最終奥義、デジタルのアナログ化【正しいデジタル終活術:第5回】

アナログなリストを定期的に更新していくといい。

インターネットとかスマホとかってなんだか怖い──普段からあまりデジタル機器を使わない遺族からすれば、デジタル遺品が残る容れ物は、奥底の見えない夜の海のような不可解さを感じる存在といえる。手に触れられる部分は心地良いかもしれないけれど、その回りにどんなリスクが潜んでいるのか分からない。この不可解な感じがデジタル遺品を取り巻く問題の本質的なところだと思う。最終回は、夜の海からデジタル遺品を水揚げする作業を解説したい。

鍵つきのデジタル遺品リストを作る

これまでみてきたように、デジタル遺品にはオフライン型とオンライン型があり、それぞれ異なる事情やリスクを抱えている。が、それは非デジタルの遺品も同じだ。運用中の金融資産や権利関係が複雑な不動産、スポーツクラブの会員権、価値がよく分からない膨大なコレクションなどを抱えたたまま亡くなる人は昔から大勢いる。それらはどうされてきたのだろう? 大抵は遺族が主体となって、ときに士業に相談しながら、その時代その地域にあった方法で処理してきたはずだ。遺族がいない場合は行政や大家さんが骨を折った場合もあるだろう。

とにかく、そこに遺品があると認識されれば、残された人が動いてくれる。金庫があれば、ひとまずは捨てずに保管してくれるだろうし、鍵を託しておけば中身を処理してくれる。きちんとバトンタッチさえされれば、大切なモノが夜の海を漂流することはなく、第1回で紹介したような悲劇はほぼ回避される。

デジタル遺品をバトンタッチするためには、デジタル遺品の一覧リストを印刷するのが手っ取り早い。これまで伝えてきたうちの「気づかれないと危険!」や「気づかれるのが望ましい」「できれば気づかれたい」に該当する持ち物を、オンライン型もオフライン型もまとめて表(または箇条書き)にし、必要なものはIDやパスワード(のヒント)なども添えておく。それに日付をつけて印刷し、一般銀行の預金通帳やパスポートなどと一緒に保管しておけばいい。これを1年に1回以上更新する。

自分が死んだとき、預金通帳やパスポートは優先して探される確率が極めて高く、それらと一緒に発見されれば「気づかれない」という第一にして最大の壁はクリアできる。そこにパスワードといった“鍵”のヒントも添えてあれば、「中身が見られない/触れられない」という壁もなくなる。また、残された人はこのリストを元に処理を進めることになるので、「墓場まで持っていきたい」や「できれば隠したい」項目がある場合は、それをリストから外すことが最大の防御になるだろう。

印刷後に契約したサービスや購入したデジタル機器はフォローできないが、そこは直近のメール履歴や現役で使っているモノの置き場所から見つけてもらうことを期待しよう。もしも通帳やパスポート自体が気づかれなかったら、それはもう諦めるしかない。一般の遺品と同レベルの見つけやすさが確保できれば良し、だ。あまりに手間を要する手段は負担になって定着しないので、自分なりに「それくらいなら大掃除のついでにやれるか」というくらいの現実的なラインで準備するのが重要だ。