これが最速の電動マシン『神電 伍』だッ! 最先端電動バイクの実力を見よ

近年になり、一気に進化の進んできた電動バイクの世界。その中でも、速さという面で最先端といえるのが無限の手掛けるレーシングバイク「神電(しんでん)」シリーズ。最高峰のレースを制したマシンの詳細に迫る。

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無限
神電 伍

最高出力:120kW( 163.2PS) 重量:250㎏

世界最高峰の電動バイクレースを3連覇

100年以上の歴史を持つ英王室属領・マン島で行われる「TT(ツーリスト・トロフィー)レース」。島を周回する1周約60kmの公道を閉鎖して行われるレースで、世界選手権シリーズなどからは外れているが、現在でも世界中から多くのライダーが集まることで知られている。2010年からは正式に電動バイク向けのクラス「TT Zero」がスタート。通常のガソリンエンジンのクラスと比べると、参加台数は限られるものの、電動バイクが速さを競うレースとしては世界最高峰といえるレベルを誇っている。

そんな「TT Zero」クラスに2012年から参戦し、2014年からは3年連続で優勝を飾っているのが日本を代表するレーシング・コンストラクターである無限が開発する「神電」シリーズだ。初年度のマシンから、毎年『神電 弐』『神電 参』と進化を続け、参戦5年目となる今年のマシンは『神電 伍』。電動バイクは走行距離が限られるため、通常のクラスはコースを3〜6周するところを1周に短縮されてレースは行われる。1周のラップタイプでは、最高峰の1000ccクラスのマシンには及ばないものの、600ccクラスのタイムには迫るところまでの速さは実現してきている。

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速さのポイントとなるモーターは最高出力が163.2馬力、最大トルクが210Nmと大出力のため、市販の電動バイクに多い空冷式ではなく、専用オイルでクーリングを行う油冷式を採用。370V以上の出力電圧を持つバッテリーも水冷式で温度マネージメントを行っている。モーターやバッテリーはエンジンに比べると発熱量は少ないが、ハイパワーのモーターを長時間全開にするような走り方では冷却性能を高めることが必須になるという。バッテリーは日立マクセル製のリチウムイオン。乗りモノ用のバッテリーとしては馴染みのないメーカーだが、電動工具用としてのノウハウがあり、瞬間的に大きなパワーを発揮するような使い方には向いているとのことだ。

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また、今期モデルより車体にはバッテリーを包み込むような形状のカーボンモノコックフレームを採用。リアサスペンションも新開発のクロスリンクロッカーと呼ばれる方式とした。どちらも重量物であるバッテリーを車体の中央近くに集中的に積むためという電動バイクならではの工夫で、無限が手掛けてきた4輪のレーシングカーで培った技術を応用している。

こうした多くの進化により、2016年のレースにおいてもブルース・アンスティ選手の乗るゼッケン5番の『神電 伍』が表彰台の中央を獲得。ゼッケン1番のジョン・マクギネス選手の駆るマシンもトラブルはあったものの4位に入り、3年連続での1-2フィニッシュはならなかったものの、名実ともに最速の電動バイクであることは間違いない。

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コースは街中を含む公道。多くの観客が見守る中でブルース・アンスティ選手の乗る『神電 伍』が3連覇を決めた。

『神電 伍』のディテールをチェック

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(A)カーボンモノコックフレーム
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薄型のフレームの内部にバッテリーを収める構造とし、重量物を集中化して運動性能とレイアウトの自由度を高めた。

(B)ガルアームタイプカーボンスイングアーム
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速さの要であるモーターを最適な位置に配置できるよう、サスペンションをクロスリンクロッカー式に。それに伴いスイングアームは湾曲した形状とされている。

(C)クロスリンクロッカーサスペンション
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リアサスは車体中央ではなくシートカウル内に配置。フロントサスは軽量化のためエアスプリングを採用した最新型だ。

(D)油冷3層ブラシレスモーター
出力が高まるほど温度管理が難しくなるモーターは、軸まで油によって冷却できる構造とし、ハイパワー化に対応している。

(E)ラジエーター
バッテリーも熱が溜まると本来の性能が発揮できないため、水冷式とし、ラジエーターで冷却を行う。

(F)オイルクーラー
モーターを冷却するためのオイルクーラーもフロント部に搭載。高い冷却効率が高出力を可能にした。

実際に乗ったライダーの感想は!?
昨年型の『神電 四』に試乗しましたが、電動とは思えないほどハイパワーで、トラクションコントロールが欲しくなるほど。バッテリーからくる車体の重さは、走り出すと意外なほど感じませんでした。電動ならではのクセはなく、普通のバイクと同じように乗れるので、エンジン車から乗り換えてもタイムが出せるのでしょう。
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伊丹 孝裕
マン島TTや鈴鹿8耐、パイクスピーク等のレースにライダーとして参戦。ライター&エディターとしても活躍する。

 
文/増谷茂樹

※『デジモノステーション』2016年12月号より抜粋

関連サイト

無限 SHINDEN PROJECT

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