ハマる覚悟ある!? 海のように広く深いオールドレンズの世界を、第一人者に聞いた

レンズ交換式カメラに着けられるのは、なにも最新レンズだけじゃない。一本一本の描写の違いが楽しめるオールドレンズを楽しむ方法もあるのだ。そんなオールドレンズマニアであるカメラライターの澤村徹さんに魅力を語ってもらった。

自分が理想とする写真を撮れるレンズが見つかる

半世紀も前に生まれたレンズを、最新技術の粋を集めた一眼デジカメのボディに装着する。今や澤村徹さんと言えば、オールドレンズの楽しみ方を提案するライター、そしてカメラマンとして、その界隈で知らない人はいない。そんな澤村さんは、PCライターとして黎明期のデジタルカメラのほとんどを触っていたという。だがそれらは、カメラというよりも“パソコン周辺機器”として記事にするためだった。

「キレイな写真が撮りたいと思ったのは、子どもが生まれたのがきっかけでした。それで良いレンズが欲しいよねということで、当時使っていたキヤノンの一眼レフに、純正のF1.4 50mmのレンズを買いました。 単焦点はボケがいいね、となり、ボケに夢中になっていったんです」

他のレンズも使ってみたいものの、高価な最新レンズはそうそう購入できない。そこで安く買えるロシアレンズの存在を知った。

「当時は数千円くらいでした。旧東ドイツ製のカール・ツァイス イエナでも2万円ほどで、3万円したら高いから買うかどうか迷う、そんな感じでした」

それぞれ個性の違う写りを気軽に楽しめるのが、オールドレンズだったのだ。その魅力を感じ始めた澤村さんは、ロシアレンズからカール・ツァイス イエナ、そしてヤシコンやライカへと、順調に触手を伸ばしていくことになる。

「そしてオールドレンズの世界に、完全にどっぷりハマるきっかけとなったのが、ライカのエルマリートR3mm F2.8 タイプ1でした。シャドーがすとーんと落ちるのに、その影の中からヌワッと被写体が現れる。こういう写りが好きなんだってわかったんです。自分が求めている描写がようやく分かったんです」

マウントアダプターで昔のレンズが復活する
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一眼レフ、ミラーレス一眼、レンジファインダーなどのレンズ交換式カメラは、メーカーやブランドによってレンズの取り付け方が様々。オールドレンズを、自分が持っているカメラに装着するためには、マウントアダプターが必要になる場合が多い。逆に言えば、マウントアダプターさえあれば、ほとんどのレンズを装着でき、その可能性は広がる。

 
そこからオールドレンズを、特にライカを中心に買い増していく澤村さん。
 
「使っていくうちに、世間の人は、このレンズの何を良しとしているのかが分かりはじめ、自分の中に指標ができてきました。そしてライカレンズを軸に、より広く様々なレンズを使うようになったんです」

オールドレンズは、無数に存在する。澤村さんですら、その一端に触れているだけだという。

「世界はもちろん日本製でも、まだまだ使ったことのないレンズはいくらでもあります。それだけ、もっと理想に近い写真が撮れるかもしれない、という可能性が残っているということです」

写りに強烈な個性を持つオールドレンズ。だからこそ、レンズを交換するという行為に、より大きな意義を感じられるのかもしれない。

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カメラライター
澤村徹さん
オールドレンズを使った撮影など、ひと癖あるカメラホビーを提唱。’08年、デジタル赤外線撮影による作品も発表。『ザ・レンズマニアックス』や『オールドレンズ・ライフ』など関連著書が多数ある。

 
文/河原塚英信 撮影/下城英悟(GREEN HOUSE)

※『デジモノステーション』2016年12月号より抜粋