中国人の躍進著しいカナダで、日本のサムライたちと出会った話

伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」

“最強のよそ者”として、数々の業界でビジネスに変革をもたらし続けてきた伊藤嘉明が、“趣味も仕事もフルスイングする価値”について考える連載コラム『伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」』。

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個々の民族や文化を尊重。カナダでの出会いの旅

底抜けに青い空のバンクーバー、この時期は一年で最も過ごしやすい季節ということもあり、平日というのにスタンレーパークはたくさんの観光客と地元民で賑わう。“人種のるつぼ”、アメリカのメルティングポッドからくる一つのアメリカを作りあげる、という文化に対して、カナダのそれは“モザイク”という、個々の民族や文化を尊重しながら共存するという考えで、それはそれで心地よい。世界一広いロシアに次いで広大な国土にわずか3400万人。東京都民の2倍強の人口が日本国の25倍の土地に住んでいる。厳しい気候のため、人口のほとんどがアメリカとの国境500キロ圏内に住んでいるとのこと。やはり寒いのが苦手な南国野郎な僕は住めないくらい寒いんだろうな……。ということで今回は前回に引き続き、北米の旅パート2、人生万事振り切るが価値!

カナダ滞在中はリッチモンドというバンクーバーの隣町に宿泊していたのだが、街中に中国語の看板、店の中も外も完全に中国の人しかいない。逞しいなぁと脱帽。そんな中、スタンレーパークという公園に行って日向ぼっこをしていたところ、目の前に真っ赤なテント。「あー、アジア系の若者たちがホットドッグを売っているな」とぼんやり見ていたら、テントには大きく『ジャパドッグ』と書かれていた。店員は男女ともに爽やかでイケメン、可愛い美男美女。一生懸命にホットドッグを売っている姿は見ていて微笑ましい。売っているものも和風ホットドッグと、なかなかにユニークかつ美味そう。意思の弱い私は全然お腹も空いていないのに早速一本購入。話しかけてみたら、ワーキングホリデーでカナダに来た初々しい若人たち。僕は無知で知らなかったのだが、この『ジャパドッグ』、日本人が始めたカナダでも話題の屋台チェーンで、メディアでも頻繁に取り上げられている人気店。ググってみたところ、最初は2005年に一台の屋台から初めてここまで頑張って成長してきたというとても元気の出る話だった。海外でエネルギッシュに働いているアジア人は中国の人ばかりが目立つなか、久々にいい気分になり嬉しかった。ナイスな笑顔の彼らたちに別れを告げて、大学留学時代に住んでいたオレゴン州に向け、昔からの仲間に会うべく出発した。

リスクをエネルギーに開拓。タフな日本人たちは今もいる!

オレゴン州ポートランドは、西海岸の緑豊かな場所。ダウンタウンの真ん中に川が流れており、こじんまりとしたお洒落な雰囲気で、近年はスローライフやサステナブルな街として人気急上昇。ここ数年は全米で最も住みたい街ランキングトップとして、毎月500組以上が入植してくるなど、西海岸で最も注目されている。私が留学していた頃から美しい街ではあったが、今ほど注目があったわけでもなく、オレゴン?「ああ、オレゴンから愛」の?くらいしか話題にならなかったのに隔世の感である。

そんな数十年前からこの地でオーセンティックな日本料理屋を営んでいる侍がいる。その当時はまだJALや東京三菱銀行、日商岩井などの日本企業があったのでオーセンティックな日本料理屋さんもそれなりにはあったのだが、それぞれの企業の撤退と日本人人口の減少に合わせ、それら老舗日本料理屋は店をたたんでいる。唯一『こうじ大阪屋』を除いて。サムライであり、アメリカンドリームを実現したこうじさんが、多店舗展開を通じて美味しい日本料理をオレゴニアンに提供しているわけだ。最近は中国や韓国、果てはメキシコの人たちが日本料理屋を経営しているため、日本料理とは似ても似つかないシロモノを食べさせられることが多い中、『こうじ大阪屋』ではちゃんとした味のものをボリューム多く食べられるという、創業当時からのスタンスが変わっていない。何よりも、ポートランドにある3店舗を経営者兼料理長として切り盛りしている人が私の大学時代からの仲間、のぶさん。このサムライ、オレゴンの大学を出た後に日本で外資系企業で活躍をしたスーパービジネスマン。ある時、長年の夢を実現すべく今までの輝かしいキャリアを捨ててゼロスタート、修行を経て家族でアメリカに移住した。たくさんの苦労もあっただろうに、そんなことはおくびにも出さない爽やかな笑顔を持つサムライ。

リスクを物ともせず渡米し、夢を追う。同じ日本人として彼らをとても誇らしいと思った。考えてみると江戸前期にシャム国(今のタイ王国)に渡り、彼の地のアユタヤ王朝に仕え、数々の貢献から当時のソンタム王よりオークヤー・セーナピムックという政府高官のポジションを与えられた山田長政。異国で活躍したサムライ「山田長政」のフロンティア・スピリットは脈々と受け継がれているなぁと。『ジャパドッグ』の若者たち、こうじさん、のぶさん、共通しているのは、みんな底抜けに素敵な笑顔と爽やかさを持っていること。「北米のサムライたち」と会ってポジティブエネルギーを貰い、いざ日本覚醒!と覚悟を新たにした旅となりました。また来年サムライたちに会いに行こうっと。

文/伊藤嘉明

伊藤嘉明(いとうよしあき):X-TANKコンサルティング 代表取締役社長。数々の外資系企業での事業再生、マネージメント経験を生かし、可能性のある組織や人材を有機的に結合させたり、資金を投入することで、日本国内はもちろん、生まれ故郷である東南アジアでイノベーションと変革を巻き起こす。著書に『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社)など。

『デジモノステーション』2017年10月号より抜粋