身体の動きを数値化するシャツ『e-skin』は、繊維革命を起こせるか?

武者良太の『気になるニッポン発モノイノベーション』

「そこに不満があるって気がつかなかった!」そんなクラウドファンディング系アイテムを発見しちゃう連載企画。お届けするのはガジェットキュレーターの武者良太氏です。

今回の気になるモノイノベーション


e-skin

『e-skin』ってどんなクラウドファンディング?
『e-skin』は身体の動きを数値化して認識できるスマートアパレル。身体の前面に3カ所、後面に4カ所、左右で計14カ所の歪みセンサーを縫い込んだシャツと、3軸の加速度センサー・Bluetoothユニット・バッテリーを組み込んだハブの組み合わせ。シャツは完全防水で洗濯も可能だ。



パフォーマンスを数値化する時代が加速中

近年、身体のコンディションやパフォーマンスを数値化する技術が増えてきました。振動から歩数を計測していた万歩計は、計測する振動の質を変えることでランニングやサイクリング、はたまた睡眠の質を図れる活動量計に進化しましたよね。体重計も電極を備え、身体内をスキャンすることで体脂肪率などがわかる体組成計へとクラスチェンジ。ほかにも眼電位センサーで目の動きを計測することで眠気や集中力を数値化する『JINS MEME』のような眼鏡も登場しました。ちょうど匂いの強さだけではなく、種類も判別できるプロダクトもクラウドファンディングしていますね。

もちろん数値化したからどーなの、という声もあります。人間の身体というハードウェアのパフォーマンスは、精神というソフトウェアの実行状態で大きく変わってしまうものゆえに、ピンポイントで計測してもね。その人の感情を見て知ってケアすることが大事なのでは? という考えに異論はありません。しかし、いつでもどこでもお医者さんやトレーナーがいるわけではなく、日常の身体状態確認だったり、トレーニングだったりに、ウェアラブルIoTで数値化できるシステムは活用できそうな気がします。

で、登場したのがこの『e-skin』。身体の動きを数値化するシャツです。似たようなプロダクトには、モーションキャプチャ用のスーツがあります。関節の動きを、各関節部に備わるセンサーが検出するものですね。また3Dカメラを用いて、身体のジェスチャーを読み取るシステムもあります。『e-skin』は違います。使われているのは長細い歪みセンサーで、筋肉の伸び、曲げ、ひねりを検出するんですよ。モーションを、より高精度に読み取るためのものなんです。

たとえばゴルフのスイング。スイングをムービーで撮影するにも、見られるのは2次元的。しかし『e-skin』は筋肉の動きと角度をダイレクトに読み取れるから、3次元的にスイングを確認することができます。どのような動きが適切なのか、判断するためのデータさえ用意できればランニングのフォーム、ダンスのムーヴの善し悪しもチェックできますし、一子相伝的な職人技だってマスターすることができるようになるでしょう。

【ビッグデータで計測できる動きを増やす】

▲スポーツのモーションをチェックに使う場合、判定材料となるデータが必要だが、ビッグデータ&ディープラーニングで対応できる。

Kickstarterでのプライスは479ドル(約5万3000円)から。これにはシャツとハブ、そして『e-skin』対応アプリを1つ選べます。コンシューマー用ではありますが、現在の段階で購入してもうまく活用できる人は限られるでしょう。これはまだ、UI技術の素材でしかないのですから。ゲームが開発できる、ディープラーニングの技術を持っているといったエンジニアでなければ『e-skin』のメリットは引き出せないんじゃないかな。

それでも僕は推したい。『e-skin』を。なぜならば、シャツに備わっているセンサーと回路部分の技術に未来を感じるからなんですよ。これ、「プリンテッドサーキットファブリック」という素材で、くしゃっと複雑に潰すことができる電子回路基板。何が言いたいかというと、繊維革命が起きるんじゃないかなって。IoTアパレルが増えるきっかけになるんじゃないかなって。

現在の『e-skin』はあくまでクラウドファンディングでの販売仕様。タイツやグローブ型のセンサーも作れますし、センサーの数を減らしたコストダウンモデルも作れます。マウスのUIを拡張するブレスレット型のジェスチャーコントローラもできるでしょうし、筋肉の動き=バイタルサインを確認できるとなると、介護市場での需要も見込めそう。この技術がオープンになって様々な企業が活用する未来がきたら、面白そうじゃないですか?

【身体全体を使ったゲームコントローラにも】

▲関節ではなく筋肉の動きを検出できるスーツ。パンチやジャンプだけはなく、ランやスウェイといった動きもゲームのキャラクターの動きに反映できる。

【HMDとワイヤレスで接続できる】

▲ユニバーサル Windows プラットフォームに対応。Microsoft HoloLensなど、同規格に対応したHMDと、PCを介さずに接続することが可能。

文/武者良太

武者良太(むしゃりょうた):1971年生まれのデジタル系ライター。音響機器にスマートフォン、ITビジネスにAI、最先端技術など、ハードウェア面に限らず、ガジェット市場を構成する周辺領域の取材・記事作成も担当する。元Kotaku Japan編集長。

『デジモノステーション』2017年10月号より抜粋

関連サイト

『e-skin』プロジェクトページ