『奇界遺産』カメラマンの佐藤健寿さんに聞く!ドローン空撮のクレイジーエピソード

空撮写真を撮りたいなら、よく使う人に聞くのがベスト。ということで、テレビなどで活躍中の佐藤健寿さんにドローンの使い勝手を聞いてみた。やはり一風変わった場所への旅が多い方だけに、面白エピソードが満載だ。

佐藤健寿/さとうけんじ。フォトグラファー。1978年生まれ。代表作『奇界遺産』(エクスナレッジ)のほか、『空飛ぶ円盤が墜落した町へ』(河出書房新社)、『SATELLITE (サテライト)』(朝日新聞出版)など著書多数。

持ち込む国によって事情が違う。海外旅行とドローンの関係とは?

「ドローンを使い始めたのは3年くらい前かな。大したものは撮っていませんけど大丈夫ですか?」

そう話すのは、世界中の不思議な建造物、風景、人々の生活をカメラに収め続けるフォトグラファー・佐藤健寿さん。著書である『奇界遺産』はシリーズ2冊目も刊行され、テレビにも多く出演している。謙虚な物言いではあるが、ドローンで撮影した写真を見せてもらうと、次々と出てくる未知の光景! 取材陣一同からも、思わず感嘆の声が上がる。

「もともとガジェット関連は好きなので、ドローンも仕事用として購入しました。でも海外へ行くことが多く、荷物を増やしたくないなと。いま使っている『MAVIC PRO』は割と軽量で画質もいいから、使う頻度が増えましたね。簡単に空撮写真が撮れるのは面白いですけど、国によっては使えない場合も多いので、持っていくのは半々といったところでしょうか」



DJI
MAVIC Pro
実勢価格:12万9800円

プロペラ部分を折りたたんで持ち運べる変形ドローン。障害物回避や高精度なホバリング性能、4K画質による動画撮影など、最先端技術が込められた一台。

以前、飛ばせると聞いてロシアのチェルノブイリにドローンを持ち込んだ際は、結局その日の放射能の数値が高いという理由で断念したとか。いわゆる観光地に行くことが少ない佐藤さんだけに、出てくるエピソードが“普通”からはかけ離れている。

「中国も10回以上行きましたが、一度も万里の長城を見たことがありません(笑)。持って行って良かったのはブルガリアの共産党ホール。TVで放送されたこともあって、最近は観光客の人が増えたようです」

日本国内では航空法が改正され、200gを超えるドローンを飛ばすには申請が必要になった。では海外の事情はどうだろうか?

「本当に国によって対応が違いますね。例えばベネズエラでは税関で没収されるとか。エチオピアに行ったときは火山を撮ろうとしたんですけど、そこが国境地帯で紛争中の場所だから、もし変なものを飛ばすと撃たれる可能性があるということで、ダメでした。反対に、タイやベトナムは規制が厳しいと思って行くんですけど、ビーチとかで飛ばしてる分には何も言われたことがないです。現地に行って初めてわかる感じですね。行く前に下調べをしますが、ちゃんとそれが明文化されている国と、曖昧な国というのがあって、結構錯綜していますね」

なんとロシアのクレムリンでは妨害電波が飛んでいるらしく、ドローンは墜落してしまうようだ。

「墜落といえば、このドローンも2台目です。この前、ロシアの北極圏で飛ばしたら、開始5分くらいで明後日の方向に……。どうやら緯度が北極線を超えていたせいで、GPSをうまく拾えなくなかったんじゃないかと。詳しい原因は分かりませんけど」


▲写真はタヒチの水上ホテル。ちょっと視点を変えるだけでも、空撮写真は真新しい構図として映る。運転は慣れるそうだが、テクニック的なことより、危険回避やトラブル対処についての技量が主に上がると佐藤さんは話す。

ドローン飛行で注意すべきこと

・軍隊・警察関連施設周辺
・GPSが届かない地理でのフライト
・寒冷地でのバッテリー保護
・人口密集地では飛ばさない

日常の風景が非日常に変わる。ドローンの楽しさに期待

なかなかに海外も過酷そうなドローン事情。初心者向きというか、ドローン向きの国も聞いてみた。

「ボリビアのウユニ塩湖なんかはいいですよね。絶景ブームで流行っていますし、墜落しても何もないじゃないですか。僕もブーム前に訪れてますから、もう一度ドローンを持って行ってみたいです」

では佐藤さんの考えるドローンの楽しさとは、一体なんだろうか。

「画角がちょっと変わるだけで、いつもの風景も全く変わるのがドローンの楽しみ方の1つだとは思います。『グーグルアース』が出てきたときの衝撃くらいの雰囲気ですね。10メートル上がるだけで、いつもの風景が全く変わりますよ。例えば国内の離島なんかで撮影すると、普通の島がアルカトラズ島に見えたりします(笑)。おそらく自宅の周りで視点を変えるだけでも、風景が変わる感動がまだありますね。まぁ、最近は国内ではなかなか気軽に飛ばせませんけど」


▲ベルギーにある廃墟「パワープラントIM」。巨大な冷却塔を空撮した写真だ。ユニークな形状がより一層、不思議さを醸し出している。

話を聞いているだけで、自ら空撮にチャレンジしたくなってくる。これもドローンの魅力だろうか。

「面白い映像や写真を撮ろうとすればするほど、紛失の危険性は高まります。以前、種子島に持っていったとき、洞窟の中に海があって、その中で飛ばしたら美しい映像になりそうだったんです。でも、案の定水没して……。無常感しかないですね(笑)。そういうのって、自分はある程度覚悟していますが、周囲の方が気を遣ってくれる部分はあります」

さすが世界を股にかける佐藤さんならではの達観ぶり。これからも、誰も見たことのない風景が世に送り出されるのを楽しみにしたい。


▲写真はアイスランドの氷原。映画「インターステラー」で描かれた氷の惑星のロケ地にもなったという。

 

文/三宅隆 撮影/田口陽介

※『デジモノステーション』2017年9月号より抜粋