改めて考える『ダイソン V8』のデザインが変わり映えしなかった理由

ダイソン V8の魅力は
高性能化しつつ「変わらない」点にあり

ダイソンが新開発の「DDM(ダイソンデジタルモーター) V8」を搭載した新型コードレス掃除機『ダイソン V8』を発表した。5月27日に販売を開始する。

 

ダイソンが2016年5月27日に発売する『ダイソン V8』。冒頭の写真で製品を持つのは、コードレス製品開発部責任者のケビン・グラント氏だ。このダイソンV8と、2015年に発売された『ダイソン V6』とでは、見た目にはほとんど変化が見られない。しかし性能は着実に進化している。

「掃除からゴミ捨てまでトータルで使いやすい掃除機」に進化

発表直後の記事にもあったように、注目すべきは「ゴミの捨てやすさ」だろう。ダイソン V6までのクリアビン(ダストボックス)は、決して捨てやすいものではなかった。レバーを引くとフタが開くものの、シュラウド(サイクロン機構下部の網目部分)とクリアビンとの間にゴミが挟まったまま落ちないこともあったし、そんな場合はもう一度レバーを引いてクリアビンを取り外す必要もあった。

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サイクロン機構上部にある赤いレバーを引くと、サイクロン機構が上部に浮き上がる。さらに引っ張ると、クリアビン下部のフタが開いてゴミが下に落ちる。
サイクロン機構上部にある赤いレバーを引くと、サイクロン機構が上部に浮き上がる。さらに引っ張ると、クリアビン下部のフタが開いてゴミが下に落ちる。

しかしダイソン V8ではゴミ捨ての機構を刷新。サイクロン機構上部にある赤いレバーを思いっきり引っ張るとサイクロン機構自体が上部に浮き上がる。さらに引っ張るとクリアビンのフタが開き、ゴミが下に落ちるという仕組みになっている。シュラウドとクリアビンの間にゴミが挟まるということが物理的にほぼなくなるというわけだ。それだけではない。ゴム製のスクレイパーでシュラウドに付着したゴミをこそぎ落とす機構も備えており、わざわざブラシなどを掃除道具を駆使しなくてもシュラウドをきれいに保てるようになっている。

筆者も以前からダイソンのコードレス掃除機を利用しているが、このゴミ捨て機構は不満に感じる部分だった。ここが大幅に改善されたことで、「ゴミやホコリを掃除しやすい掃除機」というだけでなく、「掃除からゴミ捨てまでトータルで使いやすい掃除機」に進化したといえる。

バッテリー駆動時間がV6の最大約20分から約40分にアップしたこともうれしい点だが、やはりゴミ捨てのしやすさはかなり使い勝手の向上に大きく寄与するだろう。

風路設計を見直しや吸音材の工夫などによって、運転音も約50%低減したという。V6は甲高い音がしていたが、V8では高音が抑えられて耳障りな音がかなり抑えられている印象を受けた。

▲ダイソン V8のカットモデル。新開発のモーターを搭載し、風路設計も見直したことで運転音も低減。バッテリー性能も向上し、最大40分間の連続清掃ができる
▲ダイソン V8のカットモデル。新開発のモーターを搭載し、風路設計も見直したことで運転音も低減。バッテリー性能も向上し、最大40分間の連続清掃ができる

「“変わらなさ”が魅力」という、ダイソンのデザイン哲学

一つ不満を言うなら、「見た目に進化が感じられない」という点だろうか。ロングパイプとフロアクリーナーヘッドを採用した『Dyson Digital Slim DC35』を2011年に発売してから、デザイン面ではほとんど変化が見られない。国内メーカーがモデルごとに大幅にデザインを変えて「新奇性」を打ち出しているのに対し、ダイソンはぱっと見で新しさがなかなか感じられない。

ただし、自分でそう問いかけつつも、ある意味でこれはかなりナンセンスな指摘ともいえる。

ある家電量販店のコンシェルジェは「ダイソンは外車のようなもの」と語る。「同一メーカーの、端から見ると違いが分からないような最新モデルに3年ごとに乗り換えるように、ダイソンもその“変わらなさ”が魅力」だというのだ。

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一度デザインが完成したと判断したら、むやみやたらにそのスタイルを変えようとはしない。そこにあるのは「機能美」という発想だ。もちろん、筆者はダイソンのコードレス掃除機のデザインを手放しでほめているわけではない。トリガーを引いたときだけ稼働する機能デザインは個人的に好きではないし、本体が重くて手元に負担がかかる点もフロア掃除には不利だ。

しかし、一度作り上げたデザインにむやみやたらと手を入れるのではなく、自信を持って機能や性能“のみ”をブラッシュアップしていく姿勢こそ、日本メーカーに足りないところなのかもしれない。

日本メーカーのいいところは、「変化し続ける」点だ。しかし「○×年に出たモデルのデザインが最高だったのに、もう二度と出てこない」といったことにもなりかねない。「機能美」に対する考え方が揺らぎ続けているのか、「変化しないこと」に対して臆病になっているのか。

昭和の高度経済成長期も今や昔。より多機能・高機能化すれば、もしくは同じ機能で小型軽量化すれば売れるという時代はとうに過ぎ去った。変革し続けることは重要だが、いくら消費者に文句を言われようと、「うちの(機能も含めた)デザインはこれなんだ」と言い切れる強さが、今こそ日本のメーカーにも欲しい。ダイソンにはそれがあるからこそ、多くの消費者に支持されているのだろう。

「着実に進化して、日本の家庭でより使いやすくなった」というのが注目ポイントであることは間違いないのだが、改めてダイソンのデザイン哲学について考えさせられた発表会だった。
 

文/安蔵靖志(IT・家電ジャーナリスト)

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