【インタビュー】復活のTechnics。超高級ホームオーディオの目指す処とは?

2015_002_001

新生Technicsサウンドの指針となるReference System
Technics
R1 Series
実勢価格:170万6400円/90万5040円/145万5840円(SE-R1/SU-R1/SB-R1×1本)

パワーアンプ「SE-R1」とプリアンプ機能搭載のネットワークプレイヤー「SU-R1」、フロア型スピーカー「SB-R1」の3点構成。ハイエンドオーディオに再参入を果たしたTechnicsの旗艦機であり、新開発のフルデジタルアンプ「JENOエンジン」や周波数位相特性を補正する「LAPC」など、最新技術が惜しみなく導入されたシステム。

 

世界の音楽好きを魅了したオーディオブランド「Technics」。いちど終息したが数年のブランクを経て復活を遂げた。しかも上位モデルは一式500万円というハイエンド路線だ。復活の狙いはどこにあるのか、Technics一筋の熱き担当者に訊いてみた。

2015_002_002
Team Technics
上松泰直

 

かつてのTechnicsのサウンドを再現したわけではありません

Technicsは、一度終息している。だが、その数年後の2012年頃から「自発的に有志が集まり、再始動に向け動き始めた」(上松氏)という。そしてさまざまな社内での調整を経て、復活を宣言したのが、昨秋のこと。再び世界に誇るピュアオーディオブランドとしてやっていこう、とチーム一同決意を新たにしたという。

その決意の表れとして最初にリリースされた製品が、ブランドイメージを象徴するリファレンスライン「R1」シリーズと、普及ラインという位置付けの「C700」シリーズだ。両シリーズの音はそれぞれに個性があるが、音像定位の確かさと音場の奥行き感という共通項がある。スピーカーを例にとれば、同軸平板ユニットを採用した効果と、点音源・リニアフェーズというサウンドコンセプトの効果が現れていると言える。

この新生Technicsの音は、同社の先端技術を駆使した新しいもの。だが、どこかにかつての“らしさ”も忍ばせる。上松氏は「以前は技術至上主義的な傾向がありました。先端の技術を搭載して、どうだ! という感じだったことも否めません。でも今は、最終的に音楽がどんな風にユーザーの心に響くのか、を重視しています。かつての音を再現したわけではないんです」と新しいアプローチを行なっていることを明かす。だが、「昔からのファンの方々には、どこかにDNAが残っているともよく言われます。音の血統が受け継がれているんでしょうね」と分析。

実際に聴いてみると「定位の確かさ」と「音場の豊かさ」を強く感じる。本来の音を可能な限り正確に、低域から高域まで得失なく再生するその姿勢が感じられるのだ。例えば、マイケル・ジャクソンの『スリラー』のように幾度となく聴いた曲を再生しても、新たな発見がある。それは、技術力もさることながら、そこに揺るがぬ“音哲学”が封じ込められているからだろう。

まずはピュアオーディオとしての一歩を踏み出した同ブランドだが、やはり絶大な支持を得ていたターンテーブルの復活を望む声は多い。しかしこの点については「Technicsが出すとしたら、完璧なものを送り出さなければいけない。一度、閉じたものを再始動するのは、並大抵のことではありません」(上松氏)と難しさを語る。

今後の目標について訊ねると、上松氏は「長く続けること」と即答した。一度終息した時に顧客から届いた感謝の手紙は、デスクの引き出しに入れているという。ときおり読み返しては、今度は終わらせないと決意を新たにするのだという。このエモーショナルな部分が、実は新生Technicsの肝なのだろう。

2015_002_004
▲往時のTechnicsを彷彿とさせる、象徴的なビジュアルが、大きなアナログ針メーター。最新のパワーアンプ、プリメインアンプでもこのデザインがしっかりと継承されている。

2015_002_005
▲新開発のフルデジタルアンプ「JENOエンジン」により、デジタルオーディオ特有の波形歪み(ジッター)を低減している。細部まで芯の通った設計思想がTechnicsらしさと言える。

2015_002_006
▲ダイレクトドライブの時代を創出したターンテーブルの代名詞「SL-1200」シリーズ。いまなおクラブのDJブースで見かけるほど、絶大な支持を集めている。

 

【オーディオ評論家 海上忍が聴いた】
“かつて”のTechnicsと“今”のTechnics
2015_002_007

筆者にとって初めてのTechnics体験は、少年時代に近所のオーディオファンの家で聴いた『Technics 7』だった。ボーカリストがそこで歌っているかのように感じた。その定位の確かさが、リニアフェーズ理論に裏付けられた設計によるものと知ったのは後のこと。まさにそのときの感覚を今回の「R1/C700」シリーズの音で思い起こされた。

とは言え、弦楽器の音の輪郭やボディ感、ドラムブラシの細やかさはデジタル時代のもので、明らかな変化と進歩を感じさせられる。これでターンテーブルが登場すれば、いよいよブランドの完全復活と言えるだろう。もちろん製造設備などの点で難しさはあるのだろうが、それでもなお、期待せずにはいられない。

 

取材・文/海上忍 撮影/江藤義典

※『デジモノステーション』2015年10月号より抜粋

関連サイト
Technicsブランド紹介ページ