新定番!!水遊び2019夏
三百年変わらない佐渡の棚田で絶景田植え

田植え=水遊びというと、お百姓さんから怒られるかも知れないが、田植えは大人が忘れていた子供心を呼び覚まし、子どもたちの食育にもなる有意義な行為だ。最近では田植え体験ができる田んぼが人気を博しているが、せっかくなら「最高な環境で、最高のお米を植えてみたい!」。スノーピークが主催するツアーにその答えがあった。

Rice Planting
日本の米作りの歴史は古く、縄文時代まで遡るとも言われている。昭和30~40年代ころまでは田植えも手作業で行われていたが、平成に入るとほとんどが機械化。田植えの時期は地域によって異なるが、全国的に4~6月が多い。

新潟・佐渡の棚田で
ゼータクな田植え体験

海を見下ろす絶景の棚田──ここは新潟県佐渡市にある岩首昇竜(いわくびしょうりゅう)棚田。江戸時代に開田が進み、海沿いの集落から標高350mを超える山間部まで、現在でも約460枚の田んぼが当時の形状のまま受け継がれている場所だ。ご覧の通り圧巻の景勝地としても有名であるが、スノーピークはここでの田植え体験ができるツアーを企画している。今回取材班が参加した『LOCAL WEAR TOURISM in SADO』である。

「ツアーに参加された皆さんと一緒に、春に田植えをして、秋に収穫を行うという一泊二日のツアーを実施しています。きれいな水と空気と景色を楽しみながら、ほかでは体験できない、佐渡ならではの田植えを楽しんでもらえたらと思います(スノーピーク 副社長 CDO山井梨沙さん)」

田植えというと、昨今は自然学習の一環として人気も高く、都内近郊でも体験できる施設が増えてきている。今回、子供を連れて参加した方も「体験を通して学びにつながる」ということで食育を期待していた。

「田んぼは足が抜けなくなるから注意してください。つま先から入って、踵から上げるように。バレリーナの気分で!」と、地元農家の方のアドバイスを受け、参加者一同は苗代を片手に田んぼの前に整列。天気も良かったため、多くの参加者が裸足だ。

恐る恐る足を突っ込んでみる。膝下くらいまでズブズブと埋まっていく感触と、泥の底へ行くほど冷たくなるひんやり感がなんとも心地いい。何度か足がハマって倒れそうになりながらも、自分の植えた苗を踏まないように前進し、田んぼ定規で引かれた目印に苗を植えていく。泥だらけになりながらの単純作業は想像以上におもしろく、参加している大人たちからも「楽しい!」の声が連発。

腰をかがめた作業なので、腰痛持ちのパパにはやや辛いが、ふと起き上がった時に広がる視界は超絶景。田んぼの縁と日本海が繋がる“インフィニティ・田んぼ”での田植え体験、日本中を探しても、ここ岩首昇竜棚田でしか味わえないだろう。

取材時はやや雲がかかっているが、晴れれば新潟市にある新潟スタジアムのドーム屋根まで見えるほど、見晴らしは抜群
苗代を片手に、足元に気をつけながら一株ずつ植えていく。気づくと夢中になりすぎて腰が痛くなるので、腰痛持ちの人は注意が必要
手で植えた苗はご覧のようにまばらで一株の量もまちまち。だが、まっさらな田んぼ一面に苗が植わった時の達成感は最高だ
苗代が足りなくなると、田んぼの縁から投げて受け取る仕組み。失敗するとまわりに迷惑をかけるのだが、その光景も微笑ましい

 

How To Rice Planting
田植えのやり方

これが米の苗代(なわしろ)。片手で持ちやすいサイズにちぎり、足りなくなったら田んぼの縁から投げてもらう
格子状の線は田んぼ定規という農具で引かれたもの。線が交わった十字部分が目印で、ここに苗を植えていく
一度に植える苗は3~4本。たくさん植えてしまうと養分が行き渡らず、一株からの収穫量も減ってしまうので慎重に
苗は3本指で掴み、第一関節が埋まるくらいまで優しく植える。深く植えると苗が水没してしまい腐ってしまう
田植えは直進して進んでいき、対岸に着いたら折返しという流れ。定規の跡を参考にして、自分の担当エリアを植えていく。植えた苗を踏まないように、バレリーナのごとく進むのがポイント

世界農業遺産にも登録!
昔ながらの農法で作る幻の米

2011年、佐渡は先進国で初めてジアス(GIAHS:世界農業遺産)に指定された。ジアスとは、後世に残すべき生物多様性を保全している農業上の土地利用方式や景観についてFAO(国連食糧農業機関)が認定するもの。ユネスコの世界遺産が建物や自然そのものを登録対象としているのに対して、ジアスは農業システムを登録対象としている。

