えっ!その動物がヒントなの? “家電×動物”、実は深い関係なんです

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シャープの家電の多くに採用されている技術として、今、ひそかに注目を集めているのが「生物模倣技術」というネイチャーテクノロジーだ。これは鳥やイルカ、ネコなどの動物やトンボ、チョウチョなどの昆虫の生態からヒントを得て、家電製品の性能をアップさせるというものだ。しかし、本当にそんなことが可能なのだろうか。シャープで家電製品の技術進化に取り組んできた大塚雅生氏は、この「生物模倣技術」のリーダーだ。

「元々、大学で航空工学を専攻していたこともあり、その知識を活かしてエアコンの室外機のファンの気流制御を担当していました」(大塚氏・以下同)

航空工学の知識を活かして開発したファンは従来の倍という効率化を実現。大きな成果を出した。しかし、問題はその後だ。すでに考えつく理論は試し尽くした。それでも1%の効率化を実現するのも難しい。当時を振り返ると、悩みに悩んで、癒やされたいと逃避したかっただけだと語る大塚氏。そして、パソコンで「イルカ 学会」と検索していたという。しかし、そこで驚きの出会いがあった。

「学会では、いろんな学者さんたちがいろんな学説で喧々諤々とやり合っているんです。そもそもイルカには時速50キロで泳げる筋力がない。なのに泳いでいる。これは『グレイのパラドックス』といわれていますが、その理論が未だに解明されていないんです。それはこれまで航空工学で学んできた常識では考えられないような学説でいっぱいでした」

このイルカの学会で衝撃を受けた大塚氏はその場にいた研究者に共同研究を依頼するとともに、いろんな生物学会に出入りするようになる。
「次に参加した学会ではアホウドリやトンボの羽根についての学説にぶち当たりました。例えばアホウドリの羽根はNASAで研究している航空翼理論よりも効率がいいんです。ここでも航空工学の常識が否定されました。でも、その多くは仮説だったり、証明されていないもの。このまま会社に口で説明しても仕方がないので、まずは試作してみることにしたんです」

そして大塚氏はアホウドリの翼を模したファンを試作、そしてテストをしてみると……。最初は計測ミスだと思ったという。
「最初に作ったのは完全に感覚的デザインを真似ただけの試作品です。それがいきなり20%も効率化したんです。驚くとともに、ガッカリしました。今まで何してたんだと(苦笑)」

この生物模倣によるアプローチは確実に結果を生み出した。最終的な製品では商品により2〜4割の省エネを実現したという。そしていよいよ、この生物模倣技術の横展開がスタートする。

エアコンの室外機のファンでうまくいった。ならばといろんな製品のファンにアホウドリの翼を応用していった。しかし、今度はうまくいかないという。
「扇風機などに使うと風が気持ち良くないんです。また、ドライヤーもうまくいかない。そこで気付いたのが生き物の大きさとの相関関係でした。飛行機の技術である航空翼理論より、鳥の翼の方が室外機のファンの大きさに近い。ならば、それぞれにもっと適した生き物がいるはずだと考えました」

大塚氏のこの考え方がハマる。改良したい製品から生きたお手本を探すという手法だ。
「例えば、スリムファンやエアコンの室内機などに使われているシロッコファンなどは羽根1枚1枚は非常に小さい。トンボの羽根とほぼ同じ大きさなんです。だからトンボの羽根をモチーフにした。すると、静音性と風量を同時にアップできました。また、最初に出会っていたイルカの技術は縦型洗濯乾燥機に応用できました」
その後もシャープの「生物模倣技術」は進化を続けている。現在では公表していない製品も含めると25品目に20種類の技術が採用されているという。これからもさまざまな生き物がシャープの家電を劇的に進化させていくことになりそうだ。

 

【イルカ】
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海中を時速6〜15km、早い品種になると瞬間的には時速50kmを超えるスピードで泳ぐイルカ。しかし、現在でもイルカがこれほどまでに早く泳げるその秘密は解明されていないという。シャープではイルカの尾びれ形状を洗濯機のパルセーターに応用することで、水に上下の運動をプラス。また、イルカの表皮のシワ紋様から、水の抵抗を減らすことを実現している。

シャープ
ES-GX850
実勢価格:16万8630円

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投入開口部を約23%広く、高さを約25mm低くした「WIDEマウス & LOWボディ」の洗濯乾燥機。給水時に洗濯物に強いシャワーを噴射する「パワフルシャワー」機能により洗剤を線維の奥までスピーディに浸透させ洗い上げることができる。

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▲縦型洗濯乾燥機の底に配置するパルセーター。表面にイルカを模したシワを付けることで水の摩擦抵抗を減らしている。

