同じ端末が同じタイミングで登場、iPhoneがキャリア間競争を加速させる

最新モバイル事情の疑問にケータイジャーナリスト石野純也が答える「ただしいMOBILE市場の歩き方」。毎年の恒例行事になりつつある、新しいiPhoneが発売された。今回はこの端末の特徴をおさらいしながら、iPhoneを取り巻くキャリア間の競争環境について解説していく。

外観はほぼそのままで中身を大幅に刷新
新しいiPhoneが、発売された。iPhoneは2年に1回のフルモデルチェンジを行なうのが恒例で、今年はマイナーチェンジの年に位置付けられる。発表されたのは『iPhone 6s』と『iPhone 6s Plus』。CPU、カメラが刷新され、パフォーマンスや画質は上がっているが、外観は先代の『iPhone 6」『iPhone 6 Plus』とほぼ同じだ。

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▲処理能力の高い新CPUの「A9」を採用し、カメラも1200万画素に進化。下り最大300Mbpsで、幅広いLTEの周波数に対応している。静電容量式と感圧式を組み合わせた「3D Touch」を採用したのも特徴。

目玉となりそうな機能は、静電容量式のタッチパネルに、感圧式の動作を加えた「3D Touch」。従来のようなタッチ、フリックに加え、押し込む操作が可能になり、ユーザーインターフェイスに新たな要素が加わった。アイコンを強く押すとメニューが表示されるなど、PCにおける“右クリック”が加わった印象で、慣れれば、今までよりも手早く操作ができるようになりそうだ。新色としてローズゴールドをラインナップしていることから、女性層の取り込みも進んでいくだろう。

『iPhone 4s』以降、800万画素だったカメラも、1200万画素にパワーアップした。画像処理エンジンも刷新したことで、4K動画の撮影にも対応。画質自体も上がっており、カメラに強いiPhoneの地位はしばらく揺るがなそうだ。

通信機能として注目したいのが、下り最大300MbpsのLTE Advancedに対応したことだ。これは、LTEの「カテゴリー6」と呼ばれるもの。2つの周波数を組み合わせて利用する「キャリアアグリゲーション」を行ない、最大で40MHz幅の周波数を使って、LTEで通信を行なう。

この『iPhone 6s』、『iPhone 6s Plus』は、従来どおり、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社が取り扱うことになる。近年では同じ人気端末を3社同時に発売することで、キャリア間の競争が激化しているが、今年は、その傾向に拍車がかかっている。

キャリア間の競争を激化させるiPhone
口火を切ったのはauだった。同社は、従来より基本使用料が1000円安い、月額1700円の「スーパーカケホ」を導入。1回5分以内という制約を設け、料金を安く抑えた。iPhone以外の端末でも利用は可能だが、3社横並びのiPhoneに合わせ導入することで、告知効果の最大化を狙った格好だ。

このスーパーカケホにソフトバンクが追従。auと同額の月額1700円で、「スマ放題ライト」を開始。そしてドコモも、この2社と同じ月額1700円の「カケホーダイ ライトプラン」を導入した。

もっとも、ドコモはすでにネットワークで他社を牽制している。同社はiPhoneの発表に合わせ、LTE Advancedを下り最大262.5Mbpsへ高速化することを明らかにしている。増速は、東名阪が中心となる。ドコモがメインで使用している2GHz帯と、東名阪で高速通信のために整備している1.7GHz帯のキャリアアグリゲーションで、実現しているものだ。

元々エリアの広い2GHz帯に加え、1.7GHz帯も都市部では順調にエリアが拡張中。つまり、幅広い場所で快適な通信が行なえるということだ。これは、新しいiPhoneを使う上で大きなメリットになる。au、ソフトバンクとも、通信速度については従来のまま。auは『Galaxy S6 edge』に合わせて導入した下り最大225Mbpsが、ソフトバンクは夏モデルと同時に開始した187.5Mbpsが最高になる。あくまで最高値で体感速度は異なるものの、数字上でのネットワーク競争については、ドコモが一歩リードと言えそうだ。

このようにiPhoneはキャリアの競争を促進する効果がある。“同じ端末”が、“主要全キャリア”から同時に販売されるからだ。今回は、特に料金と通信の2つで、各社が激しい火花を散らしている。またSIMフリー版も同時に発売される。端末の検証が進めば、MVNO各社も何らかの手を打つ可能性はあり、市場はさらに乱戦模様になりそうだ。

文/石野純也


石野純也プロフィール
出版社勤務時代に数々のケータイ関連誌を立ち上げた後、ケータイジャーナリストへ転身。近書は電子書籍「ソーシャルゲームの最新トレンド!」(KADOKAWA)。雑誌版デジモノステーションにて「ただしいMOBILE市場の歩き方」を連載中。

※『デジモノステーション』2015年11月号より抜粋

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