点滴から老化の悩みまで。美容クリニックで、男のセルフプロデュース

藤村岳の「男美均整のミナオシ」

「通常、男性がめったに触れないであろうコスメや身だしなみの最新情報や技術などを紹介し、日々の生活を新しい視点から見直せるようにしたい」という、男性美容研究家・藤村岳が、一流男子の所作や振る舞い、装いを身につけることの大切さを毎月綴る。今回のテーマは“男性のための美容クリニック”について。

「美容クリニックは女性だけのもの」という先入観は、もはや捨てたほうがいい。

エイジングサインを治療するだけでなく、遺伝子検査などを用いて、今の自分の身体の状態を分析し、これからかかる疾患を予想することさえ可能になってきた。男性がこの手のクリニックでできることは、まずはシミやシワなど見た目に対する老化悩みを解消すること。それもマシンや注射だけでなく、幹細胞を応用したりもしている。そしてAGA(男性型脱毛症)の治療。これはまた回を改めるとして、今回は主に老化サインを解消する方法を見ていこう。

今どきの経営者は、点滴で体調管理をする

最近はレーザーや光などのマシンや注射を用いた治療が一般的で、昔のような切ったり貼ったりという外科的な処置は少なくなった。若い男性には脱毛もポピュラーで、ヒゲや体毛の処理をする人たちも増えている。また、介護を受けるときに恥ずかしくないようにと、包茎手術を希望する中高年も増えているというから、驚く。さて、話が逸れてしまったが、敷居が高かった美容医療も、比較的カジュアルに通えるところがでてきた。たとえば東京・銀座にある“ロイヤルビューティークリニック”はこの3月に開院したばかり。

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ロイヤルビューティークリニック(http://rbc-net.com/

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食料品から出発し、不動産や介護の会社を経営しているオーナーは、自分の健康管理のためにビタミンCなどの点滴治療を受けていた。その効果がとてもよく、他の経営者たちにも勧めると次第にその評判が広まり、自分が取りたいときに予約が入りにくくなってしまったそう。そこで「点滴やマシンをメインにしたクリニックを作ってしまおう」ということでクリニックをオープン。いやはや、その行動力に驚くが、一流の経営者は、やはりその発想がどこか違う。

さて、ここのメニューには疲労回復や肝機能改善などといった、いかにも男性の食指が伸びる点滴が揃う。

それゆえ、利用者の大半がエグゼクティブの男性だとか。しかし、これはそうめずらしいことではない。というのも、経営者や政治家など常に人前に立ち、健康管理も単に自分だけの問題でないという人々は、積極的に健康を維持しようと努力する。それをあえて人に言わないだけ。だからこそ、このクリニックでは待合室をあえてなくして個室で対応。院内の導線を工夫して、他人と顔をあわせないように作られている。

「分子整合栄養学」で、己の状態を知る

さらに代官山にある“松倉 HEBE DAIKANYAMA”では、分子整合栄養学の検査が受けられる。これは通常の検査とは桁違いの60項目という血液検査から細胞の分子の乱れを特定。それからドクター監修のサプリメントで栄養素を補って治療するというもの。その対象は広く、実に統合失調症やうつ病、パニック症候群、自律神経失調症、更年期障害、アトピー性皮膚炎などの様々な現代病が挙げられる。個々人の栄養素の過不足を測定し、体質に合わせたものを医師が選んで処方してくれるのだ。

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松倉 HEBE DAIKANYAMA(http://www.hebe.co.jp/

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このように「何となく調子が悪い」というのを放っておかず、病気になる前に手を打つことが、エグゼクティブと呼ばれる人たちが行っていること。それが今流の美容クリニックの使い方だ。これほど役立つ美容クリニック。しかし、注意しなければならないのが、医療事故だ。外科的な手術が減ったとはいえ、注射などでもその手の問題は起きる。

失明、壊死……安易な施術の末路

先日も鼻を高くするためにハイドロキシアパタイトを注射し、それが元で失明と皮膚の壊死に至ったという不幸な事故が起きた。これは新聞に掲載されたので、記憶にある読者もいることだろう。このハイドロキシアパタイトは注射後半年ほどで分解・吸収されるヒアルロン酸と違って、矯正が長持ちするという利点がある一方、間違ったところに打たれると血流を阻害して重大な事故を招く危険性もある。

実はこれは日本では未承認剤で、自由診療という形で行われている。美容形成分野はこの手のものをいち早く採用して、フットワークは軽いが症例数が少ない場合、賭けになることもある。

注射によるプチ整形はかなり一般的になってきた。今ではヒアルロン酸やボトックスを注射すると聞いてもさほど驚くこともない。しかし、体にとっては異物であることに間違いない。また、顔の筋肉は複雑で、血管や神経が張り巡らされているので、ほんの数ミリの違いで前述のような事故を引き起こしてしまうこともある。専門領域の医師でない場合、危険が大き過ぎる。

安易に施術を勧めるような医師やクリニックは避けるべきである。もし、注射などの施術を求める場合は、その医師の臨床数や美容形成の経験の有無を問うしかない。昔は、医師のことを詮索しようとするだけで嫌な患者という扱いされたが、「そんな時代錯誤なことを言う医師はこちらからお断り」というくらいの姿勢で臨んだほうがいい。簡単な施術=安全ではない。医療行為である以上、そこには危険性がついて回ることを認識しておこう。

シワは大人の年輪。シミは単なるケア不足

怖い話をしてしまったが、クリニックを用いて見た目をよくすることは悪いことではなく、むしろメリットがたくさんある。

冒頭にも述べたが、特に男性はシミをケアするとよい。表情に由来するシワは大人の年輪のような印象がある。しかし、シミは単なるケア不足で、ひとつあるだけでも格段に老けてしまう。それがなくなるだけで、表情が明るくなり、清潔感もアップする。その他にも、ニキビ跡など肌の凹凸を滑らかにするのもよいだろう。これは見た目がよくなるだけではなく、肌が滑らかになればヒゲ剃りもやりやすくなり、実用面でも役立つ。さらに加齢で首回りなどにできるイボも処理するべし。

これらの施術は秋~冬に行うことをお勧めしたい。というのも、術後の炎症などが真夏に比べてリスクは低いし、紫外線の影響も少なくなる。特にシミケアをした後に、無防備に日にさらされるのはよくないのだ。

さて、今の自分に必要な処置を見極めるのも、自己プロデュース能力のうち。さあ、今宵、じっくりと鏡と向き合ってみてはいかがだろうか?
 
文/藤村岳

※『デジモノステーション』2016年10月号より抜粋

関連サイト

男性美容研究所 藤村岳 danbiken.net