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▲パルセーターの裏側の羽根に尾びれの形状を採用。このことでもみ洗いの効果を実現、洗浄力を約15%アップしている。

 

【ネコ】
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愛猫家にとってたまらないシーンのひとつが毛繕いするグルーミング。舌を大きく、舌を器用に使いながら、毛繕いし口の中にたまった毛をまとめて吐き出す。このネコの舌にある小さな突起(糸状乳頭)を使ってグルーミングする仕組みを掃除機のゴミの圧縮に応用。吸い込んだゴミから空気を分離することに成功し、ゴミの圧縮を実現している。

シャープ
EC-VX600
実勢価格:4万2110円

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ネコの舌を模した「スクリューフィン」がゴミを圧縮することで約1ヶ月ゴミ捨てすることなく利用可能。ゴミ捨て時に微細なゴミの舞い散りを抑えることができる。パワーヘッドの丸洗いができるのも特徴だ。

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▲赤いほうが従来のゴミ圧縮ブレード。トゲ突起を配置した新ブレードでは吸い込んだゴミを約1/15に圧縮できたという。

 

【イヌワシ&アホウドリ&アマツバメ】
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送風や冷却などを目的に、多くの家電製品に搭載されているファン。この構造を見直すときに参考になったのが大空を飛ぶ鳥たちの翼だ。たとえアホウドリの翼は揚力がつよく省エネで飛べる。イヌワシは獲物を見つけると急旋回。風をしっかり捕まえられる翼だ。そして鳥類最速のアマツバメは高速飛行に特化した翼。これらの形状に多くのヒントがある。

シャープ
AY-E36SX(12畳用)
実勢価格:16万8630円

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清潔な風を放出できる風クリーンシステムを採用したエアコン。室外機のプロペラファンに3種類鳥の翼形状を、室内機のクロスフローファンにトンボの羽根を応用することで、送風効率を大幅に高めることを実現した。

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▲ネイチャーテクノロジーを最初に製品に導入したのが、この室外機のプロペラファン。試作機の段階で高い性能を発揮したという。

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▲ファンにアホウドリやイヌワシの翼を応用することで送風効率を20%アップ。さらにアマツバメの翼形状の応用で吸気力も向上した。

 

【ギンヤンマ】
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ゆっくり飛んだり、素早く飛び立ったり、ときには空中で静止したり、急旋回するトンボ。これを実現しているのが、トンボの薄く強い羽根。表面が凸凹していて柔軟で粘り強いから、空気をしっかりと捉え、さらに小さな渦を作って受け流すことができるという。この技術を活かすことで、低騒音で効率良く空気を送ることができるのだ。

シャープ
PF-HTC1
実勢価格:2万7320円

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シロッコファンを採用することで省スペースで設置できる「スリムイオンファン」。従来比1.5倍の風量を実現した「パワフルモード」を搭載。さらに最小風量では約21dBという圧倒的な静かさも実現している。

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▲ファンの羽根ひとつひとつに凹凸を配置。空気の渦が生まれ、それが車輪のような役割となり、スムーズに空気が送れるようになる。

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▲トンボの羽根の技術が役立つのが小さな羽根を無数に配置したシロッコファン。大量の空気を静かに送る空気清浄機などで採用されている。

 

【ひまわり】
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中心にびっしりと種が詰まったひまわりの花。この種はよく見ると中央から外に向かってらせん状に並んでいるという。これを見つけたのが12世紀のイタリアの数学者レオナルド・フィボナッチ。彼の名前をとって付けられた「フィボナッチ配列」をドラム式洗濯乾燥機に応用することで洗濯ムラが50%も低減するのだ。

シャープ
ES-Z210
予想実勢価格:30万円 8月27日発売予定

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予洗い機能などを備えるドラム式洗濯乾燥機。約40℃の温風をドラムに送風するサポートヒーターで衣類を温め、毎秒100万個以上の微細な水滴を吹き付けて汚れを吹き飛ばすマイクロ高圧洗浄機能によりガンコな汚れも落とすことができる。

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▲ドラム層のフタの裏側は洗濯板としての役割がある。ここに「フィボナッチ配列」の模様を付けることでより洗濯効率がアップする。

 

教えてくれたのはこの人!
シャープ株式会社
ネイチャーテクノロジー開発室
大塚雅生 氏

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▲大学で航空工学を学んだ後、シャープに入社し、エアコンのファンの改良などを担当。現在は横断的にさまざまな製品にかかわっている。

 

文/コヤマタカヒロ 撮影/篠田麦也

※『デジモノステーション』2015年9月号より抜粋

関連サイト
シャープ公式サイト