【インタビュー】30年以上続く名ブランド。ハイレゾウォークマン開発秘話

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(右)さらなる高音質を求めたフラッグシップ
ソニー
NW-ZX2
実勢価格:12万2790円

初代『NW-ZX1』から、さらに高音質を求めて作り出された最高峰のウォークマン。銅+金メッキ、7基ものOS-CONなどの高級パーツをふんだんに投入することで、リッチでスケールの広い音場を再現することに成功した。

SPEC
サイズ:W65.1×H131.2×D18.5mm 重量:約235g 液晶:4.0型WVGA Bluetooth:3.0(LDAC対応) PCM:最大192kHz/24bit DSD:最大5.6MHz/1bit 内蔵メモリ:128GB 外部メモリ:microSD×1(最大128GB) Google Play:対応 DLNA:対応 OS:Android 4.2 アンプ:S-Master HX バッテリー持続時間:約43時間(FLAC 96kHz/24bit再生時) 充電時間:約4.5時間/非公表(USB/AC)

(左)クールさが光るシリーズ初号機
ソニー
NW-ZX1
実勢価格:6万7600円

極めて色付けの少ないフラットサウンドを目指して作られたモデル。圧縮音源もCDベースの音源もハイレゾクオリティに拡張する「DSEE HX」により、コレクションしている全ての音源を高音質化してくれる。

SPEC
サイズ:W60.7×H122.8×D15.3mm 重量:約139g 液晶:4.0型WVGA Bluetooth:3.0(LDAC非対応) PCM:最大192kHz/24bit DSD:最大2.8MHz/1bit 内蔵メモリ:128GB 外部メモリ:非対応 Google Play:対応 DLNA:対応OS:Android 4.1 アンプ:S-Master HX バッテリー持続時間:約32時間(MP3再生時) 充電時間:約3時間/約3時間(USB/AC)

 

ウォークマン史上最高音質とも評価されるエポックメイキングな
モデルとなった「NW-ZX」シリーズ。1979年から連なるウォークマンの系譜から生まれたハイレゾモデルの開発秘話を聞いてみた。

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ソニー ビデオ&サウンド事業本部
企画マーケティング部門商品企画部
田中光謙

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ソニー ビデオ&サウンド事業本部
V&S事業部サウンド1部
佐藤朝明

2機種で異なるハイレゾの音を鳴らすフラッグシップ

―「NW-ZX」シリーズの企画背景についてお聞かせください。
田中 13年の秋に「NW-F880」からハイレゾ対応ウォークマンの市場導入が始まりましたが、ハイレゾ事業全体を牽引するシンボル的なモデルとして『NW-ZX1』を開発しました。これまでにはない価格帯のウォークマンでしたが予想以上の反響をいただいて、生産も追いつかないような状況になりました。とはいえ、企画当初は、ウォークマンは「小さく、薄く、軽く、そしてバッテリー持続時間が長い」というのがポイントゆえに、ここまでコストの掛かる大型部品を採用して、高音質化するということに対して中々踏み込めませんでした。でも音質を追求しているメンバーは「いやこれ絶対に良いから。ここまでの音の差があるならやろうよ」と。音を聴いたらデザイナーも企画担当も「このコンセプトで商品化すると面白いんじゃないか」となり、ある程度、プロトタイプを作り上げたところで、マネージャー陣に聴いてもらったら「これ商品性あるよ」と言ってくれまして。
佐藤 1曲のファイルサイズが大きいハイレゾですが、メモリも当時だと大容量な128GBがコスト感としてもマッチしたタイミングでした。
田中 「NW-ZX」シリーズは、音楽好きの人やモバイル機器で高音質を追求する人に、どれだけ敷居を低くしてハイレゾ音源が楽しめる環境を導入してもらうかを考えて、ハードウエアだけではなくコンテンツも含めて簡単に買えるというところまでパッケージングできました。

