台湾発、充電の手間を省いた電動バイクメーカー「ゴゴロ」はやっぱり凄かった。

伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」

“最強のよそ者”として、数々の業界でビジネスに変革をもたらし続けてきた伊藤嘉明が、“趣味も仕事もフルスイングする価値”について考える連載コラム『伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」』。

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インフラごと供給する電動バイクメーカーの出現

 
仕事の絡みで台湾にやって来ました。親日派が多いということに加え、日本と東南アジアをミックスした感じの雰囲気でなかなかいい感じ。久しぶりに来た台湾、すっかり気に入ってしまいました。今回は時間の無い中どうしても見たいものがあり、無理やり時間を作り、見に行きました。どうしても見たかったもの、それは何かというと「ゴゴロ」。ほとんどの方は聞いたことないと思いますが、台湾をベースとする電動バイクメーカーのショールームなんですねぇ! ということで、今回は台湾で出会った人生万事振り切るが価値!

「ゴゴロ」はHTCの元チーフ・イノベーション・オフィサー、ホラス・ルーク氏が2011年に立ち上げた台湾発のベンチャー企業。洗練されたデザインの電動バイクとバッテリー交換が課金式となるビジネスモデルで、雨後の筍のようにある東アジアの電動バイクメーカーでは、かなりの注目を集めている企業でもあります。グローバルデビューをした2015年のCESでは、ベスト・イン・ザ・ショー・アワードを受賞するなど、躍進ぶりは目覚しいものがあります。2014年8月の本格ローンチ以降、本国台湾では18カ月で4000台以上を出荷するなど、国際シーンでは話題に事欠かない状態です。

さて、この「ゴゴロ」、単なる電動バイクメーカーではありません。ユニークなのは、交換用バッテリーステーションが街のあちこちにあり、自分で充電する手間が省けるというビジネスモデルです。

ホラス・ルーク氏によると、台北市民の80%は駐車場へのアクセスがなく、あったとしても市営のものとなり、電動バイクの充電をするというプロセス自体が大変難しいとのこと。ならば、そのインフラを丸ごと「ゴゴロ」が提供しようではないか、という流れ。これはとても理にかなっている考えで、電動自動車や電動バイクが欲しくても、維持の手間を考えた場合にボトルネックとなる部分を、企業側が解決策を提供することで製品・サービスの両方が根付くわけです。

ここで問題になるのがバッテリーステーションの数ですが、ここ台北でもびっくりするくらいのペースでステーションを増やしています。初年度だけで145箇所を設置。これは台北市だけで見てもほぼ1.3キロごとにバッテリー交換ができるステーションがあるということになります。これは、バッテリーが無くなる、という不安感から完全に解放されることからも、今後の浸透が楽しみです。バッテリーステーションの拡充は駐車場を確保するのが難しい大都市圏では必ず問題になることなので、彼らが考える解決に向けた提案は世界中で受け入れられる土壌があるでしょう。現に発表以来、オランダのアムステルダムでの導入に続き、ドイツのベルリンでも導入が決定しています。

電動バイクの勢いは地球環境の危機に反比例

さて、ショールームに行ってびっくりしました。もともとバイク本体のデザインも中国のそれと比較してもずっと洗練されており、別格感を漂わせているくらいなのですが、ショールームはまるで「アップルストア」と「BMWMINI」のいいとこ取りのような雰囲気。店内は白で統一されており、店員も皆若くてカジュアルな感じ。社員証のタグもファッションも垢抜けています。オプション装備を満載したカラフルなバイクが数台置いてあるのはもちろん、オリジナルグッズもたくさん用意されています。これはショールームにいるだけでワクワクしますね。

さらに驚いたのはワークショップ。いわゆる整備をする場所ですが、ここも床までが真っ白で統一されていて、まるで未来の宇宙船内部のような雰囲気。宇宙船なんか見たこともないですけど、あくまでイメージです。整備エリアにありがちな汚れた感じは皆無。パソコンや時計の部品交換でもしてそうなクリーンなエリアでした。

バイクのボディの一部もカラーパネルを張り替えることで、自分独自のオリジナルゴゴロを作れるわけです。少し無骨なヘッドランプカバーを選べばオフロードデザインにもなり、これは男女問わず自分好みのバイクにできる楽しみがあります。

 

ちなみにバッテリーは2本入れるタイプで、一つ6キロとそれなりの重さ。取っ手は蛍光グリーン、本体は黒、となかなかに洒落たデザインです。
 

電動バイクメーカーは中国をはじめとして世界に数百社あると言われており、この数はまだまだ増えながらも同時に淘汰されていくでしょう。地球環境はかつてないほどの危機に面しており、経済発展や人口増からくる都市圏への人口流入、それによって引き起こされる渋滞、さらにそこからくる空気汚染、と負のスパイラルに加速がかかっているのが今。そのような中で、歴史のある大企業ではなく、新進気鋭のベンチャー企業が世界の新しいスタンダードを創っていく。これは応援しないわけにいかないです。しかも我らの友達、台湾のメーカーです。早く日本にも上陸して欲しいですね。海の向こうのアジアの友、振り切っている電動バイクメーカー、もとい、環境問題ソリューションプロバイダー、「ゴゴロ」万歳!

文/伊藤嘉明

伊藤嘉明(いとうよしあき):X-TANKコンサルティング 代表取締役社長。数々の外資系企業での事業再生、マネージメント経験を生かし、可能性のある組織や人材を有機的に結合させたり、資金を投入することで、日本国内はもちろん、生まれ故郷である東南アジアでイノベーションと変革を巻き起こす。著書に『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社)など。

『デジモノステーション』2017年11月号より抜粋