「ジアスに登録されるまで、佐渡の棚田はまったく知られていませんでした。佐渡には5つの棚田があって、それぞれ約300年の歴史があります。『この景色を残したい』という思いで、地元の農家の人たちは昔ながらの農法で田んぼを作っています。とにかく棚田の良さを色んな人に知っていただきたいし、棚田で作るお米のおいしさを実感してほしい。それがいつか、ここを守ることに繋がればと思っています(佐渡棚田協議会 大石惣一郎さん)」

岩首の田んぼは100%湧き水でできている。日本海側から登る朝日の光、海から吹く風のなかでゆっくり丁寧に育てられたお米は、米粒は小さめだが甘みが強く粘り気もある。

昨年のツアーで植えた苗は秋に収穫を行った。収穫量は約600kg。その一部をスノーピークの店頭や通販で販売し、残りはレストラン「スノーピーク イート」で提供された。自分たちで作った米を、自分たちで食べる。この当たり前だが、なかなかできない体験が味わえるのも、このツアーの魅力だ。

天然記念物のトキが暮らしている佐渡は、農薬基準も厳しく、除草剤などもほとんど使われていない。限られた数の棚田で作られるお米は、地元でもなかなか手に入らず、幻の米とも呼ばれている。9月の最終週には今回植えた稲の収穫ツアーが開催される。佐渡の棚田の魅力を、ぜひ一度体感してほしい。

2018年度に実施したツアーで収穫した棚田米は、このようなパッケージで限定販売された。精米と玄米の2種類を用意
田んぼの脇を流れる用水路には湧き水が流れている。田植えで汚れた泥を流すのも、この湧き水を使う
佐渡棚田協議会 会長
大石惣一郎さん

佐渡の岩首で生まれ育ち、農業を継ぐのが嫌で一時東京へ逃亡。32歳で地元へ戻り、以来、佐渡棚田の普及活動を行う。2011年、佐渡棚田協議会 会長に就任

 

去る5月25日~26日にかけて開催された一泊二日ツアーの模様を時系列に並べたのがこちら。
田植え体験のほかにも、焚き火を囲みながら鑑賞する佐渡の伝統芸能や北欧キュイジーヌのシェフが作る絶品アウトドア料理、神社でのテント泊など、ディープなコンテンツが盛りだくさんだ。

Day 1

ツアーの集合場所は佐渡島の両津港。東京からは新幹線で新潟駅へ行き、最寄りの新潟港から高速フェリーで片道1時間の道のりだ
レセプション会場となった古い舟屋。牡蠣の養殖が盛んな加茂湖に面していて、昔は漁師がここを船置き場として使っていた
旅行はすべてアウトドアの行程。宿泊地はなんと神社の境内。荘厳な雰囲気のなかでのキャンプ体験はここでしか味わえない
ツアー参加者がそれぞれ、自分たちの寝床となるテントを設営する。スタッフが付き添ってくれるので、初心者でも安心
神社の高台から見た加茂湖は、日本百景の一つにもなっている新潟県最大の湖沼。湖に浮かぶイカダはすべて牡蠣の養殖場だ
“世界一のレストラン”として名高いノルディック・レストラン「noma」のトップ・シェフの一人、アラン氏が料理を担当
夕食後は、境内に設置された能舞台で佐渡の伝統芸能「鬼太鼓」を鑑賞。約120の集落で伝承される踊りは、同じものはひとつもないという
暗くなると境内の中にはいくつもの焚き火台が並べられ、ツアー参加者やスノーピークスタッフとの交流の時間に。満点の星空のもと、地酒がすすむ

 

Day 2

二日目の朝食は、アランが作ったスペシャルなスクランブルエッグに、ホットサンドとフレンチトースト。明け方はトキの鳴き声も聞こえてくるとか
朝食後はテントを撤収して、メインイベントの田植えへ。キャンプ地から車で約1時間で岩首昇竜棚田に到着
地元農家の方のアドバイスを受けながら、大人も子供も夢中になって田植えに精を出す。1時間も続けると汗だく
田植えのあとは、かまどで炊いた棚田米でランチタイム。佐渡の海鮮や野菜を使ったおかずが用意され、バイキング形式で楽しめる

 

「LOCAL WEAR TOURISM」とは
ただの観光ツアーでは味わえない、その土地ならではの文化や伝統を体験できるのが醍醐味。スノーピークのアパレルライン「LOCAL WEAR」を冠したツアー企画で、過去に佐渡で2回、栃尾で1回実施している。毎回10組限定のプレミアムなツアーなので、参加の際は早めのチェックが必須だ。
https://www.snowpeak.co.jp/sp/localwear/tourism.html
  • Text松井直之
  • photo比留間保裕