電力小売の全面自由化って? 東電の火力発電所で“電気の上流”を見せてもらった

2016年4月1日、電力の小売が全面自由化されます。電力小売全面自由化とは、ざっくり説明すると、オフィスや工場ではなく、家庭向けなどの小規模なユーザーも、電気を購入するための電力会社を自分で選べるようになること。例えばこれまで関東地方に住んでいる人は東京電力から、九州に住んでいる人は九州電力から、と電力会社は決められていましたが、来春からは、新規参入の電力会社も含め、自分で電力会社を選べるようになります。

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▲東京電力の「はじまる!電力自由化」にわかりやすくまとめられています。

DIGIMONO!的にわかりやすく言えば、スマホを契約するイメージに近いかもしれません。これまではau、DoComo、ソフトバンクと、ほとんどの人は、この3社のどこと契約するかは自分で選んでますよね? 値段が高いか安いか? 通信環境が高速かどうか? 欲しい機種があるかどうか? 通信プランがちょうどいいかどうか? 家族がみんな使っているか? それとも元々昔からずっと使っているから?──選ぶ理由はさまざまです。

そこにMVNOサービスが登場し、格安の通信プランやSIMカードを販売して、これまでの通信業界の商慣習などに風穴を開け始めていますが、異業種を含め、電力業界にも多くの新電力会社が参入を表明。2016年4月1日から電気を売ります! と続々と宣言しているのです。

これからは電力会社もこれと同じように自分で選ぶ時代がやってきます。とはいえ、その電力自体がどうやって作られているのかって、ほとんどの人が知らないはず。そこで今回、その小売や送電よりさらに上流にある発電所はどうなっているのか? 東京電力の川崎火力発電所で見せてもらいました。

ちなみに東京電力の川崎火力発電所は電力の小売が全面自由化後、いわゆる発送電小売がすべて分社化されるため、東京電力フュエル&パワーという社名に変更された発電部門所有の発電所になります。今後、東京電力だけでなく、さまざまな新電力会社にも電力を供給できるようになります。

そもそも東京電力の川崎火力発電所は、昭和36年に発電設備1号機が石炭火力で創業を開始(17万5000kW)し、高度経済成長時に主に京浜工業地帯などの発展を支えてきました。その後、環境への配慮からエネルギーをナフサ、さらには現在のLNG(液化天然ガス)に転換していき、平成19年にそれまで40年以上に渡り運転してきた発電設備を刷新、省エネと二酸化炭素の発生が少ない火力発電所へとリニューアルしたそうです。2015年12月現在、4つの発電設備(このほかさらに1台がすでに試運転中、1台が今後稼働予定)が稼働する合計200万kWを生み出す発電所であり、これは一般家庭に換算すると約58万世帯ほどの電気を生み出しているとのこと。つまり、現在の発電設備は1台約50万kWほどで、創業当時から比較しても相当発電効率は高まっています。

といっても、いろいろな数字やら経過を並べられても、まったくイメージがわかないかと思うので、ここからは写真などで解説していきます。

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▲タービン建屋内の発電設備。奥に向かって3台、手前から1号3軸、1号2軸、1号1軸と並んでいます。軸とはガスタービンと蒸気タービンとで回す発電するための軸のことです。ちなみに、ひとつの発電機をガスタービンと蒸気タービンの2つを組み合わせて効率良く回す発電システムをコンバインドサイクル(MACC)発電方式と言います。

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▲発電設備の模型。上の写真の全体を小さく模したもの。まず左側の箱がガスタービン。LNG(液化天然ガス)を燃焼させることでタービンを回転させ、発電します。その時に発せられる熱は最大1500℃であり、当然排熱されますが、その排熱を再利用して生み出された蒸気を、その横にある蒸気タービンの原料として使用。高圧/中圧/低圧蒸気タービン3つをそれぞれ回します。つまり、ガスタービンと3つの蒸気タービン、4つのタービンで、1つの発電機を回して、発電しているのです。これ1台で約50万kW生み出します。

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▲三菱重工製のガスタービン。入り口でのガスの燃焼温度が最大1500℃であることから、このコンバインドサイクル発電設備自体を「1500℃級コンバインドサイクル」発電設備と呼びます。人の大きさと比較すると、そのサイズがいかに大きいか分かるはず。これ1台で約33万kW、つまり1台の発電設備の3分の2の電力を生み出す原動力に。

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▲三菱重工製の蒸気タービン。奥が高圧・中圧蒸気タービン設備でガスタービン設備の隣に合体するように設置され、こちらの半円部分は主に低圧蒸気タービン。3つの蒸気タービンで約17万kWの電力を生み出します。

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▲三菱電機製の発電機。ここで実際に各タービンから伝わったエネルギーを元に約50万kWの電気を生み出します。つまり、現在このタービン建屋内では、1号1軸、1号2軸、1号3軸、2号1軸の4台が実際に稼働しているため、合計で約200万kWの電力が生み出されています。ちなみにこの写真は2号1軸の発電機です。

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▲一方、タービン建屋の屋外、隣には巨大な建物に見えますが、この建物自体が排熱回収ボイラです。ガスタービンの排熱温度が600℃と高温のため、この排熱を利用し蒸気を作り、高圧/中圧/低圧蒸気タービンを回します。排熱回収ボイラの中間部分には脱硝装置を設けており、これによりNOx濃度を低減させ、最終的に煙突出口では約90℃にまで下げた状態で、クリーンに屋外へと排出しています。

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▲川崎火力発電所の俯瞰から見た模型図。中央の左側の建物が、上のさまざまな写真を撮っていたタービン建屋。左から1号1軸、1号2軸、1号3軸、さらに2号1軸の発電設備が入っています。ちなみに右のタービン建屋が現在建設中の2号2軸、2号3軸という発電設備。こちらは「1600℃級コンバインドサイクル」発電設備で、さらに発電効率の高い設備として、平成28年内に完成予定。タービン建屋屋外に繋がっているものそれぞれが排熱回収ボイラ。そこから煙突に繋がっています。

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▲ガスタービンの動翼は3段の動翼に分かれています。入り口の発熱が最大1500℃になるため、入り口に近い第1段、第2段動翼は特殊な耐熱コーティングが施されているため黄色く、一段ずつ温度が下がるため、第3段動翼では耐熱コーティングが不要です。

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▲日本はLNGを100%輸入に頼っているため、世界中から船で運んできています。ちなみに東京電力では中部電力と燃料の調達などについての業務を提携していくことをすでに表明し、エネルギー調達の大規模化・多様化を実現することで、少しでも低価格で可能とする努力を行っています。

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▲川崎火力発電所は発電所のある千鳥・夜光コンビナート地区工場10社に蒸気を供給している。これにより各工場がそれぞれに蒸気を作るよりも、年間で約2.0万kl(原油換算)の燃料と、約4.6万トンの二酸化炭素排出量を削減しています(2014年度実績)。

いかがでしたでしょうか? 実はこういった火力発電所が東京湾の周りに12施設、太平洋側に3施設、合計15施設も存在して、多くのオフィスや家庭に電気が供給されているんですね。これから電気を使う時、はたまた2016年4月1日以降に、新たな電力会社と契約する際には、こういった発電所で電気が作られているんだということを思い出してもらえると、電気をより大切に使おうという心がけにも繋がるのではないでしょうか?

 

文/滝田勝紀(編集部)

関連サイト

はじまる!電力自由化(東京電力)