―そして、さらに高価格帯の『NW-ZX2』が登場しました。
田中 最初は『NW-ZX1』の後継機種という位置付けで考えていたのですが、部品1つ1つを吟味して設計していった結果、大きな進化を出すことができました。そこで置き換えではなく、価格レンジの違うモデルとして出すことにしました。そういう意味で『NW-ZX2』と『NW-ZX1』は併売する形になりました。これらは単純な上位モデル下位モデルという関係ではなく、音の性格・性質が違うんですね。『NW-ZX1』はポップスやロック、エレクトロニカなどと相性が良いのですが、『NW-ZX2』はジャズとかクラシックも楽しめるような音作りを意識したところはあります。
佐藤 『NW-ZX1』はアルミ削り出しシャーシを使っているのですが、音質は基板上のオーディオ部品やそのレイアウトとかで決まるなあと思っていたところ、シャーシに入れると音がガラっと変わったんですよ。『NW-ZX1』の完成後にもシャーシを他の材質で作ってみたりして、シャーシを追求することで音はもっと良くなるということがわかってきたのでいろんな金属材質に変えたもので実験した結果、『NW-ZX2』は銅のプレートを中に入れて、アルミフレームを採用する、というところにいきついたんです。『NW-ZX1』はスピード感をストレートに出すジャンルに向いているクールな音なんですけど、『NW-ZX2』はスピードをキープしたまま、アコースティックサウンドはあたたかく聴こえるリッチなトーンですね。どっちが好きかというと、好みによるところがありますね。

―ソニーには音響特性に優れる素材を研究・分析する部署があると聞いたことがあるのですが。
佐藤 製品を開発している時の、音の傾向は開発メンバーが聴き分けるのですけど、その差が何からきているのかの分析を、そのような社内組織と協力してやったりもします。

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▲田中氏も佐藤氏も音楽好き、オーディオ好きが高じてソニーに入社。ハードウエアとしてのガジェットが好きなユーザーのみならず、純粋な音楽好きやアーティストでさえも高い価値を認める音楽性の高いウォークマンを作っている。

 

古くからのウォークマンファンからの期待も熱い

―「NW-ZX」シリーズはGoogle Playが使えることで、浸透しつつある様々な音楽配信サービスのアプリなども導入できるというメリットがあると感じました。
田中 Androidを採用した理由の順位付けとしては、WiーFiを使ってホーム機器とのネットワーク連携をするための手段、プリインストールしているmoraでハイレゾ曲の直接ダウンロードできる、そして他のアプリを新規導入できるといったところですね。
佐藤 ハイレゾ音源への対応と平行して「高音質化」ということを重視して設計しているので、ストリーミング再生においても効果があります。圧縮音源も 「NW-ZX」シリーズで聴くとこんなに音が良かったんだと再発見ができます。CDを非圧縮のFLACにしたトラックもそうですね。びっくりするほどの音が入っていることに気が付きます。

―市場の反応はいかがですか?
佐藤 モバイルの可搬性に加え、これまで以上に高音質を追求したのが「NW-ZX」シリーズです。発売前、ネットを見ると「12万円は高すぎる」という声が多かったですが、試聴できる環境が増えてくると「これは価値あるね!」とポジティブな意見が増えてきたんですよ。高音質を求めて材質などにこだわったことでこの価格になってしまったけれども、「このクオリティならお金出せる」という評価をいただくことができました。

―どのようなターゲット層をイメージしていましたか?
田中 ピンポイントで絞ってはいないんですよ。ウォークマンがハイレゾの入口となるということは考えていました。必ずしもすでに多くのハイレゾ音源を収集しているというお客様だけではなく、CD中心で、ウォークマンからハイレゾを始められるお客さまもいらっしゃいますし、その中でも、モバイル環境で最高の音楽体験を求める方におすすめしたいのが「NW-ZX」シリーズです。

―ここまでの完成度を持ったモデルを作られて、それでも課題に感じている部分はありますか?
田中 やっぱりウォークマンですから重く大きくしたくない部分はありますね。またウォークマンは連続再生時間が長いということはとても好評でして、音質とバッテリーの性能を保ちつつ、いかに小さくするかということは考えています。
佐藤 ただ最近はフラッシュメモリを使っていることで音楽プレイヤーは小さくなりましたが、昔からのウォークマンを知ってらっしゃるお客さまの中には「音を追求してこれくらいのサイズならアリですよ」という方が何人もいらっしゃるんですよ。そういうご意見をいただけること、そして今でもウォークマンに興味を持っていただいていることが、本当にうれしいですね。

 

取材・文/武者良太 撮影/江藤義典

※『デジモノステーション』2015年10月号より抜粋

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