家電の常識を変える、ハイアールの「デバイス家電」とは?

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世界最大の家電メーカーである中国のハイアールが旧三洋電機の冷蔵庫・洗濯機「AQUAシリーズ」開発部門を買収。それにより誕生したハイアールアジアに今、熱視線が注がれている。2014年2月に就任した代表取締役社長兼CEOの伊藤嘉明氏が、旧来の“売り切りスタイル”からビジネスモデルを大きく転換しようとしているからだ。

6月に開催した発表会では、スターウォーズの人気キャラクターであるR2-D2型冷蔵庫が話題をさらったが、「本丸」は実はまったく別だ。今年から来年にかけ、ネットワークに接続してコンテンツサービスなども利用できる「デバイス家電」群がそれ。これらは我々の生活をどのように変えるのか。また、家電の買い方がどう変わるのだろうか?

ハイアールアジアはデバイス家電を活用した3つのビジネスモデルを描いている。

「DIGI」はジェスチャー操作が可能な液晶を搭載する「冷蔵機能付きディスプレイ」だ。テレビメーカーが「リビングの中心」として薄型テレビを位置付けてスマート化を図っているが、DIGIは食生活や家族のコミュニケーションの中心として冷蔵庫を活用する。冷蔵庫内にある食品を一覧表示し、それらを基に作れるレシピを検索して表示する。卵がなくなりそうな場合、ネット経由で注文することも可能。子供が帰宅したら、お母さんからの伝言メッセージを動画で確認できる……彼らが描くそんな未来にワクワク感が止まらない。

AQUA DIGI Type 1 (仮称)
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▲32インチフルHDディスプレイを2枚搭載し、Android OSを採用する「冷蔵機能付きディスプレイ」。手をかざして行なうジェスチャー操作に対応する。内蔵カメラを使って動画メッセージを撮影する機能なども備えている。

AQUA DIGI Type 2 (仮称)
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▲type 1の機能をより身近に使えるという目的で商品化される、ディスプレイ1枚搭載の小型モデル。機能はtype 1と同等だ。オフィスなどで食品を販売する「off ice」対応商品としても開発する予定となっている。

AQUA DIGI Type 3 (仮称)
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▲ディスプレイを4枚搭載し、リビングなどに設置してインテリアの一つとして使うことを想定したモデル。「提供したいバリューは『家具』です」と柴田氏は語る。販売方法もtype 1や2とは異なる可能性があるとのことだ。

「iG(intergallery)」は「デジタル額縁」。小型ディスプレイに絵画やロックスターの写真、アニメのキャラクターなどさまざまな画像を映し出すというもので、月額数百円〜1000円程度の定額ビジネスを想定している。

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▲intergalleryは写真や絵画、イラストを表示するコンテンツプラットフォームであり、単なる「デジタル額縁」とは異なる。

「off ice」は冷蔵庫をベースにした食品販売ビジネスだ。冷蔵庫をオフィスなどに設置し、冷凍・冷蔵食品、常温の食品も含めて販売するというもの。単なる冷蔵庫を利用するのではなく、DIGI Type 2を用いる予定だという。食べた分だけお金を払う「富山の置き薬」的なビジネスから、メーカーにとっても消費者にとってもより利便性の高いビジネスに変ぼうする可能性がある。

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▲オフィスでリッチなアイスなどを楽しめるというコンセプトでスタートしたが、DIGIの活用によってさらに可能性が広がりそうだ。

DIGIの第1弾は年内に登場予定。家電がどのように進化するのか、大いに期待したい。

【噂の真相を直撃取材!】

ハイアールアジア ホームエンタテインメント事業本部 本部長 柴田 博氏にあれこれ聞いてみた!
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▲アクセンチュア、ヤフー、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、アマゾンジャパンを経て、2014年5月にハイアールアジアへ。新規事業開発、IoT事業などを担当。2015年4月より現職。

【噂】液晶を2枚も搭載するスマート冷蔵庫はかなりの価格になる?
【真相】携帯電話のような購入スタイルを目指しています
販売方法は携帯電話と同じようなものを考えています。(本体価格を抑えて月額のサービスプランや保険パックなどを提供するソフトバンクのロボット)Pepperに近いかもしれません。
収益の柱はいくつか想定していますが、その1つが(スーパーやコンビニなど)流通との連携です。レジで読み込まれた会員情報と商品情報のデータベースをDIGIと連携すれば、手で入力しなくても冷蔵庫内の食品情報を管理できるようになります。卵の消費期限が近づくとアラートを出すだけでなく、連携した流通業者のネットスーパーでその食品を購入するといった流れを作ります。そこで生まれた利益を分配するというのが大きなビジネスモデルです。

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▲2年契約などで初期費用を支払い、毎月の支払いは通信料金やサービス利用料金によって割り引かれる。途中解約すると解約金が生じるという、携帯電話やスマートフォンの買い方と同じになると見られる。

 

【噂】「◯動戦士◯ンダム」や「新世紀ヱ◯◯ンゲリヲン」など人気アニメの書き下ろしコンテンツを楽しめる!?
【真相】コンテンツが命なので現在交渉中です!
ハードウエアである「デジタル額縁」は単なるツールであり、重要なのはコンテンツプラットフォームです。現在はロックアーティストのデジタルアーカイブを提供する「Rock Paper Photo」に合意をいただいており、その他のコンテンツプロバイダーとも交渉を進めているところです。アニメの金字塔的なコンテンツが加われば、一気に世界観が変わると期待しています。アニメなどの場合、intergalleryでしか見られない書き下ろしのイラストなどがキラーコンテンツになるのではないかと考えています。額縁は20インチ程度のサイズですが、32インチの大型モデルも検討中です。月額料金は数百円、もしくはいくつかのコンテンツを含めて1000円程度にしたいですね。

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▲アマチュアの写真家や美術家がコンテンツを販売できる「LINE CR EATORS MARKET」のようなプラットフォームも検討しているという。

 

【噂】来年はオフィスだけでなくDIGIとの組み合わせでいよいよ一般家庭への進出も!?
【真相】個人向けに提供する可能性もあります!
普通の冷蔵庫を使ったテストマーケティングを行ってきましたが、DIGIを使ったoff iceの展開こそが我々らしさであり、その実現に向けて大きく舵を切っています。DIGIのディスプレイを使えば、ジェスチャー操作で商品の発注やリクエストも可能になるため、在庫切れが減ります。現金販売は回収リスクが高いですが、FeliCaを利用した電子決済にすれば回収しやすいですし、1円単位の値付けも可能です。電子決済にはバーコードスキャンも必要になりますが、ジェスチャー操作に使っているカメラを利用すれば解決するでしょう。DIGIを活用することで、「置きビジネス」が100億倍面白くなると確信しています。家庭への展開も、十分に可能性はあると思います。

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▲当初は通常の冷蔵庫を使ってテストマーケティングしていたが、DIGI Type 2を使うビジネスに向けて準備を進めているという。

 

文/安蔵靖志

※『デジモノステーション』2015年9月号より抜粋

関連サイト
ハイアール アジア グループ公式サイト