突然の塩対応!アテネの家電店で女性店員恐怖症に?【山根康宏のケータイ西遊記:第17回】

ケータイ西遊記 -第17回- ギリシャ/アテネ編

携帯電話研究家・山根康宏が、世界各地でお宝ケータイに出会うまでの七転八倒デジタル放浪記。

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【アテネで購入した端末】


MLS Easy S
販売価格(当時):119ユーロ
スマホなのに数字キー付きというちょっと変態な端末。しかし画面のタッチ操作もできるので意外と使いやすい。通話用としても最適で、1台持っているとなにかと便利だ。

歴史を感じるアテネの街
店のスタッフも好印象

ギリシャの首都・アテネを初めて訪れたのは何年前だっただろうか。ヨーロッパを移動中に行ったことのない都市を訪れようと、わずか1泊で立ち寄ったのが最初だった。アテネ中心部に位置するパルテノン神殿を訪れなくとも、市内を歩き回るだけでギリシャ数千年の歴史を感じられる遺跡に出会うこともできる。アテネの街は史跡好きではなくとも十分楽しめるのである。


▲一歩路地裏に入れば古いたたずまいが残るアテネ。

アテネ滞在はいつもシンタグマ広場付近と決めている。地下鉄やバスの交通の要の場所なので、アテネのどこへでも移動しやすいからだ。空港バスも24時間ここから運行している。付近には通信キャリアの店も各社揃っているのでプリペイドSIMの購入も簡単だ。

その年は滞在が数日だったためにデータ通信容量が多めのSIMを買うべく、広場付近にあるキャリアの店に立ち寄った。こちらのスマホの言語はあらかじめギリシャ語に変更、これで相手は苦も無く設定もできるというわけだ。自分が表示言語を読めなくなるが、設定画面を開いて言語設定を戻すくらいならアイコンを見ているだけでもわかる。これくらいのことができないようでは世界各国を回れない。ただしアラビア文字だけはさっぱりわからず、さすがに中東を訪れたときは店のスタッフに英語へ戻してもらった。

さて赤い看板の有名キャリアの店でプリペイドSIMがほしいと伝えると、40歳前後の彫りの深い顔立ちの女性がてきぱきと「滞在は何日?データ通信は必要?現金で払える?」と聞いてくる。観光地でもある場所柄か外国人慣れしているのだろう。こちらから細かい説明をしなくともいいのは助かるものだ。「5日間で2ギガバイトくらい」と伝えパスポートを渡すと、これまた店の端末に情報を打ち込んでいく。ここまでスムースならば10分もかからずSIMを入手できそうだった。


▲シンタグマ広場には家電店やキャリアの店も多い。

休息を重んじるのがアテネ人
オンとオフの切り替えは瞬時

ところが彼女は腕時計をちらりと見るや、不機嫌な顔になりほかの店員と何やら話をし始めた。どうやらSIMの在庫がないような口調なのだが、男性店員が1枚のSIMを差し出してきても彼女は受け取らず、こちらを振り向くと「ごめんなさい、2時間後にまた来てね」というではないか。時計を見ると14時、シエスタの時間になったところだったのだ。スタッフは急に店じまいの支度をはじめ、自分も追い出されてしまった。その後あらためて2時間後に店を訪問したが、なぜか彼女の姿は見つからず。男性店員からSIMを買ったものの、どうにもすっきりしない気分で店を後にしたのだった。

さて翌日はスマホでも買おうとアテネの家電店を探索してみた。日本円で1万円程度の格安機もあり、どれを買おうか悩んでしまう。時間は17時過ぎで、シエスタは終わっている。そばにいた女性店員に話しかけると「日本人のお客さんははじめてだわ」と歓迎ムード。ベーシックな機能でいいから安いものをと伝えると、3機種を出してくれた。ヨーロッパにしかない地場メーカーのマイナーなモデルは記念に買いたくなる製品だ。よし、それを買おうと伝えると、彼女はレジに向かうのではなく別の店員に話しかけ、そのまま店の奥へ向かっていった。数分待っても出てこないので残っている店員に話しかけると「彼女の勤務時間が終わったので、僕が対応することになったよ。それで買うものは決まった?」と聞いてくるではないか。ギリシャの女性は休みになると仕事のことはそっちのけになってしまうのだろうか。彼の顔の表情も仕方ないよね、というものだった。

その後何度がアテネを訪れたが、愛想のいい店員には話しかけず、むしろぶっきらぼうであまりフレンドリーでは無い店員を探すようにな癖がついてしまった。2017年にも再訪したときは、ケータイスタイルのスマホという面白い端末を家電店で発見! しかし女性店員しかフロアーにはおらず、みな満面の笑みでお客さんを出迎えている。

本来なら喜ばしいことなのだが、女性店員恐怖症になっている自分は声をかけられない。どうしたものかと店内をうろついていると、こちらが挙動不審と思ったのだろう、警備員の男性が「どうしましたか?」と英語で話しかけてくれた。さすがに女性が苦手とは言いづらく「ギリシャ語ができないのだけどスマホが欲しい」と伝えると、彼がレジまで一緒に行ってくれて、買いたい商品までも説明してくれた。レジのスタッフも女性だったが、さすがに会計の途中で席を外すことはなかった。アテネで安心して買い物できたのは実はこれが初めての経験だった……。

文/山根康宏

山根康宏(やまねやすひろ):香港在住の携帯電話研究家・ジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

『デジモノステーション』2017年10月号より抜粋