え、福岡で肉料理?わざわざ行きたい「タンテール富士」の絶品ひと皿

梶原由景の「間違いだらけのアプリde飲食店選び」

食にも精通するクリエイティブディレクター梶原由景が足で見つけた”間違いない名店”を毎月紹介する。

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今月の間違いない名店

タンテール富士
福岡県/牛タン料理、テール料理、モツ鍋ほか


住所:福岡県福岡市中央区赤坂3-13-33
電話:092-752-0073
営業時間:18:00~
定休日:毎週月曜日

 

福岡の食が熱い――。それは先月のこの連載でも既に報告済みだ。しかし、地方食=いわゆるその地方独特の料理以外でも、福岡の食はレベルが高い。

例えば地方に行って、よほどのことがない限りイタリアンやフレンチは食べない。東京の方が良い店が多いからわざわざ旅先で食べることもないだろう、と思ってしまう。どうせならこの地でしか味わえないものを。もちろん中にはわざわざ行く価値のある店もある。ここで言っているのはごくごく一般的な話だ。東京のレストランのレベルの高さは、どのジャンルでも層が厚く、結果激しい競争に晒された上で評価を得ているという点に根拠がある。日本で一番お店の多い地域で、一定の評価を得るには並大抵の努力では無理だ。結果、互いに切磋琢磨し、とんでもないレベルを形成しているのが、いまの東京の飲食業界事情でもある。そのせいで予約困難店が多く、まるでゲームのように席を巡っての戦いが起きている。できれば参戦したくないものだが。

閑話休題。さて、福岡だ。例えば皮焼き。鳥の皮を串に巻きつけ、約一週間もかけてじっくり焼く。表面はパリパリサクサクなのだけど、中はねっとり。食感も楽しく、ビールが進んでかなわない。最近は居酒屋として東京進出しているようだけど、やはり豚バラや山芋など福岡独特のネタを揃えた焼き鳥屋として展開してほしいところ。ということは、これも福岡でしか楽しめないものの一つである。なかでも「とりかわ粋恭」は白眉。毎回福岡に行くときに訪れるのを楽しみにしている店の一つである。

そして今回紹介したいのは肉料理の店だ。おいおい、それこそ日本全国どこでもあるじゃないかと言われるだろう。しかし、この「タンテール富士」はそんじょそこらの肉料理とは違う。出自は中洲にほど近い場所にある福岡を代表するモツ料理の名店。

名前の通り、タンやテールが名物。表面をカリッと炙られた尻尾にかぶりつく。旨み濃厚な肉は柔らかく、ほろほろと骨から剥がれる。福岡独特の料理とも言えるだろう「酢モツ」もここのは一味違う。牛一頭から数人前しか取れない希少なモツを使っているから当然だろう。また特筆すべきはサガリだ。ここまで完璧な火の通し方は他に見たことがない。焦げた部分はなく、一見生のようにも見えるけど均一に温かい。肉の旨みを最大限に引き出した状態だ。美味しんぼの山岡士郎ならその調理法を見破るだろうけど、まったく検討もつかない。以前新進気鋭のフレンチガストロノミー「SUGALABO」でハラミを頂いた時、ここのサガリを思い出したほどだ。モツ料理の店と侮ることなかれ。餃子も忘れることはできないが、何と言っても焼き飯。そのままでも〆に最適な存在感を発揮しているが、特製のタレをかけるのも良い。

   

肉料理の類は全国津々浦々どこにでもあるだろう。しかし、「タンテール富士」はあらゆる福岡の地元飯の誘惑を振り切ってまでも暖簾をくぐる価値がある。肉という素材はどこにでもある。でもこのスタイル、そして味は実は極めて福岡らしいものだ。ちなみに、隣には最近鮨マニアの間で話題の店がある。こちらについてはまた別の機会に……。

文/梶原由景

梶原由景(かじわらよしかげ):幅広い業界にクライアントを持つクリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表。デジタルメディア『Ring of Colour』などでオリジナルな情報を発信中。

『デジモノステーション』2017年10月号より抜粋