未来の二輪車が“金田のバイク”を目指すのはなぜか!?

たとえバイクに乗らなくても、“AKIRAに出てくる金田のバイク”と聞けば、“あー、あの真っ赤なバイクね”と答えられる人がほとんどだろう。『AKIRA』とは、もちろん大友克洋氏による漫画・映画作品。ところで、最近目にする多くのバイクが、どうも“金田のバイク”に急接近してきていることにお気づきだろうか? 実は『AKIRA』の舞台は、2019年の架空の都市“ネオ東京”であり、翌2020年には東京オリンピックが開かれるというストーリー上の偶然の一致も影響しているのか!? ここでは尋常じゃない勢いで“金田のバイク”化している最先端のバイクたちを見ていこう。

驚くほど時代を先取りしていた『AKIRA』の世界観

未来のバイクはどうなっていくのだろう? とイメージした時、避けては通れないのが大友克洋作の漫画・映画『AKIRA』。そのなかでも劇中に登場する“金田のバイク”のインパクトは絶大だった。原作が『ヤングマガジン』誌上に連載されていたのは1982年~1990年、映画版が公開されたのは1988年だが、本作のイメージが今でも鮮烈な印象として残っている人は多いだろう。

そして、そのイメージを追い続けているのはユーザー側だけではない。作り手であるメーカー側も“金田のバイク”をバイクの未来像として思い描き続けているように思える。というのも、メーカーが未来のバイクとして提案するコンセプトモデルを見ていると、『AKIRA』の作中で走り回っているバイクを思い出してしまうことが多いからだ。

現在の路上を走っているバイクより明らかに長いホイールベース、低く構えたライディングポジション、存在感の大きい大径ホイール、そして動力に電気を採用していることなど、“金田のバイク”と特徴を同じくするコンセプトモデルは枚挙に暇がない。つい先日に発表されたばかりの、BMW設立100周年を記念するコンセプトバイク『Motorrad Vision Next 100』もこうした特徴を見事に体現している。

bike02 bike03
BMWが今年発表した「Motorrad Vision Next 100」。電気モーターを利用した自立機能や事故を回避する機能を搭載し、ヘルメットを不要とする「次の100年」を見すえたコンセプトモデルらしい提案を満載。

 
過去にアプリリア、ポルシェ、スズキなどの国内外のメーカーが発表したコンセプトモデルを振り返っても、同様の特徴を持つモデルは驚くほど多い。ここに紹介したモデル以外にも、“金田のバイク”を思い起こさせるマシンは以前から数多く世に出されてきた。

bike04 bike05
ヤマハが2007年の東京モーターショーに出展した「LUXAIR」。エンジンとモーターを搭載したハイブリッドバイクで、音楽をビーム化してライダーの耳に届ける機能も搭載する。

 
もちろん、これらのコンセプトモデルのデザイナーが、全て『AKIRA』に影響を受け、“金田のバイク”をイメージしていると主張するつもりはない。むしろ、1980年代に描かれたバイクの未来像が30年以上が経過した今でも通用するほどに時代を先取りしていたことのほうが、驚くべきことなのかもしれない。

bike06 bike07
バッテリーを動力源とする、カワサキの電動3輪ビークル「J」。前傾のスポーツモードと、アップライトなコンフォートモードにトランスフォームする。2013年の東京モーターショーに出展。

 
そして、この数年の注目すべき動きはコンセプトモデルに限らず、市販されるバイクにも“金田のバイク”と呼びたくなる機能が盛り込まれるようになっていることだ。電動バイクが続々と登場していることはもちろん、ガソリンエンジンのモデルにもロー&ロングなデザインを採用するものが増えてきたり、ボタン1つで出力特性を変化させたり、タイヤが滑りすぎないようにトラクションをコントロールするといった機能などバイクのデジタル化を、本誌では“金田のバイク”化と呼びたい。今回の特集で紹介するのは、そんな“金田のバイク”化したバイクの数々だ。

『AKIRA』の時代設定は2019年、奇しくも翌2020年に東京オリンピックの開催を控えているという部分も現実と重なる。その時代まで、あと数年。バイクはどれだけ『AKIRA』の世界に追い付いているのだろうか?

文/増谷茂樹

※『デジモノステーション』2016年12月号より抜粋