ダイソンヘアドライヤーの本当の魅力は風量や温度やコンパクトさじゃない

羽根のない扇風機がドライヤーになった!?
持ちにくいけれど細やかな気配りが
行き届いたダイソンらしいプロダクト

4月27日の午後、渋谷・ヒカリエのホールには久しぶりにジェームズ ダイソン氏自らがプレゼンした新しいプロダクト「Dyson Supersonicヘアドライヤー」のお披露目に熱狂していた。海外からの記者も訪れており、ムービーカメラの台数も桁違いだ。

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ダイソンが今度は美容家電?どんなドライヤー?――日ごろドライヤーなど手にしないような男性諸氏が「すごい風量だ」「これはコンパクトで軽い」と口々に称賛している声が聞こえる。実際、速報記事やSNSなどで流れた感想などを見てみても、大風量かつ一定の温度で吹き出される風により、スピーディに乾くことを絶賛しているものがほとんどだった。

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ここであらためて「Dyson Supersonicヘアドライヤー」について、その特徴を紹介すると、羽根のない扇風機「エアマルチプライアー」で取得した特許技術により、モーター部が取り込んだ空気を3倍に増幅させ、高圧・高速気流を生み出して大風量の風を送りだすことに成功している。アタッチメントを着ける前の姿はまさに羽根のない扇風機そのもの。ドーナツ状になっていて、向こう側が見通せるドライヤーの形状に誰もが驚くことだろう。通常のヘアドライヤーに使われているモーターの8倍も速く回転し、かつ半分程度にまで軽量化したモーターを開発したことも大きなポイントだ。気になる音の点も「ハンドル部分にこのモーターを格納し、周囲に消音器を取り付けることで静音化させることができた」とダイソン氏は自信を持って語っていた。

さて、実際に使ってみた感想はどうか。日本メーカーのドライヤーの数々を手にしてきた身として最初に感じたのは「握りにくい」「ちっとも軽くない」ということだ。女性の手にフィットするように考えられた日本のものと比べると、まっすぐで太い形状は、まるでカラオケのマイクを握ったときのようだ。バランスは悪くないものの、618gの本体はけっこう重く感じる。

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風温の調節が4段階(78、62、45℃と冷風)に調節でき、「髪に近づけても熱くない78℃をキープ」ということもアピールポイントのようだが、発表会当日の実演者のように髪にかなり近づけて使った場合は熱さを感じる。最近のドライヤーの傾向として低温設定や、さまざまな温度帯に切り替えられるものが増えてきていることを考えると、ダイソンの温度コントロールがさほど優れているようには思えない。自分の好みとしては、標準(62℃)もしくは低温(45℃)で、マックスの風量というところだろうか。いずれにしても、温度だけでなく風量も3段階から調節できるため、好みや乾燥・スタイリングなどに合わせて使い分けられるのはいい。スタイリングのためのアタッチメントもマグネットでカチッと装着できて、風向きを変えるのも簡単だ。

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そしてここからが、今回のドライヤーの真骨頂。アタッチメントが手ぐしで乾かすとき用のノズルのほかに、ブラシでブローする際にピンポイントで風圧の高い風を送る「スタイリングコンセントレーター」と、カールやパーマヘア用の「ディフューザー」の3つ付属しているのだ。特に出色なのが、パーマヘア用のディフューザーで、風を均一に分散させてやわらかな風を送ることができるため、カールが伸びたり崩れたりせず、ふんわりと仕上がる。こうしたアタッチメントは日本の家庭用ドライヤーにはほとんどなく、サロンでたまにお目見えする程度。今回、日本で先行発売されているが、今後海外で展開するにあたって、カールしたスタイルや癖毛のような髪質が多い国に向けて、きちんと考えられていると思う。

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また、ドライヤー本体のことではないが、付属品として滑りどめのゴム(シリコン)製のシートが同梱されているところも心憎い。洗面台などに置いた時、コードを引っかけたりして床に落としてしまうことが多いのがドライヤーだ。このシートの上にドライヤーを置くと、しっかり安定してコードを引っ張ったくらいでは動かないのだ。120㎏の男性が上に乗っても壊れない頑強さを保っているとはいえ、愛着を持って長く大切に使ってもらうための施策がうれしい。

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最後にもう1つ。箱を開けると最初に出てくる黄色いカードには「はじめまして」の文字があり、「購入してくださってありがとう」のメッセージとなっている。ダイソンは顧客のことを“オーナー”と呼んでいる。一度購入した顧客をずっとファンにするための細やかな心配りにこそ、ダイソンの真の魅力があるのではないだろうかと、あらためて感じた。

 
文/神原サリー

かみはら さりー/新聞社勤務、フリーランスライターを経て、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、家電分野を中心に執筆や商品企画、コンサルティング等の仕事をしています。2015年2月、表参道に事務所兼「家電アトリエ」をオープン。