アニソン×ハイレゾがブームな訳を3名の仕掛け人に聞いてみた

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ダウンロードランキング上位を占めるアニソンは、ハイレゾブームを牽引する立役者。クラシック、ジャズと並ぶ一大ジャンルに上りつめたきっかけは? ハイレゾ市場でアニソンが支持される理由とは? 3名のハイレゾ仕掛け人が、ヒットのワケを紐解く!

仕掛け人 1
音楽プロデューサー
佐藤 純之介
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▲アニソンに特化した音楽レーベル・ランティスの音楽制作を担う、制作会社アイウィルのプロデューサー。年間300曲以上の制作に携わり、アニメ『ラブライブ!』のハイレゾ楽曲など、数々のヒット作品を手がけている。

仕掛け人 2
オーディオライター
野村 ケンジ
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▲ハイレゾ市場へのアニソン普及を推し進める、オーディオライター。『ラブライブ!』楽曲でアニソンのハイレゾ配信スタートを持ちかけた功労者であり、現在でもランティスのハイレゾ配信のスーパーバイザーを務めている。

仕掛け人 3
e-onkyo musicディレクター
黒澤 拓
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▲ハイレゾ音源配信サイト「e-onkyo music」ディレクター。いち早くハイレゾ市場におけるアニソンの可能性を見出し、2013年から配信スタート。その後も各レーベルに働きかけ、配信タイトルの拡大に努めている。

 

いかにして歌詞を届けるか追求した結果ハイレゾに

――アニソンは、ハイレゾ市場を代表するヒットジャンルだと言われています。まずは現状についてお聞かせください。
黒澤 「e-onkyo music」の場合、全配信楽曲におけるアニソンの比率が10%弱です。にもかかわらず、全体の売上に占めるアニソン比率は15%に達しています。ユーザーをがっちりつかみ、確実に売れているジャンルと言えるでしょう。
――ヒットのきっかけは、佐藤さんが手がけた『ラブライブ!』の楽曲群だそうですね。
野村 佐藤さんを取材した際、『ラブライブ!』のマスター音源を聴かせていただき、「これは絶対にファンが喜ぶ」と思いました。そもそもアニメファンは、BDで作品を視聴します。BDの音源は48kHz/24bitで収録されているので、スペック的にはCDよりも優れているんですね。普段BDでアニメを観ている方なら、CDとの違いがわかるのではないかと思いました。
佐藤 そもそも今は、アニメ自体がブームを迎えています。年間190本近いアニメが作られているので、その中で結果を残すには優れた音楽が必要不可欠。中でも、アニソンは歌詞が重要です。作品を観た方に「あの話数のあのキャラの気持ちを表現した歌だ」とわかっていただくために、どうやって声を届けるか。そこを追求していくうちに、いいフォーマットで作ってみようと思うようになりました。中でも、『ラブライブ!』はハイレゾに適したタイトルでした。例えばAKB48のようなグループは楽曲でメッセージを届けるため、ひとつの塊で個性が出るような音の作り方をします。でも『ラブライブ!』は、9人それぞれの個性を聴かせるのがコンセプト。3人ずつのフォーメーションもあります。これをステレオで体感してほしいと思い、ハイレゾ音源のリリースに踏み切りました。
野村 オーディオマニアにも注目してもらうため、2013年10月26、27日のヘッドフォン祭りで発表したんですよね。あれがアニソンハイレゾ記念日です。
黒澤 ユーザーさんにも「新しいことが始まる」と感じていただけたのか、一気に火がつきました。2週間で1万ダウンロードを達成したほどです。

