ハイレゾはただの流行?それとも……?歴史と共に今後の展開を検証してみた

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間違いなくオーディオ史においても、2010年代最大のトピックであるハイレゾ。
この2〜3年は高音質を今までにない利便性で手に入れられることから、瞬く間に流行化していったが、果たしてCDや音楽配信などに並ぶポジションを確保できるのか? ハイレゾはただの一過性のモノなのか検証してみたい。

ハイレゾ定着の一番の壁は誤解されやすい定義?

「ハイレゾ」という言葉はオーディオファンのみならず一般にも広まりつつある。しかし言葉の広がりと理解の深まりは一致しないので誤解されがちだし、当然の疑念だなと思うところもある。今後ハイレゾが本当に確立、認知されるためには、その誤解や疑念を解くことも大切だ。

例えば「ハイレゾはハイスペックだから音が良い」と単純化された説明。CDは44.1kHzでハイレゾは96kHzだから音が良くて192kHzはもっと音が良い。数字を出せるので説明しやすいが、それだけに誤解も生みやすいと思える。

特にヘッドホン分野では、ハイレゾの高域再生特性を想定して高域再生能力40kHz以上というスペックがハイレゾ対応の目安とされている。しかしそれだけだと極端な話、超高域には特化している分、低域を切り捨てたヘッドホンが今後登場したらどう扱えばよいのだろう。こういったツッコミどころがある分、正直疑念を生みやすい目安ではある。

しかし実は、日本オーディオ協会のハイレゾの定義にはスペック設定だけではなく「各社の評価基準に基づき、聴感評価を行ない『ハイレゾ』に相応しい商品と最終判断されていること」という項目もある。曖昧な項目だが実はこちらこそがより重要で、「ハイレゾ対応」とした製品の音質が微妙だった場合、そのオーディオメーカーの「評価基準」が疑われてしまうわけだ。この項目が言葉は悪いが抑止力としてあるからこそ、ハイレゾの定義を満たす「ハイレゾロゴ」製品には、逆説的な意味において一定の信頼を置けると言える。

最低限のハードルとしてはスペック設定も有用だし、「理屈と数字で説明してくれないと信用しにくい……」という人にも興味を持ってもらうためにも役立つだろう。しかしそちらばかりをアピールしたり注目したりせず、ハイレゾの総合的な理解を広げていく必要がある。

音楽流通メディアとして成長すればあるいは……

さてハイレゾ「音源」の方の状況はというと、現在ハイレゾ配信される音源はかなり増えてきている。しかしCDで発売される音源の大半が、ハイレゾでも購入できるという状況にはまだまだ遠い。またハイレゾ配信の有無が当日まで明らかにならないことも少なくなく、「ハイレゾ発売の情報がないからCDを通販で予約してたら同日にハイレゾ発売が開始された」なんてことは筆者も幾度となく経験した。これらは「ハイレゾ配信はまだ音楽流通メディアのひとつとしてそのポジションを確立しきれていない」という状況を表していると言っても過言ではないかと思う。まだ一部のマニアに向けた「実験的なサービス」というニュアンスを感じずにいられないのだ。そのために配信作品が限定的であったり、配信開始までが慌ただしかったりするのではないだろうか。

もっとも、ハイレゾは今後も当面は「一部に向けたサービス」であり続ける可能性が高い。今、定額制音楽配信サービスが取り沙汰されることからもわかる通り、お金をかけて音楽に高音質を求める層が一般多数層ではないからだ。狙う層や用途が違うので「CDに取って代わるポジションを定額制配信と争う」なんてことはありえない。しかし、それでもハイレゾが一部のオーディオファンだけでなく一般認知に近付き「流行」とされたことを考えると、音楽リスニングに高音質を求める人が確かに存在すること、そして彼らにとっての確かな選択肢となり得ることがわかる。だからこそ、配信作品数や配信スケジュールの充実といった音楽メディアとしての基礎体力の向上には期待したい。

そしてそれが為されれば、ハイレゾが今後の音楽市場で確固たるポジションを得ることもありえるのではないか。今まではアーティストやエンジニアが120点の音質のマスター音源を制作しても、CDの最大100点の枠に押し込める形でしかリスナーに届けられなかった。それがハイレゾなら120点のままで届けられて、リスナーも120点を引き出すための再生システムを揃えられる(マスター音源が80点レベルではハイレゾの意味が薄いわけだが残念ながらそういうハイレゾ音源もある。そこの意識変化も期待したい)。音楽を届ける側にとっても音楽を受け取る側にとっても、数年前までは夢でしかなかったような話だ。

音楽はあくまでも趣味にしか過ぎない。趣味だからこそ夢やらロマンやらがその原動力。そういった意味でハイレゾには、これから音楽の楽しみ方の選択肢として成り立つエネルギーが秘められていると思う。

 

【ハイレゾの歴史をCHECK】
2005年
e-onkyo musicがハイレゾ音源の取り扱いを開始
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▲配信サイトe-onkyo musicがサービスを開始。globe「globe2 pop/rock」といったメジャー作品もラインナップしていたがカタログ数は少なく、ファイル形式もコピープロテクト付きWMAロスレスという扱いにくいものだった。

2007〜2011年
PCオーディオ、ネットワークオーディオが各社から続々と登場する
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▲英国のブランドLINNが、ハイレゾ対応ネットワークプレイヤーの展開と同時に配信サイトを運営するなど、海外からハイレゾの波が徐々に起き始めた。またUSB DACが注目を集め、ハイレゾを含めてPCでのオーディオ再生の一般化も進む。

2012〜2013年
ハイレゾ対応のミュージックプレイヤーが市場投入
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▲すでにハイレゾ対応プレイヤーは存在していたが、小型で価格も手頃な「Astell&Kern」やハイレゾ対応ウォークマン登場で一気に注目を集め始める。また、配信サイトmoraのハイレゾ対応などは、一般ニュースでも取り上げられるほど話題を呼んだ。

2014年
配信曲の爆発的増加などコンテンツ側が大きく動き始める
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▲宇多田ヒカル「First Love」リマスターのハイレゾ配信が開始。J-POP名盤のハイレゾ配信は、その後の楽曲増加への呼び水となった。また日本オーディオ協会は同年に「ハイレゾ対応機器の定義」「ハイレゾロゴ」を策定。

2015年
一般層への普及施策を急進
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▲オーディオファン内でのハイレゾの認知と普及は十分進み、今後はその他の一般層へのアピールが課題とされている。天使の声と称される声優の花澤香菜とコラボした限定ハイレゾプレイヤーの発売、ロックフェスでのハイレゾブース設置などの施策が今なお展開され続けている。

 

文/高橋敦

※『デジモノステーション』2015年10月号より抜粋

関連サイト
日本オーディオ協会公式サイト