ついに議論が始まった次世代通信5Gのゆくえ

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最新モバイル事情の疑問にケータイジャーナリスト石野純也が答える「ただしいMOBILE市場の歩き方」。東京オリンピックが開催される2020年に合わせ、次世代通信方式の「5G」が導入される見込みだ。現状ではどのような技術が考えられているのか。その全貌を見ていこう。

何に使うべきかの議論が始まった次世代通信5G
第4世代(4G)の通信規格である「LTE Advanced」が、普及の兆しを見せている。2つの周波数を足し合わせるキャリアアグリゲーションは4Gの要素技術の1つで、ドコモのスマホは夏モデルから対応を開始。auやソフトバンクも既にキャリアアグリゲーションを実施しており、4Gは導入済みだ。こうした中、4Gの“次”として開発がすすめられているのが、第5世代(5G)の通信方式だ。商用化は2020年を目指しており、ドコモは東京オリンピックに合わせて、5Gを開始する目標を打ち出している。4G同様、世界各国での導入が期待されており、現在は仕様策定の前段階。関連各社が、どのような技術が有望かを検討しているところだ。

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▲NTTドコモが9月15日に発表した「PREMIUM 4G」のサービスは、3つの周波数帯を束ねて下り最大262.5Mbpsを実現。『iPhone 6s』『iPhone 6s Plus』も対応する予定だ。

5Gの仕様策定自体はまだ始まっていないため、どのような技術になるか未知数なところが多い。一方で、世界各国の通信事業者、通信機器ベンダーの思惑はおおむね一致している。ドコモのCTO(最高技術責任者)、尾上誠蔵氏も「他の通信事業者と話しても大体同じ話になって面白くないが、これは逆に良いこと。標準化の前段階がうまくいっている」と語る。大きな方向性としては、4Gよりも速度や容量を上げ、遅延を小さくすることを目指している。また、「省電力とハイパフォーマンスを1つの技術でカバーするのが、大きなチャレンジ」(同)になるという。

とは言え、現状の4Gでも、スマホであれば十分快適に利用できる。むしろ、場所によってはダウンロードの速度に、端末の処理速度が追いついていないほどだ。5Gはどのようなシーンで求められるのか。先の尾上氏によると、技術が先行していた3Gや4Gの時とは異なり、5Gでは「エコシステムを考え、それに必要な技術はどうかという話になっている」という。つまり、今のLTE Advancedでは出来ないことを可能にするための通信技術が、検討されているということだ。

高い周波数帯を有効に使って効率化を図る
速度を上げ、容量を増やしていけば、動画などの大容量通信が可能になる。現状でもモバイルでフルHDの配信は行なえるが、これが4Kを超えるとやはり十分な帯域が足りない。ユースケースという点では、IoTの普及も5G導入の目的と言われている。携帯電話のネットワークにつながる機器が今の数倍、数十倍に増えたとき、3Gや4Gだけではそれらをさばけないし、機器同士のリアルタイムな通信を考えると、遅延は今より小さくする必要がある。

そのため、5Gでは、より高い周波数で、基地局を密に設置していくことが必要になる。どの周波数を使うのかは確定してるわけではないが、現状の4Gよりはるかに高い周波数帯を使った実験も、実際に進められている。たとえば国内では、ドコモとエリクソンが15GHz帯を使い、4.5Gbpsの超高速通信に成功した。4GではUQコミュニケーションズやワイヤレスシティプランニングの2.5GHz帯が最も高い周波数帯だが、それよりはるかに高い15GHz帯で、速度や容量を上げているというわけだ。

また、ドコモとノキアは、さらに高い70GHz帯での実験も行なっている。ただし、周波数が高くなればなるほど、障害物に弱くなる。3Gや4Gでも、プラチナバンドと呼ばれる800MHz帯や900MHz帯が重宝されていたのは、そのためだ。今よりはるかに高い周波数帯を使えば、それだけ端末に電波を届けるのは難しくなる。そこで、端末に向けたピンポイントの電波を照射する、ビームフォーミングという技術も合わせて導入が検討されている。ドコモとノキアの実験でも、このビームフォーミングが活用されていた。通信のやり取りをするアンテナを増やし、容量を上げる「マッシブMIMO」という技術も実験が進んでいる。

高い周波数帯に新技術を導入するだけでなく、既存の周波数帯を有効活用する技術も開発が進められている。こうした技術の合わせ技が、5Gなのだ。5Gは、導入の動きが本格化する2020年に向け、その姿を具体化させていくはずだ。

文/石野純也


石野純也プロフィール
出版社勤務時代に数々のケータイ関連誌を立ち上げた後、ケータイジャーナリストへ転身。近書は電子書籍「ソーシャルゲームの最新トレンド!」(KADOKAWA)。雑誌版デジモノステーションにて「ただしいMOBILE市場の歩き方」を連載中。

※『デジモノステーション』2015年10月号より抜粋

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