加熱し、羽部分の断熱構造で大火力を持続。うまみ成分を引き出すことで、従来機種に比べご飯の甘さが約10%アップしたという。

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▲内釜はお米が対流しやすい丸底と、開口部をすぼめた形状が特徴。内釜をはめると上部が大きくはみ出るため、上フタが分厚くなっている。

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▲釜底からの加熱を促進する、独自の「釜底WAVE」加工を施している。WAVEに沿って大量の細かい泡が発生する仕組みだ。

【羽釜の秘密をメーカー担当者に直撃!】
伝統的な羽釜形状を基に、3つの独自ポイントを採用しました。1つは羽釜の高さのある空間と、側面に丸みを持たせたすぼまり。これで連続沸騰を可能にし、お米のうまみ成分(おねば)を引き出します。2つめに羽釜は羽によって熱を閉じ込め、大火力と沸騰力を維持する役割があります。独自の製法でこの丈夫な羽を再現したこと。3つめは、羽釜の丸みです。強い熱対流を起こしてお米に熱をすばやく伝えるため、側面の丸みと釜底角度60°を実現しました。

 

文/安蔵靖志 撮影/星武志(estrellas)

※『デジモノステーション』2015年9月号より抜粋

関連サイト
『南部鉄器 極め羽釜 NP-WU10』製品紹介ページ
『本炭釜 KAMADO NJ-AW106』製品紹介ページ
『備長炭かまど本羽釜 RC-10ZWH』製品紹介ページ