スマホ向けチップセットはクアルコムが独走!CPUでわかるスマホの性能

モバイル事情の疑問にケータイジャーナリスト石野純也が答える「ただしいMOBILE市場の歩き方」。スマホは、小型のコンピュータ。PCと同様、その性能を左右するのが、CPUを含むチップセットだ。知ってるようで知らなかったチップセットのキホンを解説していく。

性能別に異なるチップクアルコムがシェアを握る

スマホは、従来型の携帯電話よりも、コンピュータに近い存在だ。それもあって、CPUやメモリなど、携帯電話ではあまり注目されてこなかったパーツも、重要になってきた。端末選びに際して参考にしなければならないのはもちろん、メーカーが作る端末の完成度や業績までもを左右するものだからだ。中でも、頭脳と言えるCPUは、スマホの性能を決定付けるもので、各メーカーとも端末のアピールの材料にしている。

現在の主流は、システムオンチップ(SoC)と呼ばれる方式で、1枚のチップの上に、CPUだけでなく、グラフィック性能を左右するGPUや各種インターフェイスが載せられている。スマホの肝でもある通信を処理するモデムが、1つのチップ上にまとめられることもある。PCの分野で覇権を握っていたのはインテルだったが、スマホでは、クアルコムのシェアが圧倒的に高い。

「Snapdragon」と呼ばれるシリーズがそれで、AndroidやWindows Phoneの多くに搭載されている。現状では、ハイエンド向けが800番台、ミッドレンジ向けが600番台か400番台、ローエンド向けが200番台と、性能に応じた数字が付けられており、十以下の位が大きいほど、高性能なSnapdragonになる。たとえば、ハイエンドスマホである『arrows NX』には「Snapdragon 808」が採用されているのに対し、ミッドレンジの『arrows Fit』では「同410」を採用。処理能力を司るCPUのクロック周波数やコア数が違ったり、GPUの性能が異なったりと、価格帯別に様々なチップセットが用意されているというわけだ。

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▲『arrows Fit』には5インチの有機ELディスプレイを搭載。手になじむようにつくられた幅69mmのボディを採用し、片手で操作しやすいようになっている。

クアルコムは元々、auの3Gに採用されている通信方式である、「CDMA 2000 1X」などを主導したメーカー。LTEの特許も数多く取得しており、通信技術には定評がある。このモデムの性能をいかし、コンピュータの頭脳であるアプリケーションチップを組み込んだSnapdragonを開発。スマホの普及とともに、一気にスタンダードに上りつめた。

自社製のチップを開発するメリットとは?

一方で、最近では、より安価なチップセットメーカーも台頭しつつあり、クアルコムの地位を脅かしつつある。採用が多いのが、台湾メーカーのメディアテック製のチップ。当初は新興国が中心だったが、最近では、日本でも、価格を抑えたMVNO向けのSIMフリースマホに採用されるケースが増えてきている。

また、チップセットを、自社で開発しているメーカーもある。代表例は、あのアップルだ。iPhone、iPadに採用する「A9」「A9X」などのチップは、すべて独自に開発したもの。現在ではファブレスと呼ばれ、設計だけを行ない、工場を持たずに製造を外部に委託する方式が主流だが、アップルもこれにならっている。同様に、サムスンも自社でチップセットを設計、製造できるメーカーとなる。日本で発売された『Galaxy S6』『Galaxy S6 edge』に採用される「Exynos」がそれだ。

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▲『Galaxy S6』は、厚さ約6.8mmの薄さでありながらWQHD解像度の有機ELディスプレイを搭載。メモリは3GB、ストレージは32GBと必要十分の性能だ。

自社開発は技術力がいり、コストがかさんでしまいがちだが、メリットもある。アップルのように、ソフトウエアからハードウエアまで一貫して作れるメーカーは、独自性が出しやすい。ソフトウエアとチップセットの性能の歩調を合わせやすいことも、iPhoneの使い勝手が良いと評される一因になっている。

また、夏モデルから採用されている「Snapdragon 810」は発熱の問題が解決できておらず、冬春モデルではこれを避けるメーカーも続出した。かつてはクアルコムのチップセットの供給が追いつかず、十分な数の端末を製造できない問題も起こった。シェアが大きいぶん、1社に頼っているとトラブルが起こった際に、回避するのが難しくなる。結果として、端末の販売動向や業績にまで影響を与えることもあった。チップセットは、まさにスマホの屋台骨を支える存在なのだ。

 

文/石野純也


石野純也プロフィール
出版社勤務時代に数々のケータイ関連誌を立ち上げた後、ケータイジャーナリストへ転身。近書は電子書籍「ソーシャルゲームの最新トレンド!」(KADOKAWA)。雑誌版デジモノステーションにて「ただしいMOBILE市場の歩き方」を連載中。

※『デジモノステーション』2015年12月号より抜粋

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