フォーマットに合わせたこだわりの音作りを

――では、ハイレゾ音源はなぜアニソンファンに好まれるのでしょうか。アニソンとハイレゾの親和性についてお聞かせください。
佐藤 アニソンは基本的にテンポが速いですよね。そしてイヤホンで楽しむユーザーが多いのも特徴です。このアニソン×ハイレゾ×イヤホンの相性が良いんです。というのも、クラシックやジャズに適した高級オーディオでアニソンを再生すると、もっさり聴こえてしまうんですよ。これはスピーカーの構造に起因します。高音、低音とスピーカーが分かれているので、音の伝わるスピードが違うんです。ゆっくりした曲だとその微妙なズレが膨らみとして気持ちよく聴こえますが、アニソンのようにテンポが速いと高音と低音にズレが生じてカッコ悪く聴こえてしまうんですね。でも、イヤホンやヘッドホンで聴くと、耳までの距離が近いのでタイムラグが生じません。ひとつひとつの音が分離してはっきり聴こえますし、僕らが細かくこだわって作っている部分がしっかり伝わります。
野村 それに、アニソンにはハイテンポな楽曲だけでなく、劇伴と呼ばれるサウンドトラックもあります。弦楽器を使った曲も多いのでハイレゾのほうが映えますし、聴いているだけで映像も思い浮かびます。
――ハイレゾ配信が一般的になり、作り手の意識も変わりましたか。
佐藤 人によりますね。ハイレゾは大は小を兼ねない世界。CDはCDで気持ちよく聴こえる工夫が必要ですし、オーディオにこだわる方に対してはスペックを最大限にいかした音を届けたいものです。でも、ハイレゾに懐疑的なエンジニアもいて、そういう方はCDを前提にした音作りをします。それをハイレゾフォーマットで出しても、魅力ある音源にはならないように思います。
野村 そこは重要ですよね。とりあえず音源があるから出してしまおうというケースも実際ありますから。
佐藤 自分の場合、サントラにもこだわっています。例えばアニメの現場に納品する音源は、テレビで流れた時の耳触りを考え、SEやセリフが乗りやすいよう隙間を作っています。CDは単体の楽曲として成立するようミックスを変えていますし、ハイレゾはさらにマスタリングも変えています。
黒澤 こうしたこだわりは重要ですし、売り上げにも反映されます。配信サイトでは、どのようなプロセスで作られた音源なのか、ユーザーさんに対して丁寧に説明するよう心がけています。作り手の誠意を伝えたいですから。
佐藤 そもそも僕がハイレゾ配信に踏み切ったのは、1曲あたりの音楽の価値を高めたいという思いがあったから。サブスクリプションとの差別化を図りたい。せっかく良いオーディオを持っている方がいるなら、そのシステムに見合う音源を作りたい。その結果、アーティストにも還元されれば言うことないですよね。
野村 僕も親戚と話していて、20年後に今の小学生が音楽を聴き続けているのか疑問を感じました。定額配信時代に1曲単位で売れる音源をきちんと見据えることが重要です。
佐藤 だからこそ、これからも新しいフォーマットにどんどん挑戦していきたいです。
――今後のさらなる市場拡大に向けて、課題があればお聞かせください。
佐藤 ハイレゾはまだまだニッチな市場です。特に女性ユーザーはまだ少ないので、今後は女子を取り込んでいきたいですね。
黒澤 配信サービス側も、UIをわかりやすくするなどして女子のハードルを下げていく必要があります。野村 僕が望むのは、ハイレゾをハイレゾと呼ばない時代。そのためには音楽業界だけでなく、オーディオ業界の姿勢も重要です。「ハイレゾと名乗れば売れるだろう」という考えでは、いつか足を引っ張られてしまいます。そうならないよう、市場がいい形で広がることを願います。

佐藤純之介が選ぶ絶対に聴いてほしいアニソン!
fhána
ワンダーステラ
価格:1728円 Lantis
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ボーカル・towanaの伸びやかなハイトーンボイスが冴える『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!』主題歌。「メンバー自身でミックスまで手がけ、一から十まで作り上げている珍しいユニットです。だからこそ余計な情報が入らず、透明感のある純度の高い音楽が作れる。その点をぜひ聴いてください」(佐藤)

野村ケンジが選ぶ絶対に聴いてほしいアニソン!
TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
trinity heaven7:MAGUS MUSIC REMIXES TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
価格:2700円 avex pictures
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『トリニティセブン』の主題歌、劇伴からセレクトされた全12曲をリミックス。「音楽再生のリファレンスとして使えるほどの、世界トップレベルのクオリティ。ミックス、マスタリングまでこだわり抜いているため、CDと聴き比べるとマスタリングの解釈の違いを楽しめるぐらい音の特徴が出ています」(野村)

黒澤拓が選ぶ絶対に聴いてほしいアニソン!
ChouCho
secretgarden
価格:5184円 Lantis
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『ガールズ&パンツァー』主題歌、『翠星のガルガンティア』EDテーマに加え、ゲーム主題歌やオリジナル楽曲などを収めた気鋭ボーカリストの2ndアルバム。「キャッチーな楽曲が揃ったアルバム。生音っぽい作りなので、本来ジャズやクラシックが好きな私の耳にもメロディがスッと入ってきます」(黒澤)

 

取材・文/野本由起 撮影/江藤義典

※『デジモノステーション』2015年10月号より抜粋

関連サイト
e-onkyo music